“自動化”は仮想化運用管理の救世主特集:仮想化構築・運用のポイントを探る(5)(1/2 ページ)

システム運用管理ツールの1つとして、システム運用管理の現場での使い勝手という点で一定の評価を受けてきたのが、野村総合研究所の「Senju Family」だ。今回はSenju Familyの仮想化対応状況を聞いた。

» 2010年09月15日 12時00分 公開
[吉村哲樹,@IT]

 大手企業向けのシステム運用管理ツールの1つとして、長い間国内市場で実績を持っているのが、野村総合研究所(以下、NRI)の「Senju Family」だ。主に金融業界を中心に、累計で約1万2000サイト、約17万5000サーバへの導入実績があるという。

 Senju Familyはかねてから、システム運用管理の現場での使い勝手という点で一定の評価を受けてきた。

 そんな同製品も、近年の仮想化技術の普及に伴い、仮想化環境における運用管理業務を支援する機能を積極的に強化している。そのコンセプトは、これまでと変わらず、現場での使い勝手を最優先させているという。では一体、仮想化環境の運用管理の現場では今どのようなことが課題になっており、その解決のために運用管理ツールには何が求められているのだろうか?

仮想化の導入で手間もコストも増加

 NRI 千手事業部 営業主任の寺井忠仁氏によると、Senju Familyのユーザー企業の間でも、サーバ仮想化は近年急速に普及してきているという。

ALT NRI 千手事業部 営業主任 寺井忠仁氏

 「テスト環境に限って言えば、ほとんどのユーザー企業が仮想化を既に導入している。さらに本番環境に導入している企業も、既に3割ほどに上る」(寺井氏)

 しかし、実際に仮想化を導入した企業の多くが、当初期待していたほどの導入効果を得られていないのも事実だという。例えば、コスト削減効果だ。一般的に「サーバ仮想化を導入すれば、物理サーバを集約して台数を減らすことができるため、ITコストを削減できる」とされている。しかし、実際には当初思っていたほどのコスト削減効果を上げられていないとの声が多いというのだ。

 「物理サーバ環境から仮想サーバ環境へ移行する際、サーバ環境をそのまま移行するのではなく、移行を良い機会とばかりにサーバ環境を増やすケースが意外と多い。仮想サーバ環境は比較的手軽に構築できるため、例えば『これまで3台のサーバで無理やり動かしてきたアプリケーションを、仮想化を機に5台のサーバに分散して動かそう』といったことが、仮想サーバ環境なら簡単にできてしまうからだ」(寺井氏)

 その結果、何が起こるか。仮想サーバの乱立だ。

 せっかく物理サーバの台数を減らしても、これでは逆に管理対象のノードの数は増えてしまうことになる。ただでさえ仮想化環境の運用管理は、仮想サーバの管理が加わるため、物理環境に比べて複雑になる。それに加えて、管理対象が増えれば一層運用管理コストがかさむことになる。

 また、それぞれの仮想サーバ上で動かすアプリケーションのライセンスコストも膨らんでしまう。これらのコストが、物理サーバの台数削減によるコスト削減効果を相殺してしまうと言うのだ。

仮想化対応のポイントは「監視」と「制御」

 仮想化のこのような実情に対して、NRIはSenju Familyの仮想化対応機能を強化することで、仮想化環境の運用管理を効率化するソリューションを提供している。

 2009年6月にリリースされた「バージョン10」でVMware製品による仮想化環境に対応し、本格的な仮想化対応が行われた。さらに、2010年8月にリリースされた「バージョン11」では、マイクロソフトのHyper-Vにも対応した。

 寺井氏によれば、Senju Familyの仮想化対応のポイントは「監視」と「制御」の2つにあるという。

仮想化環境の監視業務を簡素化するための工夫

 仮想化を導入すると、物理サーバ環境では存在しなかった「ホストOS」や「ゲストOS」といった新たなノードが管理対象に加わる。

 ホストOSとゲストOSの関係は1対多で、かつライブマイグレーション機能を使えばゲストOSは動的に異なるホストOS間を移動できる。そのため、仮想化環境ではホストOSとゲストOSの間の相関関係を、正確に管理することが重要になってくる。

