なぜ、超上流プロセス担当人材を育成できないのか間違いだらけのIT人材育成(5)(2/3 ページ)

» 2010年10月06日 12時00分 公開
[井上 実,@IT]

超上流プロセスの必要性

 では、いまなぜ超上流プロセスが必要とされているのだろうか? 野村総合研究所の水野満氏は、2005年12月の『ITソリューションフロンティア』の中で、次の2点を超上流プロセスが必要とされている理由に挙げている。

(1)後工程での変更・手戻りリスクの防止

 業務要件があいまいなままシステム開発を行えば、テスト段階でシステム機能の漏れや業務要求との違いが発見され、設計や開発への手戻りが発生する可能性がある。要件定義プロセスで十分に内容を詰めておけば、これらのリスクを回避することが可能になる。

(2)ダイナミックな業務改革効果の導出

 業務改革による経営効果を得るためには、経営戦略を実現するための各業務のあるべき姿を描き、現状とのギャップを明らかにしたうえで、ギャップを解消するための新しいITを活用した業務モデルを作成する必要がある。

 経営戦略に一致した業務改革方針の策定や、新しい業務モデルの構築なしには、経営に有効な業務効果をシステム開発によって導き出すことはできない。これは、超上流プロセスの企画プロセスが担うものである。

超上流の2つのパターン

 では、実際にシステム開発を行う際には、超上流プロセスへどのように入っていけば良いのだろうか? 筆者は「経営戦略起点」と「現場要求起点」の2つのパターンがあると考えている。

(1)経営戦略起点型

 経営戦略に基づいて、IT戦略、システム化全体計画を立案し、システム導入プロジェクトが遂行されるパターン(図表4参照)。全社あるいは事業単位でのプロジェクトとなるケースが多い。この場合、経営戦略をインプットとして、「企画プロセス」「要件定義プロセス」へと展開していき、経営に効果のあるIT導入が求められる。

ALT (図表4)経営戦略起点の超上流プロセス

(2)現場要求型

 現場部門の業務改善要求に基づいて、システム構築されるパターン(図表5参照)。現場部門の業務の効率化、省力化が主な狙いとなる。この場合、現場要求をインプットとして、「要件定義プロセス」からスタートすることが多い。要件が定義した後、システム化計画が作られ、承認を得た後に、システム開発が行われる。現場改善に直接結び付くIT導入が求められる。

ALT (図表5)現場要求起点の超上流プロセス

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