「収益に貢献する」コールセンター運用の鉄則コールセンターマネジメントとIT(1)(2/3 ページ)

» 2008年08月19日 12時00分 公開
[澤田哲理,@IT]

コールセンター・マネジメントとはいったい何か?

 では、コールセンターのマネジメントとはいったい何か? まずマネジメントする項目を整理すると、ほかの業務部門と同じく、「ヒト」「プロセス」「ツール(IT)」の3つである。

 ただ多くの場合、ツールそのものが単独で問題となることはない。ITを含むファシリティをどこまで含むかにもよるが、コールセンターの総経費の70?80%が人件費といわれている。従って、コールセンターの規模が拡大し、業務が複雑化するほど、マネジメントの課題はヒトとプロセスの最適化に集約され、ツールは「ヒト、プロセスをいかに効率的にサポートできるよう設定・運用するか」が課題となる。すなわち、これら3つをそれぞれ適切なバランスで考慮することがマネジメントの前提条件となる。

 では、マネジメントによって目指すべき、コールセンターの運営目標とは何か? それは顧客満足度の向上、優れたサービス品質の提供と、効率性の追求、コストの削減である。 コールセンターの関係者はみんなそう口をそろえる。

 換言すれば、「少しでも安いコストで、より多くの顧客対応件数をこなしながら、1人1人の顧客に満足いただける、ホスピタリティの高いサービスを継続的に提供する」ということである。コストと品質は一見して相反するテーマのように思えるが、そんなことが本当に実現できるのだろうか?

大切なのは、“いま”を知ること

 さて、ここで紹介したいのが、コールセンターオペレーションのパフォーマンス・マネジメントシステム、「COPC-2000」規格である。顧客満足度が実際に向上することを最重要視した「マネジメント手法」「主要な指標・測定方法」「教育・研修プログラム」をまとめたものであり、1996年に北米で開発された。日本ではプロシードがこれに基づいたアセスメントとコンサルティング、トレーニングを行っている。

 今回、説明したいのは規格そのものではなく、COPC-2000が生まれた経緯だ。開発の前年、1995年といえば、Windows 95が発売され、Machintoshユーザー以外も広くPCを使い始めた年である。これを受けてPCのヘルプデスク需要が増え、サポート業務を中心としたヘルプデスクコールセンターのアウトソーシングべンダが勃興した年でもあった。

 しかし、マイクロソフト、コンパック(現ヒューレット・パッカード)、デルといったPC関連企業にとって、アウトソーシングベンダのオペレーション品質は決して満足できるものではなかった。「約束したことを守ってくれない」「応対品質が悪い」「当初の計画よりコストがかかる」といった不満が広がり、やがてコールセンターにおける業界共通のオペレーション・ガイドラインを求める声が高まっていく。これがCOPC-2000創設の発端となった。

 よって規格の提唱者も、マイクロソフトらアウトソーシングベンダのサービス品質に悩む企業のほか、セールス、顧客サービス、物流/配送業務などの分野で、自社のコールセンターがすでに高い評価を得ている企業が中心となった。すなわち、COPC-2000とはコールセンターの発注者側の必要から誕生した歴史を持ち、単なるマニュアルのようなものではなく、コールセンターの品質と顧客満足度が、実際に向上することを最終目的とする点が特徴となっている。

 さて、ここで思い出してほしいのは、現在の日本におけるコールセンターを取り巻く状況である。いまやコールセンターはBtoC、BtoBにかかわらず、企業活動の中核を担うほど重要な存在となった。ところが統括的な所轄官庁がなく、正確な統計データもなければ、マネジメント・ノウハウが浸透しているともいえない。一方で、コスト・効率性の追求と品質の向上というプレッシャーは常にある。これはある意味、1995年、COPC-2000創設にかかわったPC関連企業らが陥っていた状況と似ているとはいえないだろうか。

 しかし、COPC-2000に基づいてコールセンター・マネジメントに取り組んだ企業は、その後、着実に結果を出していった。日本においても、COPC-2000を使ったコンサルティングを通じて、筆者がかかわった多くのセンターが改善されていくのを、実際にこの目で見てきた。この「改善」とはもちろん、効率と品質の両立である。

 では、効率と品質の両立につながるマネジメントのツボとは何なのか?──それは現状と目標を正しく知ることである。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