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» 2017年11月09日 08時00分 公開

真説・人工知能に関する12の誤解(10):日本のAI人材育成、そんな“制度”で大丈夫か? (2/4)

[松本健太郎,ITmedia]

 私は普段、PHPとPythonとRでコーディングを行うのですが、言語そのものは命令文にすぎないと考えています。本当に大事なことは、コードが書けることではなく、自分以外の第三者でも理解できるコードを書ける論理力を養えるかどうか。いくらコードが書けても、論理的なコードが書けなければ、早晩行き詰まるでしょう。

 プログラミング教育の理念は素晴らしいものではあるものの、これを誰が、どのような教材を使って、何を教えるのかは不透明です。

 一応、先ほど挙げた報告書の文中にも、以下のような指導例はあります。特定の科目として設けるのではなく、総合学習、理科、算数、音楽など、あらゆる授業で、プログラミング的思考を用いた指導を行う方針のようですが、具体性を欠いていると言わざるを得ません。抽象度の高い、誰も反論できない高尚な理念だけが先行しているとも言えます。

プログラミング教育の指導例(授業例の抜粋)
科目 指導例
理科 身の回りには、電気の性質や働きを利用した道具があることを捉える学習を行う際、プログラミングを体験しながら、エネルギーを効果的に利用するために、さまざまな電気製品にはプログラムが活用され条件に応じて動作していることに気付く学習を取り入れていく
音楽 音楽づくりの活動において、創作用のICTツールを活用しながら、与えられた条件を基に、音の長さや音の高さの組合せなどを試行錯誤し、つくる過程を楽しみながら見通しを持ってまとまりのある音楽をつくる
総合学習 情報に関する課題を探究する中で、自分の暮らしとプログラミングとの関係を考え、プログラミングを体験しながらそのよさに気付く学びを取り入れていく

 私の知り合いの小学校教師に話を聞くと、「先行的に始めている学校もあるが、何をやっていいか分からず、ExcelやPowerPointを触っている」とのことで、今のところ、その実態は“街のPC教室”とさほど変わりません。「都会はともかく、地方では先生がITツールを使えない」「予算が硬直化しており、導入が難しい」という声もあり、現場でどうにかなるレベルではなさそうです。

 中央教育審議会でも、プログラミング教育に対して賛否両論が巻き起こっているようです。中にはこんな意見もあり、「後は現場でよろしく」では、ついていけない先生が多いであろう現状もうかがえます

 内容を増やすばかりでは、到底小学校の先生はやり切れないと思う。新しいことをやるのであれば、それなりの人員と条件整備が必要である。デジタル教科書の導入等、ICTの活用についても、地域格差が懸念されている。このような段階で、次から次に新たなものが出てくると、小学校の先生の疲弊感は強くなるばかりなので、実現可能性を考えてほしい。(教育課程部会 小学校部会(第7回)資料より)

 現場での運用がままならないようでは、プログラミング教育は形がい化し、“企画倒れ”になりかねません。そして、AI人材育成に関する課題は、高等教育、つまり大学においても表れています。

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