理想のCIO像とは? CIO学会会長小尾教授に聞くIT戦略トピックス(Opinion: Interview)(3/3 ページ)

» 2007年05月17日 12時00分 公開
[大津 心,@IT]
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理想のCIOとは? 団塊の世代をどんどんCIOに育てるべき

 日本では行政のCIOと民間のCIOの役割がまったく異なっているのが特徴だ。しかし、米国の場合、行政のCIOと民間のCIOの交流が非常に盛んだ。「前日まで役所でCIOを務めていた人間が、翌日から民間企業のCIOを務めていることが日常的に起きている」(小尾教授)。これはつまり、CIOが職位、職業として認知されているからだという。つまり、米国におけるCIOは層が厚く、待遇が良くて、社会的地位も確立されているといえるのだ。

 一方、日本のCIOはキャリアパスにすぎない。この点が大きいと教授は指摘する。教授はこの解決策として、「まずは行政のCIOとの交流を目指さなければならない」とした。

 欧米のCIOは専任だ。つまり、CIOの業務だけをやっていればよい。一方、日本のほとんどのCIOは、ほかにも業務を持った兼任CIOだろう。例えば、官房長官が良い例だという。CIOの仕事よりも、人事や総務的な仕事の方が圧倒的に多い。この専任と兼任の比率が、欧米と日本では完全に逆転している。この点について、教授は「私の理想としては、早い段階で日本におけるCIOの社会的地位が欧米並みになることだ」と述べた。

 そのほか、CIOは本来企業だけでなくて、大学や病院、すべての組織に必要だ。日本版SOX法で対象になるといわれている上場企業とその関連企業の数だけでも約4万社ある。さらに病院や大学を含めると、CIOは数十万人単位で必要のはずだ。しかし、現状ではとてもそんな人数もいないし、育成する機関もない。つまり、圧倒的な人的不足状態なのだ。

 さらに、本来であれば中小企業にもCIOは必要だ。しかし、中小企業は人材もお金もない場合が多い。そういったケースでは、「CIOのアウトソーシング」が現れてくるのではないかと教授は予測する。

 そういったCIOの人材不足を補う施策として、小尾教授は「これから退職していく団塊世代を有効活用するべきだ」と主張する。団塊世代の中で情報システム部で活躍していた人物をCIOへと再教育し、CIOがいない企業へ供給すれば、団塊世代の再就職斡旋にもなるし、一石二鳥だ。団塊の世代でシステムに携わっていた人たちをネットワーク化して管理すれば、さらに効率が良くなる。

 さらに、こういったCIO人材不足の状況を改善するには、人材育成が重要だという。しかも、再トレーニング、再人材育成が重要だ。高度成長以前の日本では、企業が米国に留学に行かせるケースが多かったがいまでは少ない。しかし、いま必要とされているのは米国留学ではなく、国内留学で十分なものだ。企業側が産学連携をきちんと視野に入れ、社会人の大学院再入学のためのシステムをきちんと整備すべきなのだ。

 それによって、人材が育成されれば、企業にとってもメリットのはずだ。それを含めたトータルの社会改革が必要なのではないだろうか。

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