なぜ、ITコンサルタントに依頼が来ないのか?システム部門Q&A(23)(3/3 ページ)

» 2005年07月09日 12時00分 公開
[木暮 仁,@IT]
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もっと基本的な問題が……

 行政は中小企業のIT化に積極的であり、資金調達の便宜だけでなく、中小企業経営者へのIT活用のセミナーやIT経営応援隊などのソフト面での支援もをしています。ところが、上記のように「ITの看板はかえって逆効果」のような状況でもあります。

 (1)他専門コンサルタントへのIT教育が不十分  

 何度も繰り返してきましたが、コンサルタントや相談窓口の人がITに自信がないと、IT活用の話題にならず、効果のある手段を見過ごしてしまうことになります。それを解決するには、中小企業経営者だけでなく、コンサルタントや相談窓口の人への適切なIT教育が必要になります。

 中小企業コンサルタントの国家資格である中小企業診断士では、資格取得にはIT関連科目がありますし、更新研修でもIT関連の内容もあります。しかし、その程度で解決するとは思えません。例えば、ある期間をIT特集にするとか、ITコーディネータ関連のポイント研修と資格更新ポイントの互換をするなど、既資格者への抜本的なPRを検討する必要があると思います。

 各種団体に加入するのは、雑談的であっても、ITがどう役に立つか、自分ならどのようにアプローチをするのかなどを知ってもらうのに好都合です。


 (2)情報システムへの展開プロセスの方法論を 

 では、どのようなことを知ってもらうのでしょうか? 経営者や中小企業診断士、ITコーディネータを対象としたIT普及教育では、IT化の成功事例や経営戦略の重要性、システム構築・運用の方法などの面ではかなり充実してきました。ところが、ビジネスモデルやビジネスプロセスモデルを策定した段階から、それを情報システムにどう結び付けるのかという部分に大きなギャップがあります。バランス・スコアカードを作成しても、それでどのような情報システムが必要になるのか、といったプロセスがあいまいです。

 そのことを示すのが成功事例だといえますが、成功事例は「とかく経営戦略や経営者の思いと、結果としての情報システムが報告される」ことであり、その情報システムに展開するプロセスがブラックボックスになっていることが多いように思われます。

 その理由には、そのプロセスがいまだコンサルタント個人の知識経験に頼る段階であり、方法論として確立していないからではないでしょうか。これは、ITコーディネータ・プロセスガイドラインやEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)でもいえることです。

 方法論の確立が不十分なために、他専門コンサルタントはITに自信がなく、相談を受けてもITに話が及ばない事態になるのだと思われます。ITコンサルタントのご努力を期待します。

まとめ

 なぜITコンサルタントに依頼が来ないのかのメカニズムを示した。

  • 経営者はITに疎いので、直接的な依頼が来ない
  • 大多数のコンサルタントもITに疎いのでITが話題にならず、間接的にも依頼が来ない

 個人的にそれを回避するには、

  • 「IT」の看板を下げる
  • 各種団体に入り、間接的依頼を受ける機会を増す
  • 登録には「業種業態」を工夫する

 といった手段を取らざるを得ないが、どうも自己否定のようだ。根本的な解決には(他力本願だが)、

  • 他専門コンサルタントへのIT教育が必要
  • その内容として、経営戦略から情報システムへブレークダウンする方法論が必要だ

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筆者プロフィール

木暮 仁(こぐれ ひとし)

東京生まれ。東京工業大学卒業。コスモ石油、コスモコンピュータセンター、東京経営短期大学教授を経て、現在フリー。情報関連資格は技術士(情報工学)、中小企業診断士、ITコーディネータ、システム監査、ISMS審査員補など。経営と情報の関係につき、経営側・提供側・利用側からタテマエとホンネの双方からの検討に興味を持ち、執筆、講演、大学非常勤講師などをしている。著書は「教科書 情報と社会」「情報システム部門再入門」(ともに日科技連出版社)など多数。http://www.kogures.com/hitoshi/にて、大学での授業テキストや講演の内容などを公開している


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