1日100万個以上のポテトを人力で見分けていく……キユーピーの工場で行われている膨大な作業。その状況が今、「ディープラーニング」で大きく変わろうとしている。
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1日100万個以上流れるダイス型のポテトを1つ1つ、人の目で見分け、異物混入や不良品がないか確認していた――にわかに信じにくい話かもしれないが、これは実際に、大手食品メーカー、キユーピーの工場で行われている原料検査の作業だ。
「画像処理技術などを使った機械化を長年検討してきましたが、精度やコストの面で現実的ではありませんでした」
こう話すのは、キユーピーの生産本部で次世代技術担当次長を務める荻野武さんだ。ベビーフードの品質と“安心”を支えるために行われている業務ではあるが、スタッフの人海戦術では限界が来ており、増産のボトルネックになっていたという。そんな状況が今、「ディープラーニング(深層学習)」で大きく変わろうとしている。
キユーピーは原料検査の基準を厳しく設定している。特にダイスポテト(さいの目状にカットされたジャガイモ)の場合、単なる変色など、食べても問題ないようなものでも、取り除くようにしている。そのため、スタッフには技術と高い集中力が必要になるのだという。
「害はなくとも、やや黒ずんだジャガイモが混じっていたらお母さんは心配に思いますよね。それは“安全”かもしれませんが、“安心”な商品とはいえません」(荻野さん)
しかし、当時採用していた画像認識システム(マシンビジョン)では、精度やコスト面で折り合いがつかない。そこで荻野さんが目を付けたのが人工知能(AI)だった。自律的に精度を高めることで問題を解決できるのではないか、と考えたためだ。
2016年夏ごろに検討を始め、数十社のAI技術を検討した結果、Googleが開発したオープンソース型のディープラーニングプラットフォーム「TensorFlow」を採用した。「処理性能や汎用(はんよう)性が高く、数々の実績もあった」(荻野さん)ためだ。ブレインパッドとも協力し、2016年11月ごろにPoC(Proof of Concept=概念検証)を開始した。
これまで、マシンビジョンではうまくいかなかった不良品の検知だが、ディープラーニングで結果を出せたのは、検知の基準を“逆転”させたためだという。
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