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» 2018年09月05日 10時00分 公開

AIはパターンマッチングを超えられるか?(後編):「AIは物理学を理解するのではない。パターンを理解する」が持つ重大な意味

AIは膨大な情報から問題箇所を検知することができる。これだけでも十分有用だが、今のAIにはこれ以上のことができない。AI導入に際しては、「AIが理解するのはパターンだ」ということを理解する必要がある。

[Cliff Saran,Computer Weekly]

 前編(Computer Weekly日本語版 8月22日号掲載)では、機械学習や深層学習の適用範囲が拡大している現状、可能性と問題点を指摘した。

 後編では、現在のAIが抱える限界、もてはやされるAIの現実、AIがパターンマッチングを超えるための条件について解説する。

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AIの限界

 ルー氏はまた、AIを実務に導入している人を見つけるのはAIツールの構築に携わる人を探すより難しいとも指摘している。「コモディティ化されたツールセットを使えば、大きな問題も実際に解決することができる。それなのにAIに関わっている人々は、現実の問題を解決するよりもツールを構築することへの関心がより高い傾向にある」

 同氏の経験では、汎用(はんよう)AIの専門家は、応用分野固有の問題を解決するための専門知識が不足していることが多いという。同氏は次のように語る。「私が出席したカンファレンスで、発表者が『この中でAIプロジェクトに携わっている方はいますか』と尋ねると、全員が手を挙げた。続いて発表者が『ではパイロットプロジェクトを実施している方はいますか』と尋ねると、半分以上のオーディエンスが手を挙げた。だが、実務に導入している例はほぼ皆無だ」

 ルー氏に言わせると、企業がAIの価値をまだあまり実感できない理由は、AIシステムを構築している人々は、実務分野の専門知識を設計に組み込めるほど洗練されていないからだ。「機械学習は、ただデータを投入するだけで万事解決という考えは正しくない」と同氏は説明する。「それ以外にも数多くの作業が必要だ。AIに組み込む専門分野の知識が増えるほど、そのAIの価値は高まる」

 機械学習やAIは、基本的にパターンを使って目標を達成するが、間違った結果に到達し、危険や高額の費用につながる状況も存在するとルー氏は主張する。「適切な品質のデータを十分に投入すれば、最終的にAIがパターンを検出する精度も上がり、ユーザーにも結果の質の向上が分かる」と同氏は話す。「今のところ営業部門の担当者を選定する分には好成績を挙げているかもしれない。また石油やガスのパイプラインで腐食が発生した場所の特定にもAIを使う。しかし、次に何をすべきかという問題は複雑だ」

 「専門家が腐食を発見した場合、分析して腐食の程度を把握し、今すぐ修復する必要があるのか、もう1年待てるのかを判断する。ここで判断を誤ると膨大なコストがかかることになる。だから的確な判断は非常に貴重だ」

 AIは、次に何をすべきかという疑問に対する的確な回答を出すことはできないとルー氏は指摘する。「AIが答えを返す唯一の手段は、モデリングとシミュレーションによって腐食のあらゆる事例を参照し、パイプラインの現在の状態を把握することだ。AIは物理学を理解するのではない。パターンを理解する」

 全ての腐食をすぐに修理できるとは限らない。アナリストはモデリングとシミュレーションにより、場合によっては数百万種にも及ぶシナリオを評価し、効率的かつコスト効率にも優れた方法で修理の計画が立てられるかどうかを判断するとルー氏は話す。「機械学習は、アクションを学習するわけではない。アクションはあらかじめ決められている。指定されたパターンを検出した場合に、それに従ったアクションを実行する」と同氏は付け加える。

アルゴリズムは人間と互角

 このアクションは、プログラマーがコーディングしたアルゴリズムと、質的な面では互角だとルー氏は主張する。可能性のある結果を全てリアルタイムで見る唯一の方法は、モデリングとシミュレーションだと、ルー氏は話す。

 いずれ時がたてば、ハードウェアは物理モデリングで構築するように進化するだろうと同氏は期待を寄せる。「チップテクノロジーは、物理モデリングが意思決定プロセスの一環に組み込まれるまで進化を続けると私は考えている。また将来は、可能性のある全ての選択肢を見比べて、リスクやコストを最小限に抑える方法を選ぶようにアクションを最適化できるようになるだろう」と同氏は説明する。

 ルー氏はさらに続けて、GEのパイプライン検査を担当する部署では、GEが数百万本のパイプラインから膨大なデータセットを作成しているために、「腐食して実質上の問題が発生しているパイプラインから送られたデータから腐食の箇所を正確に特定するだけで何年もかかる。実際に漏えいが発生していない場合でもそうだ」と明かす。

 GEはAIを使用してデータを前処理し、パイプライン内で腐食の可能性が最も高い領域をアナリストが特定するのを支援している。「これは機械学習の完璧な実例だ。その分野の専門知識とデータが組み合わされて、機械学習ツールに送られている」とルー氏は説明する。「取り込んだデータが多いほど、AIはパイプラインの問題を特定するアナリストから学習することができる」

 ここではAIを効果的に導入して、人間の能力を増強している。つまり専門家がAIをトレーニングし、複雑なパターンも特定できるようにしている。

 先述の「Deep learning for physical processes: incorporating prior scientific knowledge」と題した論文の著者たちも、深層学習と物理モデリングを組み合わせることができると考えている。著者のベズナック氏、パジョ氏、ガリナリ氏は論文で次のように述べている。「数学や物理など、高度に発展した分野で物理的プロセスのモデリングのために蓄積された知識や技術が、効率的な学習システムを設計するためのガイドラインとして役立つと、われわれは信じている」

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