知らないと損をするNVMeの3つの実装方法とメリット/デメリットNVMeの性能を引き出す3つの実装方法(後編)

ストレージプロトコルのパフォーマンスの問題を解決するために生み出された新しいプロトコルがNVMeだ。これを利用するための具体的な実装方法は3つある。どれを選ぶべきなのか。

» 2017年08月16日 10時00分 公開
[Chris EvansComputer Weekly]

 前編(Computer Weekly日本語版 8月2日号掲載)では、レガシープロトコルの限界と、それに代わるNVMeについて詳しく解説した。このNVMeを実装する方法は3つある。

サーバでのNVMe

 1つは、サーバでNVMeドライブを使用する方法だ。

 この方法では、サーバがBIOSレベルでデバイスを物理的にサポートする必要があるのは明らかだ。OSもNVMeをサポートする必要があるが、最新のOSはほぼ全て、既にNVMeをネイティブにサポートしている。VMwareの「VMware Virtual SAN」などのプラットフォームはNVMeを18カ月以上サポートしており、その間パフォーマンスを順調に向上している。

アレイでのNVMe

 2つ目は、ストレージのサプライヤーが自社製品でNVMeドライブをサポートする方法だ。

 最近のストレージアレイはほとんどが、サーバハードウェアと幾つかのカスタムコンポーネントで構成される。SASドライブをNVMeに置き換えると、パフォーマンスとスループットが向上する。アレイのサプライヤーは、パフォーマンス、回復性、シンプルさを向上する方法として、SATAからSASやファイバーチャネルドライブへの移行など、同様の変更を以前から何度も行ってきた。こうした変更には、ストレージコントローラーなどの内部コンポーネントのアップグレードも必要になる。

 最近、ストレージアレイサプライヤーはNVMeサポートを発表し始めている。Pure Storageは、NVMeサポートを備えた「FlashArray//X」を2017年4月にリリースした。HPEは、同社の「HPE 3PAR」プラットフォームでバックエンド接続にNVMeサポートを提供する予定であることを発表している。NetAppは、同社の最新ハードウェアプラットフォームで、NVMeフラッシュストレージを読み取りキャッシュ(「NetApp Flash Cache」)として提供している。

NVMeのボトルネックになるアレイコントローラー

 だが、ストレージアレイ内でNVMeを使用するストレージサプライヤーは、アレイのOSがボトルネックになり始めるという問題に直面する。

 HDDが低速であれば、ソフトウェアが多少非効率的でも我慢できる。だが、高速ストレージではこの問題が顕在化する。

 EMCはマルチプロセッシングをサポートし、高速デバイス向けの基盤とするために、2013年に「VNX」(コードネームMCx)のコードを書き直さなければならなかった。DataCoreも2016年に「Parallel I/O」というテクノロジーを導入し、同社のソフトウェア定義ストレージソリューションがサーバとストレージハードウェアのパフォーマンス向上のメリットを生かせるようにした。

 ストレージアレイサプライヤーにとっての大きな課題は、NVMeのメリットを実証することだろう。まずは高速デバイスを利用できるようになることを示し、次にこの改善が経済的メリットにつながることを実証する必要がある。小幅なパフォーマンス向上だけでは、高速テクノロジーへの移行の正当性を顧客に納得させるには不十分だ。

NVMe over Fabrics

 NVMe導入の3つ目の選択肢は、「NVMe over Fabrics」(NVMf)を使用する方法だ。

 これは、長い距離を隔てて、マザーボードやドライブレベルのNVMeコマンドを実行する方法だ。この方法は、ファイバーチャネルプロトコルやiSCSIプロトコルを使用して、物理トランスポートのSCSIをファイバーチャネルやイーサネットにラップする方法に似ている。

 NVMfにより、NVMeプロトコルがリモートダイレクトメモリアクセス(RDMA)やファイバーチャネルにラップされる。前者では、InfiniBandイーサネットやコンバージドイーサネット経由での物理接続が提供される。

 このようなソリューションにより、2つの興味深いシナリオが実現する。

 1つは、現在のファイバーチャネルネットワークがNVMeとSCSIをストレージプロトコルとしてサポートするようアップグレードされ、既存のテクノロジーを再利用する選択肢が顧客に提供される可能性があることだ。これによってパフォーマンスが改善される場合があるが、最終的にはバックエンドストレージのパフォーマンスの制限を受けることになる。

 もう1つは、NVMfを使用して論理ストレージアレイとして動作するストレージファブリックを構築するか、NVMfをハイパーコンバージド方式で運用するオプションだ。

 スタートアップ企業Exeleroが、「NVMesh」というNVMeファブリックテクノロジーを開発した。最近、同社はMicronとパートナー提携し、スケールアウトストレージハードウェアプラットフォーム「SolidScale」をリリースした。また、同様にスタートアップ企業Apeiron Data Systemsが、「NVMe over Ethernet」を提供するスケールアウトストレージアプライアンスを実現している。だがこれらのソリューションは、従来のストレージアレイ製品で得られたレプリケーション、データ保護、スナップショット、容量効率化などの機能が全て得られるとは限らない。

NVMeの真のメリットを備えるストレージアレイは存在するか

 NVMfは、一歩先を行く高いパフォーマンスをもたらし、従来のストレージアレイが実現するよりもうまくNVMeテクノロジーを利用している。

 だが、従来型ストレージには、1つのフォームファクターにリソースを集約するメリットがあり、多くのユーザーがプラットフォームに期待する高度なストレージ機能も備わっている。

 そのため現状では、例えばキャッシュを使って従来型ストレージアレイをアップグレードしたのと同じように、多くのユーザーにとっては、サーバのダイレクトアタッチドストレージとしてNVMeを利用するのが恐らく最善といえるだろう。

 一方、規模の大きさと高いパフォーマンスが要求されるIT企業は、NVMfを土台に構築された最先端テクノロジーが適切である可能性が最も高い。

 NVMeのパフォーマンスメリットも、NVMfから得られる利点も明らかだ。だが、ストレージアレイから慣れ親しんだ機能とNVMeのメリットを結び付けられるかというと、大きな疑問が残る。

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