「共創」によって顧客のデジタル変革を支援する富士通が、サービスプログラムを拡充するとともに、顧客と一緒になって変革に取り組む「デジタルイノベーター」の育成に力を注いでいくことも明らかにした。
「既に日本企業の7割がデジタルビジネスに取り組んでいるが、人材不足という課題を抱えている。われわれは、テクノロジーだけでなく、顧客と一緒になって試行錯誤を繰り返しながらゴールを目指す“デジタルジャーニー”を共に歩んでいくデジタルイノベーターを育成し、企業に送り込んでいきたい」
こう話すのは、富士通が年初に発足させたデジタルフロントビジネスグループを統括する宮田一雄執行役員常務だ。デジタルテクノロジーによるビジネスの変革、いわゆるデジタル化が急速に進む中、同社では、顧客企業と共に新たなビジネスやサービスを「共創」していくためのサービスプログラムを体系化し、実践してきた。
「フィンランドの小売り企業、Sグループは、生活者の視点に立ち、傘下のABCペトロールで厳冬でも便利に給油と決済が済ませられるモバイルアプリを提供、蓄積された購買データを分析してレストラン事業にも生かしている」と宮田氏。
このほかにも、動画検索技術をプロ野球選手の強化に生かすサービスや診療データを患者と共有できるクラウドサービスなど、この1年で50を超える案件が生まれているという。
富士通の共創サービスは、「情報収集・問題発見」「アイデア創出」、そして「サービスの実践」というループを高速に繰り返していくのが特徴。共創の実践と経験を踏まえ、今回新たに、海外視察を含む「先端テクノロジーのリサーチ」や2週間で3回のユーザー評価を行う「プロトタイプ開発支援」などを追加、5月11日から提供を開始した。
併せて、顧客企業と一緒になってデジタルジャーニーを歩む「デジタルイノベーター」の育成に力を注いでいくことも明らかにされた。
ビジネスやサービスを発想するデザイナー、それを迅速に具現化するデベロッパー、事業化までのすべてを統括するプロデューサーなどに分類されるデジタルイノベーターは、これまでの受託型サービスモデルでいえばSEなどに相当するが、共創型のサービスモデルでは、経営者や事業部門はもちろんのこと、企業の顧客である生活者との共創が求められる点が大きく異なる。
米国などと比べて事業会社におけるIT人材がそもそも少ない日本では、デジタル人材の不足は一層深刻だ。富士通では昨年、規模の大きなSE子会社3社を吸収合併、SEは総勢1万4000人に増えた。彼らを中心にデジタル人材を育成し、新設のデジタルフロントビジネスグループに結集させていく計画だ。顧客と一緒になって試行錯誤しながら初年度は200人を育成、3年では1200人へと増やしたいとする。それは、顧客のデジタル変革を支援する取り組みであるとともに、富士通自身の変革でもある。
富士通のさまざまな共創の仕掛けづくりに携わってきたデジタルフロント事業本部長代理の柴崎辰彦氏は、「デジタルイノベーターの育成は、富士通の責務」と話す。
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