“利益の創出”を導く「IT経営実践フレームワーク」公開! IT経営実践ノウハウ(3)(1/2 ページ)

これまでのIT/IT経営は業務の効率化・自動化を推進するものとして進展してきた。しかし、真のIT経営とは、ITのチカラで“利益の創出”を実現し、経営全体を変えていくべきものであるはずだ

» 2008年04月16日 12時00分 公開
[齋藤 雅宏,@IT]

いまのIT経営は、部分的なことしか語られていない

 最近、新聞や雑誌で「IT経営」に関する記事を頻繁に見掛けるようになりました。「混沌とする経営環境を劇的に変革できるのでは?」という期待があるのか、注目度も高いようですが、わたしはその内容を見るたびに強い違和感を覚えます。

 というのも、これらはIT企業が広告主である場合が多く、必然的にその内容は「サーバ管理」「ネットワーク管理」「データセンター管理」「セキュリティ管理」「内部統制」「連結経営」……etc、というように、彼らのメイン顧客である経営者やバックオフィス部門の購買意欲を喚起することを目的にした話題が中心となっています。

 しかし、経営は「事業開発(営業)」と「オペレーション(営業事務)」が表裏一体となって利益を創出し、それらをバックオフィスが支えることで成り立っています。従って現在、「IT経営」として語られている内容は、経営全体から見るとごく部分的といわざるを得ません。

 これでは経営に関する本質的な課題は浮かび上がってこないでしょうし、この手の内容では、営業部門が興味を示さないのも至極当然のことだと思います。

 これが「IT経営」の現状であり、事業開発やオペレーションまで網羅したIT経営実践手法に関する情報は皆無だといえるでしょう。そうした中、わたしが実践してきたIT経営手法を分かりやすく体系化し、「IT経営実践ノウハウ」として広める活動を始めたのも自然の流れだったと思います。

IT経営実践ノウハウから、フレームワークへ

 この「IT経営実践ノウハウ」は、現場での経験を通じて体得した次の3つ教訓がベースとなっています。

1. 常に相手よりも半歩前に出ることを心掛けよ

 「半歩前に出ることで生まれる心の余裕が次の一歩を考える余裕を生み出し、それを繰り返すことで大きなアドバンテージが生まれる」という教訓。ここから、「財務分析よりも、取引データのシミュレーションの方が有効」であることを知りました。

2. 分解することで見えなかったものが見えてくる

 「物事を大きな塊で理解しようとするから本質が見えなくなる。脳はシンプルに考えるようにできているので、把握可能な単位に分解して考えよ」という教訓。ここから、「現場で管理できる情報と経営者が知りたい情報の単位の相違が、経営者が見たい数字が現場から上がってこない原因」であることを知りました。

3. 緊急対応は、100%排除せよ

 「顧客のため、という損得勘定抜きの“緊急対応”は百害あって一利なし。何事もルーチンワークの中での対応がベスト」という教訓。ここから、「業務フローをチェックポイントごとに分解し、イレギュラー対応が発生していないかチェックする仕組みを構築することが重要」であることを知りました。

ALT IT経営実践の枠組みとは?

 これらの教訓から「IT経営実践ノウハウ」が生まれ、それをさらに体系化したのが「IT経営実践フレームワーク」です。これは前職で、IT経営を実践する営業組織を立ち上げるべくプランニングを行う中で、経営指標可視化の課題──つまり、経営者の見たい情報が現場から上がってこないという問題は、「IT経営実践ノウハウを活用すれば解決できるんじゃないか?」というアイデアが生まれ、それがIT経営の実践担当者向けにガイドラインとなるフレームワークが作れないかという企画に発展したものです。

 そのときの上司の要求は、現場とは視点が異なる経営者のために、営業現場やオペレーション現場で日々発生する最新データを使って、自動的に経営管理情報(損益計算書、経費リスト、資金繰り表、資本政策リストなど)を提供する仕組みや、シミュレーションによる定量面の経営判断材料を提供する仕組みが提供できないか? さらには、失敗の多いIT経営を成功に導くフレームワークも考えてほしい、というものでした。

 正直これはかなり苦戦しました。いずれも世の中に存在しないものでしたし、参考情報もほとんどありませんでしたので、自分の考えをどうやって具現化するかで苦心しました。

 そして、現場でのヒアリングや社内専門家との議論を何度も繰り返し、なんとか現場で利用できるツールとフレームワークの完成にこぎ着けました。

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