安定したインフラと堅牢なシステムが実現した緊急通報/安否確認システム「エマージェンシーコール」

 7月26日、宮城県北部を強い地震が襲った。震度6以上の地震が1日に3度も発生するのは非常に珍しく、知り合いや親戚、家族の安否を気遣った人も多いことだろう。しかし、こうした大きな地震の際には、一般加入電話や携帯電話が混雑し、連絡を取りたくてもなかなかつながらずに気をもむことも多い。そうした時に便利なのが、NTTが「171」で提供している災害用伝言ダイヤルだ。

 この「171」の元となったシステムを作ったのが、東京・町田に本社を置くイメージパートナーだ。大成建設のビル制御部門からスピンアウトした企業だが、主に電話やFAX、携帯電話、インターネットと、さまざまなコミュニケーションメディアにまたがるシステムおよびサービスを展開している。

 実は同社の社長を務める天野潔氏は、神戸市須磨区の出身。1995年1月に発生した阪神大震災の際、「情報システムに携わるものとして、何か支援できることはないか」とボランティアで開発したのが「被災者避難場所連絡システム」だった。このシステムでは、特定の電話番号にダイヤルし、音声メッセージの登録と再生が行えるようになっている。

 今ではこのシステムは、171として利用される一方、イメージパートナーによって独自の機能が追加されたパッケージ製品「エマージェンシーコール」へと発展を遂げている。エマージェンシーコールでは、メッセージの登録、再生による安否確認や通達を行えるだけでなく、一般電話や携帯電話、電子メールやFAXなど、さまざまな手段にまたがり一斉通知を行うことで、関係者の間でスピーディに連絡を取ることができる。

 従来の「ツリー型」の連絡網では、途中に1人でも不在があればそこから先への伝達が困難になる上、伝言内容の食い違いが生じるおそれもあった。これに対しエマージェンシーコールでは、同一の内容をいっせいに発信する。また、どれか1つの方法(例えば加入電話)でつながらなければ、連絡が取れるまで他の手段を自動的に試すこも可能だ。顧客の1社が、日曜日の夕刻にエマージェンシーコールを用いて対象人数944人に一斉通報訓練を行ったところ、30分で約300人、3時間のうちに全体の約3分の2にあたる622人への通報が確認できたという。

危機意識の高い企業を中心に採用

 エマージェンシーコールの仕組みは、図にしてみるとシンプルだ(図1)。何らかの緊急事態が発生すると、まず担当者はエマージェンシーコールにアクセスし、緊急メッセージを登録する。その後、あらかじめ登録されていた連絡先に対し、システムが自動的に通報を行う仕組みだ。この際、1人につき加入電話や携帯電話、電子メールなど、複数の通報先を登録することができる。通報先のグループ化も可能だ。

図1■エマージェンシーコールの仕組み(クリックで拡大)

 また、個々人への確実な通報を優先するか、それとも短時間のうちに全員へ通報するかなど、通報方法の優先順位を設定できる。通報状況や安否確認状況を集計し、Webブラウザなどから確認することも可能である。

 こうした一連の機能を評価し、今では、経済産業省原子力安全・保安院や日本原子力発電のほか、全日本空輸や日本航空などの航空会社、NTT東日本/西日本やNTTドコモといった通信事業者など、危機管理体制が問われる組織、企業を中心に、約60社がエマージェンシーコールを利用しているという。最近では地方自治体の中にも導入を検討するところが登場してきた。

 ただここで、新たなニーズが生じてきた。本社以外の拠点でも、インターネット経由でエマージェンシーコールを利用したい、という案件が持ち上がるようになったのだ。しかしイメージパートナーは、システムの開発、運用やインテグレーションは行っていても、いわゆるインターネットサービスプロバイダーではない。

 そこで同社が、複数の接続サービスを比較検討した結果、緊急通報システムを支えるに足るとして選択したのが、ソニーの法人向けサービス「bit-drive」だった。

「いざ」というときに確実に使えるために

 そもそもエマージェンシーコールが利用されるのは、何らかの緊急事態は発生したときだ。その「いざ」というときにインフラが原因で、通報システムを利用できないのでは話にならない。「顧客の多くは危機意識の高いところ。しっかりしたインフラとしっかりしたシステム、つまり2つのサービスがともに高いレベルにないと、安心して使っていただけない」と、イメージパートナーの営業第一部、宇都宮健真氏は語る。

