ルーティンワークの時間が4分の1に 住友林業情報システムに学ぶ、“すぐ効く”RPA導入法働き方改革のリアル カンファレンス セミナーリポート(1/3 ページ)

働き方改革を実現するツールとしてRPA、AI、botなどの技術が注目されている。人が行っていた定型作業の多くを「24時間365日働けるデジタルレイバー」に任せるポイントは何か。ITmedia エンタープライズが2018年3月14日に開催した「働き方改革のリアル カンファレンス」のデジタルレイバートラックからそのヒントを探る。

» 2018年05月11日 07時00分 公開
[タンクフルITmedia]

情シス主導のRPA導入で働き方を変える 住友林業情報システム

Photo 住友林業情報システム ICTビジネスサービス部 シニアマネージャーの成田裕一氏

 住友林業情報システムでは、2015年からBizRoboを活用したデジタルレイバー(ロボット)を開発し、社内のルーティンワークの自動化を進めている。

 自動化への取り組みは、日々のオフィス業務で発生する“作業”を代行するロボットを作成し、住友林業グループ全体にレンタルしようとしたのが始まりだった。住友林業情報システムのICTビジネスサービス部でシニアマネージャーを務める成田裕一氏は、「システム会社なので、社内にはエンジニアもプログラマーもいるが、彼らを使うとコストがかかる。そこで、開発未経験の情シススタッフでもロボットを開発できるかを検証した」という。

 開発経験のないスタッフを集めてチームを編成した成田氏は、半年で約25業務、70体のロボットを開発。現在では、「素人チームが作ったロボット」(成田氏)が30業務、100体稼働し、生産性の向上に一役買っている。

 すぐ効く導入を成功させるためのポイントについて成田氏は、「IT部門が主導すること」「部分最適化」という2点を挙げる。RPAを活用する業務部門が導入を主導するときに起こりがちなのが、「最初に業務プロセス全体の改善策を検討してしまうこと」だと成田氏は指摘する。

 同氏によれば、業務全体の改善策を考えたり、業務フロー全体を見直そうとしたりすることにこだわり過ぎると、RPAの導入に至るまでに時間がかかり過ぎてしまうという。即効性を求めるなら、IT部門が主導的な立場になり、その上で、「業務全体を自動化しようとせず、自動化できる“部分”はどこかを探る。いわば『部分最適化』を図る形」(成田氏)と説明する。

 この方法を実践するため、同社ではRPAによる自動化を検討している業務があれば、その業務の「まさに現場の担当者だけを呼んで、個別面談のような形で現在の業務のやり方をヒアリングした」(成田氏)という。その中で、「どこが自動化されると業務の負荷が軽減されるのか」を使う人の立場から話してもらい、そのためのロボットを開発。その結果が、わずか半年で25業務、70体ものロボット開発に結びついたというわけだ。

ルーティンワークにかかる時間が激減

 同社のRPA活用の取り組みついて説明した成田氏は、社内で実際にRPAを活用しているICTビジネスサービス部 チーフの市東千晴氏を壇上に招き、ロボットと人が共に働くことの意義を聞いた。2歳の子どもがいるため時短勤務で働く市東氏は、自身が望む働き方ができるのは、RPAによる業務効率化や自動化のおかげだったと話す。

Photo 住友林業情報システム ICTビジネスサービス部 チーフの市東千晴氏

 市東氏は、Webを通じたカタログ請求と発送のフローを例に挙げ、RPAによる業務の自動化の効果を説明。以前は複数のカタログ請求サイトにログインして顧客からの依頼データを確認し、顧客管理サーバとマッチングした上でカタログを発送するためのデータを準備する作業が必要だったという。それが、RPAを導入したことで作業が自動化され、「作業時間を4分の1に短縮できた」(市東氏)と話す。

 さらに、これまでは、イベント時や広告を打った直後は、夜間に一気にカタログ請求が増えて、「翌朝からの作業では対応し切れないことがあった」と振り返る。RPAなら夜中も休みなく動くので、翌朝、担当者が「きちんと送付できているかを確認するだけで仕事が済むようになった」とメリットを強調した。

 市東氏が最も大きなRPAのメリットとして挙げるのは、「定型業務にかかっていた時間を、企画の立案などといった付加価値の高い業務に使えるようになった」点だ。

 「今まで時間がなくて改善できなかった業務や断っていた仕事、うまくまとめられなかった企画などに注力できるようになった。それによって売り上げが伸びており、モチベーションも上がった」(市東氏)

利用部門のEUCとしてスケールさせることも視野に

 再び登壇した成田氏は、RPAをどのようにスケールさせていくのかという今後の課題に言及した。同氏は、「RPAで業務の一部を自動化することは可能だが、頭から終わりまで自動化できる業務は少ない」と述べ、「人間とRPAが共存して1つの業務をこなしていくべき」という見方を示した。

 同社のRPA化は現在、定型業務を自動化する段階にあるが、今後は非定型業務の自動化なども目指すという。それには、どのように手書き文字や音声、画像などを読み込ませて自動化する機能を持たせていくか、また、その上でどうスケールさせていくのかがポイントになるという。

 成田氏によれば、RPAをスケールさせる方法については、明確な方向性を決められていないという。その上で、「RPAは、やはり実際に利用するユーザー部門の『エンドユーザーコンピューティング(EUC)』として見ることも重要。今後はその方向性も探っていく」と述べ、講演を締めくくった。

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