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» 2017年11月09日 08時00分 公開

真説・人工知能に関する12の誤解(10):日本のAI人材育成、そんな“制度”で大丈夫か? (4/4)

[松本健太郎,ITmedia]
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photo 大学の価値を考え直すときが来ているのではないでしょうか(写真はイメージです)

 確かに経験に勝る教育はありません。学生時代に学んだことよりも、社会に出てから覚えたことが、仕事や生活に大きな影響を与えている人の方が、割合で考えれば圧倒的に多いと思います。社会の変化によって、大学の役割や存在意義というのは変わっていくのかもしれません。

 しかし、その方向性が都度ブレてしまうのは、大人たち自身が、大学の価値を定義できていないためだと考えます。「何のために大学に行くのか」という子供からの質問に、あなたはどう答えますか? 良い就職先を見つけるためでしょうか、それとも今後の人生で有利になるからでしょうか。

 私自身、今はディープラーニングを扱うエンジニアですが、「あのとき真面目に数III・Cを学んでおけばよかった」と後悔することも少なくありません。とはいえ、単に統計を学ぶだけであれば、高校卒業後にPythonのコーディングを勉強して、クラウドソーシングで案件を受託していれば、稼ぎを得ることはできるでしょう。

 なぜSTEM教育が大切なのか、大学は産業ニーズに応える必要はあるのか、今こそ、真剣に考えるときかもしれません。

AI人材が足りないのは「当たり前」

 ディープラーニングの世界では、毎日のようにイノベーションが起きています。「3カ月前の論文がもう古い」なんて事例はザラにあります。そのたびに知識の更新を図る研究者は大勢います。それが世界の最前線です。

 その様子を見ていると、本当に大切なのは、学ぶ内容そのものではなく、学び続ける習慣と情熱なのだと考えさせられます。週に何度か机の前に座り、知識の更新をする時間は、習慣化していなければ、とても続かないでしょう。私たちは学生時代を通して、その「習慣」を身に付けようとしていたと考えても良いかもしれません。

 「人工知能をビジネスに取り入れなければならない、ところで人工知能ってなんだ?」そんなときに調べるというプロセスは、学んだ習慣が生かされています。統計学を学びたい、ディープラーニングを1から学びたいという場合には、大学院に通ったり、まとまった時間を確保して、通信教育で学んだりといった選択肢もあります。

 この先、ディープラーニング以外にも、どんどん新しい技術が登場するでしょう。学校教育の現場で学んだ知識が陳腐化して、社会人になってから学び直す機会もあるはず。学校教育の領域と、継続学習の領域で衝突が始まったと言えます。

 「先端IT人材が足りない」と叫ばれていますが、未知の領域になればなるほど、人材が足りなくなるのは当たり前の話です。教育も含め、そのことを前提としたシステムを考えなければ、この問題は解決できないでしょう。それを考えずに、ただ人材不足を嘆くだけでは、問題の本質を見失っていると言わざるを得ません。

著者プロフィール:松本健太郎

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株式会社ロックオン開発部エンジニア 兼任 マーケティングメトリックス研究所所長。

セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。

本業はデジタルマーケティングと人工知能を交差させて、マーケティングロボットを現場で運用すること。

著者連絡先はこちら→kentaro_matsumoto@lockon.co.jp

編集部より:著者単行本発売のお知らせ

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本連載を執筆している、松本健太郎氏の書籍「グラフをつくる前に読む本 一瞬で伝わる表現はどのように生まれたのか」が、2017年9月23日に発売しました。

「このグラフ、どう見ればいいの?」

「このグラフ、何かが間違ってる気がする……」

棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、レーダーチャート、ヒートマップ、散布図などの主要なグラフの見せ方を歴史から丁寧に解説。学校では教えてくれなかった、正しいグラフの選択、分かりやすいグラフ表現の基礎を学べます。本書の詳細はこちらから。

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