データガバナンスやMDMを見直すポイントを紹介する本連載。今回は、成果が比較的早期に表れやすいとされている「サプライヤーデータ管理」の事例を2つご紹介します。
これからのビジネスにはデータが重要。そう分かっていても、課題が多く生かしきれない――前回の記事では、そんな日本企業を取り巻く実態を「取引先マスター」を例にお伝えしました。今回からは事業部門の現場で、その取引先マスターがどう使われているか、実例を見ていきます。
最初に取り上げるのは、サプライヤーのデータです。今日において、企業の購買、調達担当者に求められる業務のレベルは非常に高度化しています。アップルやナイキなど、CSRを重視する欧米由来となる小売りブランドの中には、自社のサプライヤーを公表し、彼らの人権保護や環境安全、安全保障貿易のテーマなどを自社の課題と捉え、改善を主導する企業が増えているのは、その象徴ともいえる動きでしょう。
私は、サプライヤーデータを整備することは、「サプライチェーンの最適化」「安定的な調達」という2つの点で、企業経営に貢献すると考えています。早速、テーマごとに例を見てみましょう。
数多くのグループ会社を海外展開するメーカーA社は10年来、グローバルサプライヤーデータの整備に注力してきた企業です。
取り組みを始めた当初、「事業部やグループ会社間で取引先コードや品目コードがバラバラで、何をどこから購入しているのか、グループ全体で数値を把握するのが難しい」という課題がありました。当時、A社は厳しい決算状況が続いており、コスト改革の柱に「データを活用した購買活動の最適化」を掲げ、社運をかけて取り組んだのです。
地域や事業、子会社ごとに優先順位をつけ、段階的にマスター整備に取り組み、現在では数万件に及ぶ仕入れ先のほとんどにユニークな取引先コードを付番しています。その過程では、ETLツールを活用したり、辞書として、私どものような外部ベンダーのデータを参照したりしながら、企業単位のユニークなコード付番と拠点や、親会社とのひも付けを粘り強く進めました。
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