バウンダリレス(ばうんだりれす)情報システム用語事典

boundryless / 境界のなさ

» 2006年02月25日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 企業組織の内外において、部門・役職・立場・所在地などによる、あらゆる“境界”がないこと。1990年の初頭、GE(ゼネラル・エレクトリック)の会長兼CEO(当時) ジャック・ウェルチ(John F. Welch, Jr.)が、大企業ゆえの官僚制を打破するため、自社のあるべき姿・企業文化のビジョンとして提唱した。

 GEでは1980年代末からワークアウトを通じて、ともに働く者同士が部門や役職の境界を超えて協力する仕組みの構築し始めていたが、その価値観を象徴的に表す言葉である。

 ウェルチのいうバウンダリレスは、エゴイズム/セクショナリズム/官僚主義/偏狭主義を否定し、相互に協力するという「実務的意味合い」と、アイデアやリソースの出所にとらわれず、常に社員1人1人が顧客満足のために最善を尽くすという「知的意味合い」があり、学習する文化に弾みをつけるスローガンとなった。1991年からマネージャの人事評価でも、バウンダリレスな行動をしているかを評価するようになった。

 バウンダリレスが提唱される直前の1980年代後半はオフィス向け情報系システムの揺籃期で、こうしたコンピュータ・ネットワーク技術の進展が、階層組織(中間管理職)から「情報の収集」「情報の伝達」といった役目を奪う時期でもあった。ウェルチはこうした技術的環境変化に呼応する形で、20以上あった管理階層を6にまでダウンサイジングして現場に権限を与え、組織が活性化する改革を行っていった。バウンダリレスは、そうした改革の延長線上にあるコンセプトである。

参考文献

▼『ジャック・ウェルチ わが経営〈上〉』 ジャック・ウェルチ、ジョン・A・バーン=著/宮本喜一=訳/日本経済新聞社(日経ビジネス人文庫)/2005年5月(『Jack: Straight from the Gut』の邦訳新訳版)

▼『ジャック・ウェルチ わが経営〈下〉』 ジャック・ウェルチ、ジョン・A・バーン=著/宮本喜一=訳/日本経済新聞社(日経ビジネス人文庫)/2005年5月(『Jack: Straight from the Gut』の邦訳新訳版)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