このように、進行基準を適用するうえでは、デメリットとメリットが存在する。さらに、進行基準を適用するための条件があり、それをクリアしなければ進行基準を適用できないのだ。
その条件とは「工事契約に関し、工事収益総額、工事原価総額、工事進ちょく度を信頼性をもって見積もることができる場合は、工事進行基準で収益を計上しなければならない」ということだ。具体的には以下の4つの条件がある。
条件1:ソフトウェア開発に着手する前に、売上総額が明確になっている
条件2:ソフトウェア開発に着手する前に、どれだけのコストが掛かるか“信頼性をもって”見積もることができる
条件3:ソフトウェア開発中、発生したコストを“信頼性をもって”把握することができる
条件4:ソフトウェア開発中、進ちょく度を“信頼性をもって”見積もることができる
ここで重要となるのが、前述した見積もりの精度だ。ソフトウェア/システム開発において、“信頼性をもって”見積もりや進ちょくを管理することはかなり難しい。
さらに見積もりを難しくしているのが、条件3と条件4の部分だ。これらの条件によって、コストと進ちょくを正確に見積もらなくてはならないからだ。しかし、ソフトウェア/システム開発では、手戻りや仕様変更が頻繁に起こる。
進行基準に対応するためには、このような変更が起こるたびにコストと進ちょく率の再見積もりが必要となるため、従来型のプロジェクトと比べると、仕事のやり方について、大幅な変更が必要となる。
このように、工事進行基準に対応するためには、従来型と比較してかなりやり方が異なる部分が出てくる。そして、見積もりの精度を上げることが必要だ。では、実際どうやって見積もり精度を上げればよいのだろうか。
安達氏はそのポイントとして、「WBS(Work Breakdown Structure)」の活用を挙げた。
WBSとはプロジェクトマネジメントツールの一種で、プロジェクトを階層構造化した図表にする手法のこと。中でも、同氏は「プロジェクト」「フェイズ」「タスク」「手順」の4階層構造に分類したWBSの作成を推奨する。安達氏はWBSの現状を「WBSの有効性は多くの人が認めるところだが、実際には書き方が分からなかったり、進ちょく管理への生かし方が分からずに有効活用できていないケースが多い」と分析した。
具体的に同氏が推奨するのは、「タスク」と「成果物」の2種類のWBSを作成する方法。タスクは前述の通り、「プロジェクト」「フェイズ」「タスク」「手順」の4階層構造で作成する。この際の注意点は、「闇雲に細かく作る企業もあるが、5階層以上になると300項目以上になってしまい管理し切れず、3階層では作業もれが発生してしまう。従って、4階層がベストだろう」(同氏)とした。
「工事進行基準に対応したプロジェクトマネジメントはどうのようにすればよいのか?」を具体的に解説する@IT情報マネジメント リスク・コストと戦うプロジェクト管理セミナーを開催。
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一方の成果物WBSは、「納品物一覧」「納品一覧」「目次/構成」の3階層で構成する。そして、それぞれのWBSの「フェイズ」と「目次/構成」、「タスク」と「納品一覧」、「手順」と「納品物一覧」が相互に連携しているため、それらを相互チェックすることで、作業のもれも防ぐことができるという。
なお、@IT情報マネジメントでは、2009年6月30日にベルサール神保町において、「@IT情報マネジメント カンファレンス リスク・コストと戦うプロジェクト管理セミナー」を開催する。同セミナーでは、安達氏をお呼びして、今回紹介した工事進行基準を対応させるためのプロジェクトのポイントを、さらに具体的な形で紹介する予定だ。WBSについても実際の作り方を交えて説明する。
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