できる情シスはモーガン・フリーマンを目指せ!情シスをもっと強くしよう(3)(2/3 ページ)

» 2009年08月24日 12時00分 公開
[植田 淳,@IT]

Step1:現状の自分を知り、問題意識を共有する

 まず、問題意識の共有のために「現状分析クアドラント」を用意しましょう。このチャートは、まず現状の自分(情報システム部門)が「どうあるべきか(なるべきか)」(=ゴールイメージ)と「現状はどうなのか」(=ポジション)を知り、それを共有するための方法です。

 「現状分析クアドラント」は、これらの議論をシンプルかつスピーディに行うために、次のようなクアドラント(4分割表)を作成し、どの位置に自分たちが位置しているのかを議論することで、情報システム部門の現状を簡単に分析するためのものです。

 このクアドラントでは、縦軸に「コスト」、横軸に「クオリティ」においた評価を行っています。なお、この2軸は非常に汎用性の高いものですが、必要に応じて変えても構いません。自分たちを評価するうえで、最も重要と思われる客観的な観点を用います。

 「コスト」は、情報システムの構築・運用に人件費を含めたコストを、一般企業やライバル企業と相対的に比較したものです。一般には、企業の年間売上の1%前後、情報システムがサービスの基盤である企業の場合でも3?5%が標準的な年間ITコストといわれています。これらの標準的な指標やライバル企業の財務諸表から読み取ったITコストと、自社のITコストを比較することで判定します。

 「クオリティ」は、「情報システムが経営目標の達成に貢献できているのか?」「ライバル企業のITサービスと比べて遜色ないサービスを提供できているか?」「ユーザー部門のニーズに応えられているか?」といった総合的な情報システムのサービス品質を指します。ライバル企業とのサービスレベルの比較表を作成したり、情報システムに対する社内の満足度をヒヤリングしたりすることで判定します。

 上図のクアドラントに現れる4分類は、それぞれ情報システム部門の現状と将来的なリスクを表しています。分類ごとの特性を表現した比喩を用いると、直感的に理解しやすくなり、議論が行いやすくする効果があります。ここでは、次のようにネーミングして、各分類に置かれた状況を整理します。

名脇役 適正なコストで高いレベルのサービス品質を確保しています。経営者や現場部門が企業における主役であるならば、情報システム部門は、まさに名脇役的な存在として、主役の演技を引き立てることができている組織です
孤立無援 コストはかかっていませんが、サービス品質が低く、情報システムが企業活動に貢献できておらず、現場部門の足かせとなっています。このケースは、業務運用が属人的なところが多く、担当者のスキルやモチベーションによって、サービス品質が著しく下がるリスクをはらんでいます
金食い虫 高いサービス品質を確保できているものの、コストがかかりすぎています。折角の売り上げをITコストが食いつぶしており、利益を圧迫しています。このまま放置すれば、企業の競争力の足かせとなる可能性があります
抵抗勢力 情報システムに高いコストをかけながら、経営者の期待や現場部門のニーズに応えられていない最悪のケースです。もはや、経営者や現場部門を妨害する抵抗勢力でしかありません

 この4分類で目指すべきは、無論「名脇役」です。しかし、多くの情報システム部門は、クオリティとコストのバランスがとれていない「孤立無援」か「金食い虫」になるケースが多いようです。

Step 2:情シスのミッションを定義する

 情報システム部門の現状分析クアドラントを使って、問題意識を関係者で共有した後は、情報システム部門が中長期的に果たさなければならない責務を示した「ミッション定義」を作成します。

 ミッション定義は組織のあるべき姿を考えたときに、最も重視する項目を記述します。あまり数を増やさず3、4項目程度にまとめます。

 このときに、自分たちだけで考えるのではなく、情報システムのステークホルダ、例えば、経営者や現場部門の利用者を交えたブレーンストーミングやディスカッションを行って、どのような役割を期待されているかを確認することは大切です。以下は3項目からなるミッション定義を示しています。これらの項目は、多くの企業で情報システム部門に求められるようになっているものです。

IT戦略の立案 経営目標を実現するために、ITを戦略ツールとし、競争優位を実現するための方策を立案する
ITガバナンスの確立 企業におけるIT政策を立案し、IT政策に基づいて自社のITを統治(管理)する
情報システムの構築・運用 利用部門のニーズを満たすために、ITを使った仕組みを開発(要件定義?導入)し、安定した運用を行う

Step 3:中長期的な課題を洗い出し

 ミッション定義で明確化した情報システム部門の責務を果たすうえで、阻害要因となっている課題を洗い出した「中長期課題リスト」を作成します。ここで挙げる課題は、中長期的な戦略を考える際の課題となるため、一過性のものではなく、慢性的または継続的に生じている課題について考えます。

 ここでも、ミッション定義と同様にステークホルダを交えたディスカッションを通じて、課題の洗い出しを行っておくことで、中長期施策を決定する際に合意形成が取りやすくなります。以下は、3項目からなる中長期課題リストを示しています。これらの項目は、実際に多くの情報システム部門に共通して見られる課題です。

ITに対する役割・期待の拡大 ITに対する経営者の期待や、企業におけるITの役割は年々拡大しており、タイムリーに応えることが難しくなってきている
I技術の高度化、構築・運用の複雑化 新しい方法論や機材の登場による技術の高度化、オープンソース推進に伴うマルチベンダ対応により構築・運用の複雑化している
慢性的な人材不足、人員不足 現行システムの運用と新システムの開発を兼務、戦略・企画方面のスキルや人的リソースそのものの不足している

 なお、中長期課題リストに洗い出される項目は、ミッション定義を基に検討を行うため、項目の多くが合致する場合があります。ただし、内的要因だけでなく、情報システム部門の置かれている状況や環境などの外的要因にも目を向けて洗い出しを行うと、必ずしも「ミッション定義」の項目とは一致しません。

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