こうしてでき上がったデータベースを用いて、彼らはグループ全体で何をどこから購入しているかを見える化しました。そして、品目種別にサプライヤーを評価して、仕入価格交渉を行い、集中購買などで大きなコスト削減に成功したのです。もちろん、データ整備は初めの“一歩”であり、成功の裏には、現場のバイヤーによる不断の努力があったことはいうまでもありません。
一方で、いわゆる“ベンダーロックイン”の弊害と同じく、サプライヤーとの取引は、必ずしも集約一辺倒が良いわけではありません。調達品目の汎用(はんよう)性などを考慮して取引を分散させ、戦略的に企業間競争を作ることもまた、重要な取り組みです。そのため、サプライヤーデータには法人やグループ単位、あるいは品目、業種単位でまとめられる柔軟性が求められるのです。
大手メーカーの合弁企業であるB社は、約3年前、海外仕入れ先の倒産をうけ、サプライヤー管理を見直さざるを得ない状況に追い込まれました。代替の利かない戦略部品を仕入れていた同社の倒産をきっかけに、市場にはB社の供給不安説が流れるなど、ブランドを毀損(きそん)しかねない重大な事態を引き起こしました。
調達管理部門の担当者は、サプライヤーが申請する情報を基に、評価の見直しを行っているケースが少なくありません。B社もまた、サプライヤー各社と共有するポータルサイトを通じてアンケート調査を行っており、QCDD(品質、コスト、納期、技術開発)以外の評価――特に財務情報を評価していました。
しかしながら、国内外のサプライヤー数が1000社を超え、アンケート調査の回答率や正確性に課題が出てきたところで、前述の倒産に見舞われてしまったのです。その後、当社がとった対策は次の通りです。
この取り組みは、サプライヤー調査における社内工数の削減と網羅性を両立させたベストプラクティスといえるでしょう。
サプライヤーに外部コードを申請させることで、実在性の確認や既存取引の有無を容易に確認できるとともに、財務状況などの外部公開情報をスムーズに取り込めます。調査の精度を重視する企業では、自社による調査も行いながら、検証目的で外部情報を照会するケースもあるほどです。
昨今、メーカーの供給責任が強く求められることから、サプライヤー調査は、その対象が2次、3次へと広がる傾向を見せています。ユニークな企業コードで構造化された基礎データはもちろんですが、さまざまな外部データと連携することで、多角的な分析を可能にする、エコサプライヤーデータが求められているのです。
東京商工リサーチ ソリューション開発部 コンサルタント。企業情報データベースや関連アプリケーションを専門としたプリセールス活動に従事。グローバルレベルの与信管理やサプライヤー管理をテーマとした講演も行う。企業情報を構築する調査現場での経験を経て、2012年より現職。
趣味は山登り(奥多摩、丹沢の低山を中心に)、サイクリング(ロードバイク初心者)、スノーボードなど。運動不足解消のためでもあるが、運動後の1杯もまたやめられない。
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