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» 2006年06月15日 12時00分 UPDATE

システム部門Q&A(32):新技術ラッシュをいかに乗り切るか? (1/3)

IT業界は日進月歩で技術が進歩し、新しい概念や技術が次々と現れている。エンジニアはこれらの技術革新に遅れてはならないと、必死になってキャッチアップするように努力しているが、それに疲れ果てているエンジニアも少なくない。果たして、本当に新しい技術を習得しなければならないのだろうか?

[木暮 仁,@IT]

質問

bSOAやWeb 2.0といった新しい概念や技術が続出しており、それらに追い付くのに疲れてしまいました。これらは必要なのでしょうか?

ベンダ企業で経験5年のIT技術者です。オブジェクト指向といっていたと思ったら、今度はSOAだ、Web 2.0だと新しい概念や技術が続出しており、それらにキャッチアップするのに疲れています。本当に新しい技術を習得しなければならないのでしょうか。また、習得するのにうまい方法はないでしょうか。


意見

 現在、多くのIT技術者が、新技術の習得に追われている状況です。自分のスキルの向上や顧客の期待に応えるために、新しい技術を習得することは重要です。しかし、その表面的なことに振り回されるのではなく、本質的な底流を理解することが大切です。それによって新技術の位置付けが明確になり、習得も容易になります。

 ここでは特定の技術ではなく、IT関連の新概念全般を対象にします。これには歴史的な考察が必要なので古い話題になりますが、ご了承ください。



IT用語のライフサイクル

 IT分野の発展は急速ですから、いろいろな用語が続出します。その中には、その後の発展の基礎になるものもあれば、いつの間にか消えてしまうバズワードも多くあります。これに関しては、ガートナーグループがハイプ曲線(hype cycle)という概念でうまく説明しています。

【関連記事】
Gartner Column:第9回 ハイプ曲線でITの先を読む (ITmediaエンタープライズ)

 また、出版業界では「IT用語寿命40冊説」があるのだそうです。IT関連用語は、それを題名とする図書が40冊出版されたときにブームが去り、売れなくなるというのです(30冊という説もあるとか)。

 ここでは、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)ERPパッケージを例にして、マスコミにおけるIT用語のライフサイクルを考察しましょう。

第1次:無条件礼賛論

 IT用語ライフサイクルの第1次(初期)の段階は「無条件礼賛論」です。この論調は、まず「米国では〜だ。それなのに日本では〜」論から始まります。

 BPRの基本にはカイゼンがあるのだが「改善ではない。抜本的改革なのだ」として、「これまでのカイゼンは〜」と、あえてあしざまにいいたがり、米国での成功例を喧伝します。そしてBPRを実現する唯一の手段が、ERPパッケージを導入することなのだと展開します。しかも、当時のERPパッケージ機能にない分割納入も製番方式も、すべてグローバル化に合致しない日本的な不合理な習慣であると決め付けます。

 さらに「これまでは〜、これからは〜」論により、これまでの方法を全面否定します。IT推進では、経営者がリーダーシップを取るべきこと、情報システムの構築とともに業務の見直しをするべきこと、システム間の連携が重要であることなどは、以前からいわれており、それなりに実践されているのに、「これまでは、それらが考慮されていなかった。これを解決できるのがERPパッケージだ」というのです。

 そして、どういうわけか必ず「IT部門バッシング」論になるのですね。経営戦略との乖離があったり業務革新につながらなかったのは、IT部門が技術バカだったからであり、利用部門の要求を受け入れて情報システムを複雑にしてしまったのは、IT部門の責任であるとなります。BPR以前にブームになったSIS(戦略的情報システム)ですら、「メーカーの販売戦略に迎合したIT部門」の責任だという論調も出てくる始末です。それで「ERPパッケージの導入にはIT部門を参加させるな」などとなります。

第2次:日本的○○の出現

 そして、先行企業でのBPRやERPパッケージ導入が始まると、第1次での教条的論理が揺らいできます。風土・環境に合致した経営戦略が重要であり、ERPパッケージにもそれに合った機能が求められることが明らかになります。そこで、「日本的BPR論」とか「日本企業にマッチしたERPパッケージ」などが出現します。

第3次:副作用・不要論へ

 そのうち、「ERPパッケージは導入した。それなのにBPRは実現していない」といった事例が出てきます。また、自社のコアコンピタンスの分野では、ERPパッケージよりも従来のシステムの方が勝っているというケースもあります。それで「ERPパッケージはベストプラクティスだ」という主張も消えてしまいます。

 そうこうしているうちに、新概念であるSCM(サプライチェーン・マネジメント)が出てくると、「BPRは自社内だけの業務改革であり、大した効果はない。これからは企業間連携による合理化のSCMだ」となり、BPRは消え去ってしまいます。

 ERPパッケージも、大企業への売り込みが成熟期になると、対象が中小企業へと移ります。すると、ERPパッケージ推進の論拠は「自社仕様での個別開発では壁が高い。出来合いのERPパッケージでIT化を図るべきだ」というように、いつの間にか第1次の論調とはほとんど無関係なものになってしまいます。

 第1次のときに、企業における業務革新や情報システムの効果性に初めて気付いたり、実施したりしたのでもなければ、ライフサイクルが一巡しても、それらが成就したとはいえませんし、まして不要になったのではありません。BPRもERPパッケージも、従来の課題解決の流れの中の1ページにすぎないなのです。

 だからといって、その1ページを過小評価してはなりません。従来の流れを加速したことはもちろんですし、その認識度を高めた効果もあります。さらに、ERPパッケージでは、従来の利用部門のニーズ重視から経営ニーズ重視へと変化させたことや、情報システムにおけるIT部門と利用部門の任務に変化を与えたこと、ベンダから見れば、手作業によるシステム構築サービスから、パッケージ販売やコンサルティングサービスへと重点がシフトしたことなど、方向性に変化を与えた事項もあります。

 このように、新概念や新技術に関して、一連の流れの中でどの方向がさらに加速されるのか、方向や方法論でどのような変化が生じるのかを認識することが重要なのです。

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