 例えば通常の地域IP網を経由するサービスでは、他のトラフィックの影響を受ける可能性が否定できない。いかなるときにもアベイラビリティを確保できるよう、他の通信の影響を受けないような設計が必須だったという。

 サポート体制もポイントの1つだ。現在提供されている通信サービスの中には、夕方6時以降や土日はサポートが提供されないものもある。しかし、先日の地震でも実証されたとおり、緊急事態は待ってはくれない。24時間365日体制でのサポートも不可欠の条件となる。

 こうした点をクリアしたのがbit-driveだったわけだが、それをさらに後押しする要因となったのが、オールインワンサーバ「DigitalGate」の存在だ。「エマージェンシーコールを導入する際の窓口は総務担当の方が多いが、そうした方に細かな設定、運用までお願いするのは現実的に困難。その点、DigitalGateには必要な機能がすべて含まれている上、サポートもすべてリモートから行える」(宇都宮氏)。

 セキュリティリスクを気にする企業によっては、高度なファイアウォール機能やVPN機能が必須となる。一般にこれらの機能を適切に設定するには手間がかかるものだが、DigitalGateはこれらをすべてデフォルトで搭載していることから、容易に安全な通信を提供できるという。「東京-大阪間でデータを二重化し、VPNで接続することで、低廉なコストで十分な速度の接続を利用できる」(同社技術部、チーフ・システム・プランナーの阿部章吾氏)。

 いざトラブルが生じた際の問題の切り分けも容易だ。「bit-driveはレスポンスが早い上に、ログを見れば、すぐその場でどこに問題があるのか切り分けできる。これに対しPPPoEなどだと、どこでセッションが切れてしまったのかを把握するのが難しい」(折笠氏)。

 回線の選択に当たっては、無論、コストパフォーマンスを見逃すわけにはいかない。「エマージェンシーコールは緊急時に利用するもので、毎月必ず利用するわけではない。そのために多くの予算を使うのは現実的ではない」(宇都宮氏)。これに対しbit-driveのサービス料金は、法人向けADSLの場合で月額2万円を切る。そのうえ、問い合わせや請求などの窓口が一本化され、分かりやすいこともメリットだ。

しっかりしたインフラが安定したサービスを支える

 イメージパートナーでは当初、案件ごとに個別にbit-driveを導入する形を取っていた。しかし、ソニーが今年2月にソリューションパートナー募集の声を上げたのを機に、一連のメリットを踏まえ、パートナーとしてbit-driveの販売に当たることを決定したという。

 「エマージェンシーコールシステムの導入に当たっては、毎回、同時に回線が必要になるのは見えていた。対応の一本化などを考えても、パートナーとなるのが自然だった」(阿部氏)。第1号のソリューションパートナーとなった今年2月以降、bit-driveとエマージェンシーコールの組み合わせを既に数件、顧客に納入しているという。

図2■エマージェンシーコール利用イメージ(クリックで拡大)
図2

 イメージパートナーでは今後、エマージェンシーコールのASP版を展開し、中小規模の企業でも気軽に利用できる体制を整えていく方針だ。また、金融情報提供サービスや新サービス「Broad-FAX」のインフラとして、自らユーザーとしてbit-driveを活用。「利用する機会はますます広がるだろう」(折笠氏)という。

 「エマージェンシーコールのようなサービスは、24時間常に動いていて当たり前で、安定したサービスが求められる。それにはしっかりとしたインフラが必要だ。今後もソニーとのパートナーシップを通じ、bit-driveのインフラの上にわれわれのソリューションを組み合わせることで、安定し、安心して使えるサービスを提供していきたい」(阿部氏)。

関連リンク
イメージパートナー
bit-drive
セキュアアクセスサービス“CRYP(クリプ)”
勤怠管理サービス“Internet Time Recorder”

[ITmedia]


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