会計の世界では、上場企業の連結会計が定着して久しい日本ですが、与信管理においては、親会社の信用を考慮してはいるものの、企業単体で評価を行う文化が、いまだに根強く残っています。
もちろん、親会社が子会社の債務を保証してくれているとは限らないため、単体企業の審査に意味がないわけではありません。しかし、企業グループは互いに財政的な結び付きが強く、子会社1つの経営破綻がグループの衰退を招くケースも少なくないため、グローバルのレイヤーで、自社グループ対取引先グループの取引状況を把握することには大きな価値があると考えられています。
多国籍にビジネスを展開するIT企業のF社は、顧客コードを企業コードで束ねるばかりではなく、そこにグループ関係を明らかにする「親コード」を振っています。自社グループ対取引先グループとの取引を可視化でき、重要な取引先グループに対する与信判断や取引限度額の検討を行っているとのことです。
また、取引先グループ内における未取引先を、外部調査機関からリストアップすることで、グループ内の紹介営業や包括契約の提案など、営業活動にもグローバルマスターを活用しています。
これまで本連載では、企業経営にとって重要だと認識されながらも見過ごされがちな「マスターデータ管理」をテーマとして、各回で「サプライヤー管理」「コンプライアンスチェック」「与信管理」など、それぞれの業務における実例をもとに、その影響や効果を紹介してきました。
もちろん、これらは事業部門を支援する情報システム部門にとっても他人ごとではないと思いますが、情報システム部門が先導してリリース、保守するシステムのパフォーマンスもまた、マスターデータの“完成度”によって成否が問われることを忘れてはいけません。
最後に、東京商工リサーチのお客さまであり、CRM導入プロジェクトを取引先マスターの整備と共に成功に導いた、情報システム部長の言葉をご紹介します。読者の皆さんがマスターデータ管理に取り組んでやり遂げ、ひいてはビジネスを成功に導くことを願ってやみません。
システム導入の検討は、ツールに意識が集中しがちですが、そこに入力、蓄積されていくデータはより重要でしょう。例えるなら、料理というプロジェクトにおいては、機能的な調理器具(ツール)のみならず、当然、鮮度と品質の高い食材(データ)が求められるということです
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