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» 2017年07月06日 07時00分 UPDATE

Mostly Harmless:人間はAIと戦う必要はない

将棋で人間を打ち負したAIには、技術者の間では“黒魔術”と呼ばれている部分があるとか。そう聞くと不安になるかもしれませんが、よく考えてみると、実はそんな必要はないのかもしれません。

[大越章司,ITmedia]

この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。


 先日、「NHKスペシャル」で人工知能(AI)の話が取り上げられていました。ほとんどが2017年5月に開催された将棋電王戦の話で、将棋ソフト「Ponanza」の開発者である山本一成氏が出演されていました。番組としては、“ついに人間を打ち負かしたAI”という内容でしたが、いたずらにAI脅威論をあおることもなく、全体として抑制の効いた内容だったと思います。

 折しも、藤井4段の連勝記録更新というニュースがあり、人間対人間、人間対AIの勝負についていろいろ考えされられました。

AIは黒魔術か?

 山本氏は、このところNHKによく出演されていて、その内容がWebに上がっています(「人工知能と黒魔術」視点・論点)。AIは進化するにつれ中で何をやっているのか分からなくなっており、それを研究者の間では「黒魔術」と呼んでいるという話です。

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 これについては、私も先日、ブログに書きました。日本が誇る研究機関である理化学研究所を設置した革新知能統合研究センターのセンター長である杉山将氏は、センターの理論研究の方向性として「なぜうまくいくのか分かっていない深層学習の原理の解明」を挙げている(参考記事)ということです。

 黒魔術とは、“どうやって生まれたのか”、あるいは“なぜ効果が出るのか分からない技術の総称”だそうですが、AIが「中で何をやっているのか分からない」となると、「何をするか分からない」という不安につながり、黒魔術という言葉ともに独り歩きしてしまいそうです。世の中でAIを不安視する人たちがいるのも無理はありませんね。

還元主義と相いれないAI

 先ほどの電王戦に関する記事で面白かったのは、一般的に「科学」と呼ばれる学問は「還元主義」という考え方でできているということでした。還元主義は、「物事を分解し、細部の構造を理解していけば全体を理解できる」という考え方だそうです。それが、AIには通用しないのだそうです。

 山本氏は「結局、知能というのは隠された方程式があって、それを解き明かすのではなく、どこまで行ってもモヤモヤしたよく分からないものであることを受け入れるしかない」と断った上で、AIはそれでよいのだ、としています。どうやら(今の)AIは、これまでの科学とは少し違う立ち位置におり、居心地が悪いけれども、この先にはさまざまな良いことが待ち受けているはず、ということのようです。

 そんなことを考えていたとき、ちょうど藤井4段が連勝記録を伸ばし、新記録を樹立したというニュースが飛び込んできました。もちろん負けた方はうれしくないでしょうが、世の中の多くの人が喜び、藤井4段をたたえています。「後味のよい」ニュースです。

 それと比べ、電王戦のニュースは、なんか後味がほろ苦かったなあ……と思うのです。もちろん、山本氏やPonanza、主催者に責任があるわけではありませんが。

 要するに、人間は人間に味方するし、人間が頑張ったことには素直に共感できるという、単純なことに気付かされた気がします。

人間はAIに勝たなくてもよいのだ

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 結局、人間はAIに勝たなくてもよいのです。既に、コンピュータにはいろいろなところで、ものすごく負けています。単純な計算ですら、電卓に遠く及ばず、記憶力においてHDDに打ち勝つことは不可能です。

 電王戦は今回で終わるそうですが、正しい判断だと思います。今までは、AIが人間を抜くか抜かないか、というフェーズだったから面白かったのであって、いったん抜かれたら、もうこの後は勝つ見込みはないわけで、やってもしょうがないでしょう。

 この先、AIが100連勝したって、藤井4段が連勝したように皆が感心して喜ぶか、といったらそんなことはないと思います。むしろますます怖がられるだけではないでしょうか。

 人間は人間と競い合い、勝負することで人間の能力を高めていけばよいのです。100メートル走で、人間とオートバイを一緒に走らせることには何の意味もないのですから。

著者プロフィール:大越章司

外資系ソフトウェア/ハードウェアベンダーでマーケティングを経験。現在はIT企業向けのマーケティングコンサルタント。詳しいプロフィールはこちら


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