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» 2008年09月19日 12時00分 UPDATE

グリーンITコラム(6):意外に知られていない仮想化とグリーンITの関係

グリーンITに取り組む多くの企業では、グリーンITとともに「ITによる総電力消費量の削減」を目指している。この問題を解決するには、仮想化技術が有効だ。

[栗原 潔,@IT]

 企業IT部門のグリーンITの取り組みにおける重要案件として、「ITによる総電力消費量の削減」がある。

 この問題を解決するためには、当然ながら電力消費が少ない機器を使うという自明な解決策がある。しかし、それ以上に重要なアプローチは、ハードウェア機器の利用効率を向上するということだ。

利用率の低いハードウェアは電力の無駄遣い

 IT基盤の電力消費削減の取り組みにおいて、忘れてはならない重要なポイントに、「サーバやストレージなどのハードウェア機器は、利用率にかかわらずほぼ一定の電力を消費する」という点がある。

 ほとんど有効な処理が行われていないにもかかわらず、電力が消費されているという状況は、まさに電力の無駄遣いにほかならない。仮に、電力消費量の少ない機器を使用していたとしても、利用率が低ければ電力の無駄遣いであることに変わりはない。

 もちろん、サーバにおいて処理するデータ量が少ないときはプロセッサの消費電力は小さくなる。これは、インテルの「SpeedStep」やAMDの「PowerNow!」などのプロセッサ電力消費削減技術が採用されている場合には、特に当てはまる。

 しかし、サーバの全消費電力に占めるプロセッサの消費電力の割合は、通常30%程度にすぎない点に注意する必要がある。

 残りの電力は、冷却ファン、ディスクドライブ、メモリ、電源ユニットなどに費やされてしまう。つまり、仮に、サーバがまったく何のデータも処理していないときにプロセッサの消費電力をゼロにできたとしても(これは理想的なケースで現実的にはあり得ないが)、サーバに供給される電力のおよそ70%が無駄になってしまうという点は変わらないのだ。

 ディスクストレージの場合は、この問題がより深刻だ。

 ディスクストレージ機器において最も電力を消費するのは、ディスクドライブのスピンドルモーターである。仮にデータがまったく格納されていない場合であっても、電源が投入されていれば、ディスクドライブのモーターは回転して電力を消費する(この問題を解決して電力効率を向上するためのテクノロジとしてMAID(Massive Arrays of Inactive Disks)がある、MAIDについては、今後の回で説明していこう)。

 結局のところ、真の意味での電力効率を向上するには、サーバやストレージにできるだけ有効な処理を行わせること、つまり、ハードウェア資源の利用効率を向上させることが必要になる。

 いかに消費電力の小さい機器を採用しても、その利用率が低いのでは意味がないのだ。

ハードウェアはどうせ安いから利用率は気にしないという考え方の誤り

 ハードウェアの利用率を上げる方法は明らかだ。

 サーバ統合やストレージ統合によって、できるだけ少ない台数のハードウェアにアプリケーションやデータを集約すればよい。

 以前から、サーバ統合やストレージ統合の価値の1つとして、ハードウェアの利用効率の向上が挙げられていた。しかし、過去においては、ハードウェア利用効率向上のメリットを提唱しても、ユーザー側から「どうせ、ハードウェアは安価であるので利用率はそれほど気にしていない」との回答が返ってくることが多かった。

 この考え方は適切とはいえない。

 利用率が低いハードウェアが乱立する状況がシステムの複雑性を増し、運用管理コストを上昇させるとともにサービスレベルを低下させるからだ。

 そして、グリーンITの観点からいって利用率が低いハードウェアが問題であるということは上記に説明した通りだ。つまり、グリーンITは、サーバ統合を実行するうえでもう1つの理由付けを提供したことになる。

利用率向上のための仮想化技術

 サーバ統合やストレージ統合を効果的に行うには、仮想化テクノロジの採用が必須といってよい。

 単純に1台の物理サーバ上で稼働する1つのOSイメージ上にアプリケーションを集約するのは、アプリケーション間の干渉や基盤ソフトウェアの互換性の観点から非現実的だ。

 仮想化テクノロジを使って複数の論理サーバ上で複数のOSイメージを稼働することが必要になる。また、仮想サーバではアプリケーションの付加に応じて各サーバへの資源配分を柔軟に調整できるため、ハードウェア資源の利用効率をさらに高めることができる。

 つまり、仮想化テクノロジの採用→サーバ/ストレージ統合の推進→実質的な電力効率の向上という三段論法によって、仮想化テクノロジはグリーンITに貢献できるわけだ。

 これは机上の空論ではない。

 例えば、IBMは全社的なグリーンITの取り組みである「プロジェクト・ビッグ・グリーン」の一環として、社内データセンターの統合を図った。そこでは、世界中に分散した3900台の小型サーバ上のアプリケーションを、仮想化テクノロジを使用してLinuxが稼働する約30台のメインフレーム上へと集約した。このサーバ統合により、電力消費をおよそ80%削減したとしている。

 これ以外にも、仮想化テクノロジを活用したサーバ/ストレージ統合によって、大幅な電力消費の削減を達成できている事例は多い。

 過去の事例においても、電力消費量を調べてみれば、実は大幅な削減が達成されていたというケースも多いだろう。グリーンITが注目を集める前は、あまりIT機器の電力消費に注目が集まっていなかったがために、数字が公開されていなかった(あるいは調査すらされていなかった)ケースが多いと思われる。

 仮想化テクノロジの採用、サーバ統合、ストレージ統合が、グリーンITに結び付くことは、見落としがちなポイントであるかもしれない。

 しかし、電力消費削減効果の大きさという点、電力消費削減以外のメリットも同時に達成できる点、IT部門がイニシアティブを取りやすい点などから、グリーンITの取り組みにおける最優先案件となることが多いだろう。

 本連載の第1回で、「グリーンITを目指すことは、ITの効率化を行うことと同じベクトル上にある」と述べたが、仮想化とサーバ/ストレージ統合によるハードウェア利用率の向上は、ITの効率化とグリーンITを両立できる典型的ケースの1つといえる。

【関連用語】
▼グリーンIT(情報マネジメント用語事典)
▼グリーンコンピューティング(情報マネジメント用語事典)
▼仮想化(情報マネジメント用語事典)

Profile

栗原 潔(くりはら きよし)

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株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職。ITと知財に関するコンサルティングと弁理士業務を並行して行う。専門分野は、ITインフラストラクチャ全般、ソフトウェア特許、データ・マネジメントなど。

東京大学工学部卒、米MIT計算機科学科修士課程修了。



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