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» 2008年09月01日 12時00分 UPDATE

グリーンITコラム(5):グリーンITと内部統制対応の類似性

エコブームの盛り上がりからか、それに反発するアンチエコも盛んになってきている。今回はこの問題を考える。

[栗原 潔,@IT]

 最近は、テレビCMにおいても「温室効果ガス削減」や「CO2削減」といった、かつては一般消費者の耳になじみがなかった言葉が聞こえてくるようになっている。

 良きにつけ悪しきにつけ、「地球温暖化対応のためのCO2削減を中心としたエコ活動」がブームになっているといえよう。

エコブームへの反発

 それと並行して、このようなエコブームに反する動き、いわば、「アンチエコ」も顕著になっている。

 例えば、エコブームに対して警鐘を鳴らすタイプの書籍がベストセラーに顔を出している。エコについての本よりも、アンチエコについての本が売れているといってもよいくらいだ。

 環境問題は否定しがたい課題であるがゆえに、どうしても教条主義的なお説教になってしまいがちだ。それゆえ、反感を抱いてしまう人もいるだろう。逆に、エコ関係の主張を妄信的に受け入れてしまい、結果的に環境に貢献できていないケースも多い。これらの要因がエコに異議を唱えることのブーム、いわば、アンチ“エコブーム”ブームの根底にあると考えられる。

 アンチエコ論の中には、特に専門家でもない人が、単に横紙破りな主張を行っているだけというケースも見られる。

 典型的なケースとしては、気象学者ではない人が地球温暖化論に疑義を唱えている例が挙げられる。もちろん、学問的な正しさが多数決で決まるわけではないし、数百年レンジの地球的規模の気象を正確に予測することは困難であることから、専門家の意見を常に100%信頼すべきとはいえない。しかし、リスク管理という視点からは、「温室効果ガスが地球温暖化の要因となっている可能性が高い」という国際的なコンセンサスを尊重すべきであろう。

 もちろん、排出権取引などの経済的手法が、真に温室効果ガスの削減に結び付くのか、また、わが国の国益に結び付くのかという点については、議論の余地は十分にあると思われる。

 一方、アンチエコ論の中にも、正当な主張も見られる。

 例えば、リサイクルをやみくもに推進する行為に警鐘を鳴らす動きがある。リサイクルを行う場合にも電力や化石燃料は消費されるので、何が何でもリサイクルという考え方が適切ではないのは当然だ。あくまでも3R(リデュース、リユース、リサイクル)を目指すことが重要だ。つまり、まずは廃棄物の量を減らし、再活用できる資源は再活用し、最後の手段としてリサイクルするということだ。

 同様に、例えば、まだ十分耐用期間が残っている自動車を、より燃費が良いモデルに乗り換えることも、必ずしも環境に優しいとは限らない。自動車の製造や廃棄にも多量の電力や化石燃料は消費されるからだ(もちろん、耐用年数を超えた自動車を買い換えるときに、次の車として燃費が良いモデルを選ぶのは望ましいことだ)。

 なお、このように製品の製造からリサイクル・廃棄に至る全般にわたる環境負荷について分析する考え方を、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)と呼ぶ。

 LCAの考え方を無視した表面的なエコ活動は、かえって環境負荷を増す可能性がある。このような誤解に警鐘を鳴らすのはよいことだろう。LCAについては、今後の本連載記事でも触れていこうと思う。

アンチエコとグリーンITの関係

 では、アンチエコの流れとグリーンITの関係について考えてみよう。

 懸念されるのは、このアンチ“エコブーム”ブームが、企業内でグリーンITを推進する際の阻害要因になってしまうのではないかという点だ。

 「グリーンIT→エコ→ウソが多い」という短絡的思考で、グリーンITの取り組み自体が懐疑的に見られることがあってはならない。

 グリーンITの本質を正しく理解している人であれば、このような問題は関係ないはずだ。いままでにも述べてきたように、グリーンITの目的は環境対応という面だけではなく、コスト削減面にも求めるべきであるからだ。

 仮に、地球温暖化対応という要素をまったく無視して考えても、グリーンITは「電力料金削減による情報システムのライフサイクルコスト削減」という点で、十分な投資効果を得られる可能性が高い。

 一般に、企業文化として環境を重視している企業では、環境問題対応という目的を中心に据えることで、グリーンITの取り組みを積極的に推進できるケースが多いと思われる。しかし、特定のミドルマネジメントがエコに心理的反発を覚えており、グリーンITの取り組みが阻害されてしまう、というケースもあるかもしれない。

 そのような場合には、いっそのことグリーンITを、「IT電力料金削減プロジェクト」あるいは「省エネプロジェクト」とでも言い換えてしまった方が、適切であるかもしれない。

 こういった言葉ではグリーンITの本質の一部しか表せないが、多くの場合、コスト削減とIT基盤効率化の要素だけでも、十分な投資効果が達成されるはずである。その後に、事後的に環境面での投資効果を考えても、まったく何も行わないよりは、はるかに望ましい結果が生まれるだろう。

 要するに、戦術的には「あえてグリーンITと環境を結び付けない」というやり方もあるということだ。

【関連用語】
▼グリーンIT(情報マネジメント用語事典)
▼グリーンコンピューティング(情報マネジメント用語事典)

Profile

栗原 潔(くりはら きよし)

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株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職。ITと知財に関するコンサルティングと弁理士業務を並行して行う。専門分野は、ITインフラストラクチャ全般、ソフトウェア特許、データ・マネジメントなど。

東京大学工学部卒、米MIT計算機科学科修士課程修了。



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