チームの力で“攻めの情シスへの壁”を崩していく 旭硝子のPoC部隊奮闘記(後編)【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(1/2 ページ)

“攻めの情シス”にチャレンジしたいという若手スタッフ4人が、いよいよPoC部隊になるためのトレーニングを開始。彼らにおそいかかる試練とは……。

» 2017年07月20日 07時00分 公開
[やつづかえりITmedia]

 今後、クラウド化が進んでサーバの保守に手がかからなくなったら、社内のIT部門を“攻め”と“守り”のバイモーダル体制にしたい――。そんな思いから、希望者を募ってPoC部隊を育てようとしているのがAGC旭硝子だ。

 前編では、AWSの導入を進める浅沼勉氏(情報システム部 デジタル・イノベーショングループ マネージャー)が、基幹システムのクラウド化が完了する2年後を見越し、運用・保守が専門だった若手にシステム開発のスキルを身につけさせるという新たな取り組みを始めるまでをお伝えした。

 後編となる本記事では、助っ人として呼ばれたサーバーワークス クラウドインテグレーション部 技術1課の千葉哲也課長と山中大志氏、AGC旭硝子の選抜メンバーとして参加する久保田有紀氏(情報システム部 デジタル・イノベーショングループ)に、具体的なトレーニングの様子と立ちはだかったハードル、それを乗り越えるために取り組んだことを聞いた。

Photo AGC旭硝子 情報システム部 デジタル・イノベーショングループ マネージャーの浅沼勉氏

プロの手ほどきで“にわかPoC部隊”はどう変わったのか

Photo AGC旭硝子 情報システム部デジタル・イノベーショングループの久保田有紀氏

 やる気のあるメンバーが手を挙げ、実際に開発に挑戦してみるという活動に、2016年から参加している久保田氏。昨年(2016年)は完全に自学自習で取り組み、つまずくことばかりで辛かったという。

 それでも諦めず、浅沼氏には「とんでもコード」と評された(前回記事参照)ものの、最終的に動くものを作り上げたというのだから、相当ガッツがある若者だ。

 そんな久保田氏によれば、今年(2017年)は昨年と比較して、参加メンバーのモチベーションも、身につくスキルも大きく向上しているという。

 「去年は、『やらなきゃ』という切迫感みたいなものはあまりなかったんです。サボってもあまり影響がないと言いますか、あくまで本業の傍らでやるバイト感覚だったんですね。今年は、多くの時間は割けなくても、ちゃんと業務としてやるべきものという意識に変わってきているという感覚があります」

 意識の変化の要因としては、毎週金曜日は必ずサーバーワークスのオフィスに出向き、8時間みっちりとトレーニングを受けるという仕組みができたこと、プログラミングや開発環境の基礎を学んだ後は、サーバーワークスの講師2人とAGC旭硝子のメンバー4人の体制で、実際の開発プロジェクトに取り組むというリアルな経験ができているという点が大きそうだ。

 技術や知識の習得の面でも、暗中模索だった昨年と比べ、その道のプロフェッショナルから体系的に学べるので非常に効率が良い。久保田さんは学ぶことの楽しさを大いに感じているようだ。

 「今回の取り組みが始まって1カ月くらいたった頃だと思いますが、よく言われる『点と点がつながる』感覚がありました。Web上で目にするいろんな情報も、これとこれがつながっているんだな……、という感じで。そうなれた理由の1つは、千葉さんと山中さんが僕らのレベルに合わせて教えてくれたから。初心者でもどんどん理解できるようになったのが大きいと思います。

 もう1つは、プログラミング言語だとか開発環境とかについてだけではなく、アジャイル的な開発プロジェクトの進め方、要件の考え方だったり、タスクの割り振りの仕方だったりという、“自分たちだけでは見えなかった領域”について教えてもらったこと。技術的なこととプロジェクトの管理手法という両輪で学べるのがとても大きいと思います」

コード書きの基礎からプロジェクト管理までを一気に経験

 サーバーワークスの千葉氏と山中氏にとっても、取引先の社員を開発者に育てるというのは初めての挑戦だった。まずは開発環境を作り、次にプログラミングの基礎を教え、それが終わったら実際にシステムを開発する時のプロセスを教え……、というカリキュラムを考え、丁寧に進めていったという。

 「今は、PoC(Proof of Concept:新しいコンセプトを実証するための試作)案件を1つ進めているところです。ただ開発をするのではなく、開発をするためのプロジェクト管理はこういうふうにやりましょうとか、リポジトリをどういう風に使うかとか、例えばプロジェクトに合わせてブランチをどう切るか、といった考え方の部分を伝えるようにしています」(千葉氏)

 進行中のPoCは、AGC旭硝子の社内で実際に要望があったシステムを題材に取り組んでいるものだという。これは先に久保田氏が触れていた通り、「ただの勉強ではなく、実際の業務現場の案件」という責任感の醸成にもつながる上、“難しくても都合よく仕様を変えたりはできない”という点でも、勉強になっているようだ。

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