“自動化”は仮想化運用管理の救世主特集:仮想化構築・運用のポイントを探る(5)(2/2 ページ)

» 2010年09月15日 12時00分 公開
[吉村哲樹,@IT]
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仮想化環境における「運用管理自動化」のメリット

 仮想化環境における運用管理を効率化するもう1つの有効な手だてとして、「自動化」が挙げられる。

 サーバ仮想化の導入によって複雑化、煩雑化する運用管理業務の多くの部分を運用管理ツールで自動化することによって、運用管理に要する工数を削減するとともに、人手による作業ではどうしても避けられないヒューマンエラーを防止することができる。また、システム構成に対して施した変更履歴も、ツールで自動化されていれば漏れなく証跡を残すことができる。

 多くの運用管理ツールが既にさまざまな自動化機能を実装しているが、Senju Familyも「ランブックオートメーション」という独自の自動化機能を備えている。

 「通常、システムの障害やアラートなどのイベントが発生した際には、人がシステムの状態を見て判断して、あらかじめ決められた手順書に従って対応作業を行う。ランブックオートメーションは、この一連のオペレーションを自動化するためのもの」(寺井氏)

 具体的には、あるイベントが発生した際に行うべきオペレーションの手順をあらかじめツールに登録しておけば、イベント発生時にそのオペレーションがツールによって自動実行されるというものだ。

 イベントの発生条件は、例えば「CPU使用率が80%?90%の場合」「CPU使用率が90%以上になった場合」「夜間の場合」「日中の場合」といった具合に細かく指定できるようになっている。また、イベントに対応して自動実行するオペレーションも、電話をかけたり、コマンドを発行してログを採取したり、またそれをメールに添付して送付することも可能だ。

 このランブックオートメーションは、従来は人の判断が必ず介在していた「イベントに対応する作業」を自動化した点に特徴がある。

 「ルーチン作業のジョブを自動実行できるのは、運用管理ツールであれば当たり前。しかしランブックオートメーションのように、障害やアラートなどの突発的なイベントに対応する作業を自動化できる機能は、他社製品にはあまりないはずだ」(寺井氏)

 ランブックオートメーションは、仮想化環境の運用管理においてもメリットが大きいという。この機能を使えば、例えば物理サーバのリソースがひっ迫している旨のアラートが上がってきた際に、自動的に仮想サーバをライブマイグレーションで別の物理サーバに移動させるようなことが可能になる。

 「今までは『自動化すると運用管理が効率化できる』と言われてきたが、今後は仮想化が普及するにつれて『自動化しないと運用管理は回らない』というようになっていくと思う。ユーザー側も、『サーバを1台立ててほしい』という要求ではなく、『このサービスを使えるようにしてくれ』というサービス視点でのIT活用が主流になってくる。そうなると、すべてのITリソースを管理・制御したうえで、それらを適切なサービスとしてユーザーに柔軟に提供していかなくてはいけない。これをすべて人手でやるのは極めて困難で、やはり自動化の必要性が出てくる」(寺井氏)

仮想化の導入時から運用管理に配慮を

 このほかにも同製品では、仮想化環境の運用管理に役立つものとして「コンフィグレーション」という機能を備えている。

 この機能は簡単に言うと、各ノードの構成情報を自動収集し、一元管理する機能である。しかし、ただそれだけの機能ではなく、ある一定期間におけるノードの構成の変更履歴をビジュアル表示できるという特徴を持っている。この機能は、障害原因を切り分けるために、ノードに対して加えられた変更を過去にさかのぼって確認しなくてはいけないような場合に、非常に役立つという。

 「変更履歴の表示は仮想サーバ単位で行うことができるので、仮想サーバで問題が発生した際の問題切り分け作業を効率化できる。ログの内容を直接目で追ったり、構成管理ツールを使ったりするよりもはるかに楽になる」(寺井氏)

 またNRIでは、Senju Familyの製品そのものだけでなく、それを活用した仮想化ソリューションを展開していくための体制作りにも力を入れているという。具体的には、VMware社と密接なパートナーシップを結ぶとともに、仮想化ソリューションの提案・構築活動で多くの実績を持つ株式会社ネットワールド(以下、ネットワールド)と協業し、顧客企業に提案活動を行っている。

 その際に顧客に対して提言しているのが、「仮想化環境の設計段階から、運用のことも考えておく」ことなのだという。

 「これまで仮想化の導入は『導入して終わり』というケースが多かった。そういう場合、大抵は導入して1年も経つと運用管理の複雑さに直面して『さあ、これをどうすればいいものか……』となってしまう。しかし、導入時から運用管理のことを想定しておけば、その後も大抵はうまくいく。1度仮想化を導入してしまった後から、運用管理のやり方を大幅に変更するのは大変なので、やはり仮想化の導入時に、後々の運用管理のことも併せてしっかり考慮しておくことが重要だ」(寺井氏)

著者紹介

▼著者名 吉村 哲樹(よしむら てつき)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。

その後、外資系ソフトウェアベンダでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。


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