仮想化が本格普及するのは2〜3年後から仮想化インタビュー(1)(2/2 ページ)

» 2008年11月25日 12時00分 公開
[大津 心(@IT情報マネジメント編集部),@IT]
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テクノロジに振り回されている企業が多過ぎる

 インフラの成熟度の考え方で重要なのは、「テクノロジに振り回されないことだ」と亦賀氏は強調する。

 「SaaSクラウドコンピューティングといった新たなテクノロジが毎年のように登場し、話題となっている。確かに、それぞれ重要なものではある。有効なテクノロジでビジネスイノベーションを行うという考え方は、これからさらに重要になるだろう。しかしながら、ユーザーは、これらのテクノロジについて単に導入する/しないを検討すればよいというわけではない。有効なフレームワークや成熟度の考え方を用いなければ、テクノロジに振り回されるだけになってしまうことになる。まずはビジネスとインフラの関係を考えて、インフラ全体の成熟度を向上させるための施策を考えるべきだ」(同氏)と述べ、繰り返しこの点を強調した。

ALT ガートナーが提案するITインフラストラクチャ&オペレーションズ成熟度モデル
注)上図の各マスにはガートナーの定める指標が入るが、指標は非公開なので省略

 亦賀氏がユーザー企業に「御社にインフラ戦略がありますか?」と聞いたところ、多くの企業は「テクノロジ標準を作っています」と答えるという。しかし、このようにテクノロジのみを主体にした標準にするのではなく、人の育成やビジネスの視点を強化することが重要だと同氏は主張する。

 現状のユーザー企業の多くは「仮想化技術を導入する」「グリーンITを強化する」といった目的が先に立ってしまい、その後の効果をきちんと把握できていないケースが多いという。「例えば、『仮想化導入プロジェクト』を立ち上げた場合、プロジェクトリーダーを据えてプロジェクト単位で動くケースがほとんどだ。それらのチームはベンダと一緒にRFPを書いて、ベンダがハードウェアを導入し、テストしてプロジェクトが終わったら解散という流れだが、その後がない。つまり、仮想化技術を“入れて終わり”なのだ。これでは本当の効果も分からないし、プロジェクトも解散してしまうので、その後の状況を誰も把握していない。これでは導入効果を測れるはずがない。まずは把握から始めるべきだ」(亦賀氏)とした。

 つまり、プロジェクト立ち上げ時点からビジネスの視点に立ち、仮想化プロジェクトであれば、「サーバの初期コストが○○円、VMwareのライセンスが○○円、構築コストが○○円」「合計○○円の初期コストが掛かるが、仮想化導入によってサーバが○台集約できるので、それによって電気代削減が○%となる。これらを勘案すると○カ月で初期コストを回収できる」「将来的に運用を自動化できれば、運用コストをさらに○%削減できる」といった具体的な数字や指標を示すことが重要だという。このような指標をしっかり立てることで、部門のコンセンサスを確立し、かつ経営者を説得させることも容易になる。

 そして、亦賀氏は「CIOがもっと積極的にリードしなければならない」とも主張する。ITインフラを成熟させるためには、テクノロジに振り回されない標準作りやITインフラ戦略をしっかりと立てることが重要となる。「現状は業務に依存したITが多過ぎる。ITは“あくまでも業務をサポートするもの”という認識だ。しかし、ITを基盤とした“攻めのIT基盤”こそがいま重要となっている。業務ではなく、ビジネスのためのITが今後求められていくはずだ」と主張した。

まとめ

 亦賀氏の話をまとめると、現在多くの日本企業は「テクノロジに振り回されている」という。つまり、仮想化などのテクノロジの理解といったレベルに議論が偏ってしまっており、「仮想化を導入することによる効果」や「仮想化を導入するとどのようなメリットがあるか?」のようなビジネスの視点が欠けているケースが多い。

 一方で、逆に過度にビジネスメリットだけを中心課題にし、それが見えないということで、テクノロジの可能性が否定されるケースも多い。

 このようなビジネスとテクノロジをバランスさせた議論を行う、またこうした視点を養うためには、まずCIOが率先してITインフラ戦略を策定することや、システム部員の人材育成も必要だと亦賀氏は提案する。

 具体的には、同氏が仮想化技術の普及期と予測する2?3年後までに、まずは部門内・社内が共通認識できる全社ITインフラ戦略を立案することが運用コスト削減や仮想化導入メリットを検討する第一歩となる。ここでいう全社ITインフラ戦略とは単純な計画ではなく、他社との競争優位、ビジネス効果の最大化などを狙ったものである方がより効果的である。このためには、視点や議論を内向きから外向きに合わせて変えていくことが有効である。

 ただし、この部署間の横串展開を行うためには部署間の壁を取り除く必要があり、かなり調整が難航することが予想される。そこをクリアするためにもCIOが経営陣を説得し、トップダウンによる戦略の立案と推進が欠かせない。

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