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» 2007年12月19日 12時00分 公開

グリーンITコラム(2):グリーンITの定義を再確認しよう

昨今、日本でも注目を集めているグリーンITだが、新しい言葉であるため、定義が揺れがちだ。そこで今回は、“グリーンIT”の定義について考える。

[栗原 潔,@IT]

人によって違う“グリーンIT”の意味

 前回の記事では、グリーンITを「環境問題を考慮したIT基盤を構築することである」と大まかに定義したが、世の中を見渡してみるとこれが唯一の定義ではないようだ。

 新しい言葉が世の中に登場した時には、どうしてもその定義が揺れがちだ。

 人によって定義がある程度異なることはやむを得ないと思うが、当事者間で言葉の定義が確定しないままに議論を続けることは、時間の無駄であると思う。ということで、本連載における“グリーンIT”の定義について、ここで明確にしておこう(本来であれば、連載の第1回として書いておく内容であったかと思うが、今回になってしまったことはご容赦願いたい)。

 まず、「グリーンIT」は「グリーンコンピューティング」と呼ばれることもあることを指摘しておく。特に米国においては、後者での呼び方の方が一般的であるかもしれない。Googleなどで英文の文献を検索する場合には注意が必要だろう。本連載では基本的にグリーンITで統一していこうと思う。

 そして、「グリーンIT」という言葉の範囲についてだが、「ITにおけるエコ(エコロジー活動)」という使い方が一般的だと思う。

 一方で、「ITによってもたらされるエコ」もグリーンITの範疇(はんちゅう)に加える考え方もある。「ITによってもたらされるエコ」とは、ITを活用することで環境問題、より具体的には温室効果ガスの削減に対応しようということだ。

 例えば、サプライチェーン管理により運送負荷を最適化する、事務作業におけるペーパーレス化を実現する、ITD(高度交通システム)により渋滞を解消する、などなど……。ITを活用して環境問題へ対応するケースは枚挙にいとまがない。

 経済産業省が設立を計画している「グリーンIT推進協議会」の場合、資料を見る限り、この「ITによってもたらされるエコ」にフォーカスが当たっているようだ。しかしながら、「ITによってもたらされるエコ」は極めてスコープが広いため、本連載では「ITによってもたらされるエコ」ではなく、「ITにおけるエコ」の話を中心に進めていきたい。

ユーザー企業に問われる「グリーンITに取り組む姿勢」

 そして、「ITにおけるエコ」も、さらに細かい分類を行うことができる。大まかには、IT機器の製造段階における環境配慮や、IT機器の利用段階における環境配慮、そしてIT機器の廃棄段階における環境配慮と分けることができるだろう。

 ここでいう、IT機器の製造段階における環境配慮とは、工場における電力消費を最小化したり、物流の効率化を行うなどだ。IT機器の製造を行うベンダにとっては重要な関心事だが、一般ユーザー企業においては直接的な課題ではない。ただし、ベンダの選択において環境配慮を重視するベンダを優先的に選択する、という形で間接的に貢献することはできる。

 IT機器の廃棄段階についても同様だ。いわゆるリサイクル問題への対応である。これも、製造段階における環境配慮と同様に、基本的には機器製造ベンダの責任範囲だが、ユーザー企業も間接的に貢献することができるだろう。

 ユーザー企業が最も直接的に関係するのは、IT機器の利用段階における環境配慮だ。そして、利用段階における環境配慮とは、基本的に消費電力を可能な限り削減することにほぼ等しい。直接的に温室効果ガスを排出するIT機器というのは基本的に存在しないからだ(非常電源としての発電機などは当てはまるかもしれないが)。

 発熱量を下げるという課題もあるが、これは結局、冷却の負担を減らすことで間接的に消費電力を削減するということにつながる。電力消費(および発熱量の)削減は、さらに、オフィス環境(クライアント側)とデータセンター環境(サーバ側)に分けて考えることができる。

 オフィス環境においては、機器の電源をこまめに切る、コンピュータの省電力の規格であるEnergy Star準拠の製品を採用するなど、当然の対策が必要とされよう。また、シンクライアントも管理性の向上やセキュリティの向上に加えて、電力消費削減のメリットを提供し得る点に注目すべきだ。

 シンクライアントの考え方は、基本的にはオフィス側の機器を軽装備にして、データセンター側に移すということにある。しかし、通常はデータセンターの冷却はオフィス環境より効率的に行われているため、全体として見れば環境に貢献するということができるだろう。

 最後に、データセンター環境における電力消費量削減だが、これは1つの記事で書ききれるほど単純なものではない。また、多くのユーザー企業において、最もフォーカスすべき分野でもある。個別の取り組みは行われてきたものの、全体的な取り組みにはまだ着手していない企業がほとんどであろう。

 ということから、本連載では、まずはデータセンター環境における電力消費の削減および発熱の削減という観点から、グリーンITについて語っていきたいと思う。もちろん、これが唯一のグリーンITではないという点だけは認識しておいていただきたいと思う。

【関連用語】
▼グリーンIT(情報マネジメント用語事典)
▼グリーンコンピューティング(情報マネジメント用語事典)
▼シンクライアント(情報マネジメント用語事典)

Profile

栗原 潔(くりはら きよし)

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職。ITと知財に関するコンサルティングと弁理士業務を並行して行う。専門分野は、ITインフラストラクチャ全般、ソフトウェア特許、データ・マネジメントなど。

東京大学工学部卒、米MIT計算機科学科修士課程修了。



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