前回、プロジェクトファシリテーターになることで目的を達成して最大の効果を生み出す重要性を説く、いわゆる戦術的なアプローチを紹介した。今回は、戦略的なアプローチの仕方を具体的に紹介する。
「うちの情シスは十分にパフォーマンスを発揮していないように感じています」
「いったい何が足りなくて、何から手を付ければよいのですかね?」
「ウルさん、うちの部員と一緒に作業しているわけだし、何か助言してくださいよ」
これらは、私たちコンサルタントが情報システム部門を支援した際に、部門責任者からよくいわれるせりふです。
言い回しに違いはありますが、これらの発言が意味するところは、「情報システム部門の組織としての戦略がない」ということです。今回は、情報システム部門が持つべき戦略について説明していきます。
今回は前回の記事に引き続き、ゴールのギャップを埋める、すなわち、ITを経営が求める目的に合致させるために情報システム部門が何をするべきか、ということを説明します。
前回は、システム開発においてプロジェクトファシリテーターとなることで個々のシステムの目的を達成し、最大の効果を生み出す方法を紹介しました。
この方法は、情報システム部門の仕事の進め方を変えることで、具体的な1つ1つシステム開発のゴールを確実に達成するという、いわば「戦術」的なアプローチです。この戦術的なアプローチを実行に移そうと思うと、情報システム部門が経営の要請に応えられる強い組織であることが前提になってきます。
今回は少し視点を変えて、情報システム部門を経営の要請に応えてゴールのギャップを埋めることのできる強い組織にするための、「戦略」的なアプローチについて紹介します。
以下では、まず戦略的アプローチの重要性を示し、その後で具体的な戦略立案のステップを紹介します。
まず、「戦略」とはどういういうことで、それを持つことにどんな重要性があるのについて説明します。まず、「戦略的」な考え方とは、いったいどういったことを指すのでしょうか。辞書を調べてみると、次のように説明されています。
◆せん‐りゃく【戦略】とは?
※具体的・実際的な「戦術」に対して、より大局的・長期的なものをいう。(大辞泉より)
これは一般的な戦略の定義なので、ここからブレイクダウンして情シスの持つべき戦略を定義すると次のようになります。
◆【情報システム部門の戦略】とは?
経営の要請に応えられるために、組織全体としての長期的なあるべき姿と、その実現のための行動計画
このような戦略を定めて、組織のメンバー全員で共有することが、情報システム部門を強くするために非常に重要です。戦略を共有することで、組織全体をぶれることなくあるべき姿に向けて改善していくことが可能になります。
また、経営に対してどういう組織になりたいのかをコミットすることで、社内的な地位を確立することにもつながります。以下では、戦略を検討するため何をすればよいのかをステップに沿って紹介していきます。
情報システム部門のための戦略の立案は、次のステップで行います。このステップを踏むことで、確実に経営の要請に応えられる強い組織にしていくための計画が得られます。
続いて、上記で紹介した戦略立案のステップを「具体的にどう進めればよいのか?」を、実際の事例を使って説明します。
それぞれのステップでは、検討の結果を見える化をするための図を作成し、それを組織メンバーで共有します。
以下の各チャートの説明の内容は、実際によるあるケースを想定したものになっています。それぞれの企業では共通の部分も多いと思いますが、異なる部分があるはずです。例で示したものを最初のひな型にして、組織に合わせて加筆することで戦略を検討していくことができます。
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