官公庁の中でも積極的にワークスタイル改革に取り組む文部科学省は、2017年1月に向けてITインフラを刷新している。“レガシー”な現行システムを変えることで、一体何ができるのか。情報システムと人事それぞれの担当者に聞いた。
生産性の向上やワークライフバランス、ペーパーレス、女性の活躍促進など、さまざまな文脈で「ワークスタイル改革」が注目されており、さまざまな施策を行う企業が増えてきている。
しかし、最近は国が目標に掲げていることもあり、企業だけではなく、総務省などをはじめとする官公庁もワークスタイル改革に熱心に取り組んでいる。教育やスポーツに関する施策を担う文部科学省も、そんな行政機関の1つだ。
「超スマート社会」を実現する、ビッグデータ、IoT、サイバーセキュリティなどのAI研究開発や、人材育成に取り組む同省では現在、端末のシンクライアント化や無線LAN環境の導入、サーバやストレージ、ネットワークの仮想化など、業務用ITシステムの刷新に着手している。新システムの稼働は2017年1月を予定しており、システム刷新で“ワークスタイル改革”を目指しているという。
今回文科省がIT基盤の刷新に踏み切ったのは、4年契約だった行政情報システムの刷新時期を迎えたことがきっかけだ。同省 大臣官房政策課 情報システム企画室 情報システム専門官の風間広幸氏によれば、システムの調達をするにあたって、ワークスタイル改革を見据えたシステムの調達を検討し、次の3つのコンセプトで仕様を策定したという。
文部科学省は7月と8月を“ワークライフバランス推進強化月間”とし、管理職のテレワーク実施や研修、出勤時間を早くして就業時間を早める「ゆう活」など、ワークスタイル改革を目指す施策を行っている。今回のシステム刷新は、こうした施策を支援するためのものでもある。
セキュリティの強化も重要なポイントだ。政府機関を標的としたサイバー攻撃は近年増加傾向にあることから、機密情報を扱うネットワークの分離、監視の強化など、攻撃を受けることを前提に、攻撃を受けた場合にも情報漏えいなどを防ぐ対策を取り入れることにした。
これらの条件を基に入札を行い、価格も含めた総合的な評価から、2016年2月にNTTコムウェアが落札。現在は設計が終わり、システム構築を行っている段階だという。
ワークスタイル改革という観点で見れば、システム刷新による影響が大きいのは仮想デスクトップとシンクライアントの導入だろう。現在、文科省内で使用されているPCは形こそノートPCであるものの、ワイヤーでデスクに固定しているなど、基本的に各ユーザーのデスクのみで利用する運用形態であり、会議等で自由に端末を持ち運びできなかったという。
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