いま、運用自動化を検討すべき理由特集:運用自動化を生かすポイントを探る(1)(2/2 ページ)

» 2011年01月20日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]
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プロビジョニング自動化が、いま最大の関心事

 ただ、ひと口に「自動化」といっても、その種類、レベルはさまざまだ。では現在、どのような作業の自動化が求められているのだろうか。これについて入谷氏は、「既存のシステム構成要素の運用作業よりも、“新しいもの”に適用するケースが多い」と述べ、以下の図2を提示する。

ALT 図2 「今後導入したい運用管理ソフトウェアの管理機能」。IDCジャパンが企業にアンケート調査を行ったところ、「プロビジョニング自動化」が第1位となった。(「2010年次世代データセンター向け運用管理ソフトウェアにおけるソリューションビジネスの実態と展望」/有効回答114社/2010年10月)≫

 「その代表格は、やはり『仮想サーバのプロビジョニング』だ。この作業を行うためには、VMwareの専用管理ツールなど、複数のツールを使って複数の作業ステップをたどらなければならない。これをスクリプトでやろうとすると、かなり高度で複雑なものになってしまう」

 また、配備した後も、多数の仮想マシンを安定的に運用しなければならないほか、物理/仮想の混在した環境では、「どの物理サーバの上でどの仮想サーバが動いており、どんなアプリケーションが載っているのか」といったシステム構成も複雑化する。これを確実に管理・把握しながら、ユーザー部門のサーバ配備要請にスピーディに応えていくためには、「もはやツールを使うしかない」というわけだ。

 なお、今後については、図2にあるように、「キャパシティ管理、サービスレベル管理、資産管理が注目されてくるだろう」と指摘する。「これらは仮想化技術のメリットを引き出す上でキモとなる作業。人が行ってきた障害対応や、障害を未然に防ぐプロアクティブな監視、そして確実な資産管理を自動化すれば、ビジネスの状況に合わせたスピーディで柔軟・確実な運用が狙える。この辺りの自動化は今後、多くの企業にとって一つの焦点となってくるはずだ」

自動化以前に、運用プロセスの効率化、標準化が不可欠

 では現時点で、企業の自動化に対する取り組み状況はどれほど進んでいるのだろうか? この問いに対しても、「使用するCPUやメモリなど、リソース使用のポリシーを策定した上で、それに合わせてプロビジョニング作業を自動化している企業は着実に増えている。つまり、日々の運用管理作業は止められないこともあり、大々的に自動化に取り組むことは難しいが、“必要な部分、導入しやすい部分から”自動化に着手しているのが現状といったところだろう」と解説する。

 だが、「導入しやすい部分から導入する」とはいえ、真に効率化を狙おうとすれば、自動化する作業プロセス自体の見直し、効率化が求められることは言うまでもない。ツールには一連の定型的な作業を自動化する「ランブックオートメーション機能」を持つものもあるが、そもそも効率の悪い作業プロセスを自動化しても、真の解決には至らないためだ。

 この点を受けて、入谷氏は「よりシンプルな運用ポリシー、プロセスを目指すべき」と指摘するとともに、「運用プロセス標準化の際には、全社的な視点を持つことも重要だ」と強調する。

 「仮想化の浸透により“全社的なリソース共有”が重視されるようになったが、運用プロセスについてもまったく同じことが言える。例えば、部門ごとにシステムを管理している場合、同じシステムを使っていても、運用方法が部門によってまったく異なっているケースが多い。『仮想サーバに割り当てるリソース』などの運用ポリシーについても同様だ。各システムとも運用プロセス/ポリシーが異なったままでは、それぞれに自動化ツールを適用しても、あくまで“部分的な自動化・効率化”の集積に過ぎない。全社視点で運用プロセス/ポリシーを見直し、より無駄のない、効率的な形を考え直したうえで、標準化できるプロセス/ポリシーは標準化し、そのうえで自動化ツールを導入した方が効果は大きい」

 ただ、これを考える際に大きなハードルとなるのが、現在の運用管理体制だ。周知の通り、日本企業の場合、システムを「部門ごと」など、縦割りで管理しているケースが一般的だ。そもそもこの運用体制が「同じシステムでも、運用プロセスは異なる」という無駄を生み出しやすい。

 「その点、欧米の企業は“水平型の管理”が基本。基盤、ミドルウェア、アプリケーションといったシステムのレイヤごとに管理する組織体制になっている。従って、各システムの担当業務は異なっていても、その運用プロセスについては全社的に標準化しやすい。本来的には、プライベートクラウドも全社リソースの共有化がキモである以上、全社システムを一元的に管理しやすい“水平型の運用体制”が一つのポイントとなる。そうでなければ“社内にいくつもクラウドができてしまう”事態にもなりかねない」

自動化もまた手段。効率化する真の目的を見据えよう

 だが、入谷氏は「とはいえ、こうした体制にすぐに移行することは、現実的に見て難しい」とした上で、「全社的な観点の重要性を念頭に置きつつ、まずは現状の運用プロセス/ポリシーを見直し、人が手作業で行っている部分について、“引き続き手で行ったとしても効率化できるレベル”まで改善を目指すのが得策ではないか」とアドバイスする。

 また、「既存の運用管理ソフトを本当に十分に使いこなせているかどうかも見直すべき」という。

 「こうしたツール類は、いったんルーチン作業で使い始めると、バージョンアップで新機能が追加されても無視してしまいがち。プロセスの見直しと併せて、いま使える運用自動化機能をもっと有効に使うことを考えれば、それだけでも効率化できる余地は見つかるはず。その上で前述のように、全社的に標準化できるプロセスを標準化していけば、自動化ツールをより有効に使えるはずだ」

ALT 「自動化の最終目的をコスト削減に置くべきではない」と指摘する入谷氏≫

 ただ入谷氏は、自動化ツールの有効な活用法を提案しながらも、「自動化の目的を『コスト削減』だけに置くべきではない」と強調する。

 「コスト削減を最終目的にしてしまうと、取り組みに発展性がなくなり、一定のコストや労力を削減できた時点で、取り組みを終えてしまいがちだ。また、何よりも避けたいのは、コスト削減に注視するあまり、『ビジネスで競争優位を獲得できるシステム運用を実現する』といった大目的を見失ってしまうことだ。自社では自動化で削減したお金や時間を、どう生かし、何につなげたいのか??これを念頭に置いておけば、手段と目的の本末転倒も避けられるし、自動化の本格導入に向けた計画も立てやすい。自動化に向けた意欲も湧きやすいはずだ」


 自動化の目的は、「コストを削減すること」ではなく、「運用を効率化し、情報システム部員のスタッフが本来的な作業に注力する余裕を確保するとともに、市場の動きに迅速・柔軟に対応できるシステム運用を実現すること」??新しい要素が登場すると、それを「いかに使うか」「いかにコストを削るか」ということばかりに目を奪われがちだが、「自動化もまた、手段に過ぎない」というひと言を、あらためて肝に銘じておくべき、ということだろう。

 さて、次回は仮想化技術とその運用管理に深い知見を持つ、日本仮想化技術 代表取締役社長兼CEOの宮原徹氏に、より現実的・日常的な視点から自動化導入のコツとポイントを聞いてみたい。

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