 特に、システム監視においては、この相関関係の管理が重要な鍵を握る。

 例えば、ある物理サーバの故障を検知した際、どのゲストOSがその影響を受け、結果としてどのアプリケーション、どのサービスに影響が及ぶかを正確かつ迅速に把握できる必要がある。昨今の運用管理ツールの多くは、こうした情報を一目で把握できるようなユーザーインターフェイスを備えているが、Senju Familyのそれは他製品とは少し異なる特徴を持つ。

 「『千手ブラウザ』というコンソール上で、すべてのノードの状態を一元管理できるようになっているが、決してかっこいいグラフィカルなインターフェイスではない。しかしこれは、あくまでも現場での使い勝手を優先させた結果。現場の日々のシステム監視業務における使いやすさを追求していった結果、このような画面の造りになった」(寺井氏)

 グラフィカルなインターフェイスというと、物理サーバや仮想サーバなどを表すアイコンがツリー状で表示されるようなものが思い浮かぶが、それに比べると千手ブラウザのインターフェイスは極めてシンプルだ。ホストOSやゲストOSのノードの名前が、それぞれの現在の状態やシステム情報とともにずらりと一覧表示されるだけだ。しかし、このようなインターフェイスの方が、現場の監視業務では使い勝手が良いのだという。

 「すべてのノードがツリー状でグラフィカルに表示されるものは、システムの構築時や定期メンテナンスの際にシステム全体を見渡すためには良いのだが、障害の対応や切り分け作業のためには逆に見づらい面がある」(寺井氏)

 ツリー表示のインターフェイス上で問題の切り分けを行うには、各ノードをドリルダウンして別のノードの状態を確認しながら障害の真因を探っていく。それに対して千手ブラウザはグラフィカルではない代わりに、各ノードの状態やシステム情報がすべてコンソール画面上に一覧表示されている。そのため、障害切り分けのためにドリルダウンしたり複数の画面の間を行ったり来たりするような操作が不要になる。

 また、各ノード間の相関関係をすぐ確認できるための工夫もこらされているという。

 「例えば、ホストOSの一覧の中から障害が発生しているものをクリックすると、ゲストOSの一覧の中からその障害の影響を受けるものが、自動的にハイライト表示されるようになっている」(寺井氏)

 さらに各ノードの詳細情報が知りたければ、一覧の中からそのノードを選んでダブルクリックすれば、詳細情報のポップアップ画面が開くようになっている。

仮想化ソフトウェアの制御も簡素化

 Senju Familyの仮想化対応のもう1つのポイントである「制御」だが、ここで言う制御とは、仮想化ソフトウェアの制御を意味する。

 VMware製の仮想化ソフトウェアの例で説明すると、仮想マシンの起動や停止、あるいはスナップショットの作成といった仮想化環境の各種制御は、通常はESX ServerやvCenterに対してコマンドを発行することで行うが、そのためにはこれらの製品に関する専門的な知識が必要となる。また、VMware以外にもHyper-Vなどの異なる仮想化ソフトウェアが混在する環境であれば、さらにそれらの製品に関する知識とスキルも必要となる。

 Senju Familyではこうした不便を解消し、仮想化ソフトウェアに対する制御を簡素化するために、単一のコマンドインターフェイスを提供している。

 ユーザーは、仮想化ソフトウェアやその管理ツールに直接アクセスする必要はなく、Senju Familyの制御コマンドを発行することにより仮想化ソフトウェアを制御できる。仮想化ソフトウェアに対するコマンド発行は、ユーザーに代わってSenju Familyが行う。

 「仮想化ソフトウェアやツールは仮想化のインフラ部分の管理を担い、Senju Familyはそれらを動かして運用管理の効率化・自動化を行う、というそれぞれの役割分担になっている」(寺井氏)

 このような仕組みは、単に制御が簡単になり管理が効率化されるというだけでなく、コマンドを管理ジョブに組み込むなどして、仮想化環境の運用管理を自動化できる効果もある。

 また、次期バージョンでは「エージェントレスジョブ」という機能が新たに搭載された。これは一言で言えば、ノードにエージェントソフトウェアをインストールすることなく簡単な管理ジョブを実行できる機能だが、特にノードが動的に生成・廃棄・移動される仮想化環境においては、エージェントレスでジョブを実行できるメリットは大きいという。

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