連載
» 2017年11月09日 08時00分 公開

真説・人工知能に関する12の誤解(10):日本のAI人材育成、そんな“制度”で大丈夫か? (3/4)

[松本健太郎,ITmedia]

大学は「産業ニーズ」に応える組織であるべきか?

photo 昨今、STEM教育が大きな注目を集めています(写真はイメージです)

 データサイエンティストの圧倒的な不足を背景に、文理を問わずSTEM教育(科学=Science、技術=Technology、工学=Engineering、数学=Mathematicsといった理工系教育分野の総称)の重要度が高まってきています。2017年4月には、滋賀大学に日本発のデータサイエンス学部が設置され、注目を集めました

 また、経済産業省が主催する産業構造審議会の新産業構造部会では、高等教育に「産業ニーズに応じた教育」が重要だと発表しています。人工知能が浸透する、この先の日本においては「実社会に欠かせないデータサイエンスの教育」という、教育界への要請は今後ますます強まるでしょう。

 政府関係者もそう考えているようで、2014年5月6日に開催されたOECD閣僚理事会で、安倍首相は次のように講演しています

 日本では、みんな横並び、単線型の教育ばかりを行ってきました。小学校6年、中学校3年、高校3年の後、理系学生の半分以上が、工学部の研究室に入る。こればかりを繰り返してきたのです。しかし、そうしたモノカルチャー型の高等教育では、斬新な発想は生まれません。だからこそ、私は、教育改革を進めています。学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたいと考えています。

 しかし、大学とは産業界からのニーズに応じるための場所なのでしょうか。そのアプローチで先端IT人材は増えるのでしょうか。

 学校教育法には「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」「大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする」とあります。

 もともと、大学は「産業ニーズ」に応えるための場所ではなく、真理を追究し、その研究で得た成果を社会に還元するための場所なのだと言えます。あくまで、産業界というのは還元する対象の1つであり、それ自体が目的になるものではないように思います。大学は職業訓練学校のような存在でいいのか? これが私の率直な疑問です。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -