トヨタの工場が作ったiOS対応「セキュアカメラ」 情報保護でも大活躍

ベンチャー企業のTRIARTと共同開発した「セキュアカメラ」が生産ラインで活用され、TRIARTではこれを使った販売もスタートさせている。

» 2015年09月01日 16時34分 公開
[ITmedia]

 「レクサス」ブランド車の製造を担うトヨタ自動車九州は、九州工業大学発のベンチャー企業、TRIARTと共同開発したiOS対応アプリ「セキュアカメラ」を設備点検や自動車部品の検査などに利用している。iOS端末で撮影した画像や映像など機密性の極めて高いデータを保護しながら、業務効率化に役立てられるのが特徴だ。

 セキュアカメラは、米Appleやモバイルセキュリティ企業のMobieIronなどのサポートを得て、トヨタ自動車九州とTRIARTが2014年2月に開発したもの。iPhoneやiPod touch、iPadなどのiOS端末のカメラ機能のセキュリティを強化するのが特徴で、同6月には従来の静止画に加えて動画にも対応。8月からTRIARTが「XCOA-COM」の名称で商品化し、一般販売もしている。

アプリによる撮影から確認までの流れ(TRIARTより)

 MobieIronによれば、工場内には発売前の自動車や試作車などに関する極めて機密性の高い情報が多く、業務で厳格なルールを規定する。例えば、製造ラインで問題が起きると記録や報告のために車両を撮影するが、その画像が漏えいすると深刻な問題になりかねず、従来は撮影前に申請を行い、撮影を許可する権限を持つ上長の承認を得て撮影していた。しかし、上長がいない時などは撮影ができず、報告が遅れてしまうなどの課題を抱えていたという。

 セキュアカメラアプリは、事前に申請しなくても撮影をできるようにして業務効率を高めることを目的に開発された。このアプリを起動すると他のアプリは起動できなくなり、コンテナ化と呼ばれる技術を使って、異なるアプリへの撮影データの複製なども防止する。撮影データは担当者の確認後すぐにサーバへ送信され、端末内からは削除される。撮影データに社員番号を紐づけることで、管理者が画像から撮影者を確認できるようにしている。

 トヨタ自動車九州ではセキュアカメラアプリを約60台のiPod touchにインストールし、Wi-Fiを整備した生産ラインで利用している。iPod touchにピンク色のカバーを取り付けて、カバーを外すとブザーが鳴る仕掛けも。担当者は撮影時に蛍光ピンクのベストを着用することも義務付けている。トヨタ自動車九州ではWi-Fi環境の整備やアプリの改善を図りながら、対応する生産ラインを増やす計画だという。

システムの画面イメージ(トヨタ自動車九州より)

 同社IT企画部 インフラシステム室の松尾基史室長は、「MobileIronの機能を活用することでアプリにまで踏み込んで規制ができ、iOSのアップデートにも迅速に対応できる」とコメント。他社の現場見学も受け入れており、「トヨタグループや他の自動車メーカー、金融などの異なる分野の企業からも関心を持っていただいている」と述べている。

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