断捨離で、業務とシステムはもっと快適になる情報マネージャとSEのための「今週の1冊」(98)

多忙であることことを言い訳にすることなく、まずは分類によって“物事の本質を見極める姿勢”を貫くことが重要だ。

» 2012年07月17日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

仕事に効く「断捨離」

ALT ・著=やましたひでこ
・発行=角川マーケティング
・2012年5月
・ISBN-10:4047315486
・ISBN-13:978-4047315488
・780円+税
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 「断捨離」とは「今、立っている軸足を、より良い軸足に変えること。たったそれだけで、私たちの視点に次々と変化が訪れます。そして、まず最初にやることは、『目の前にある“現象”と向き合うこと』。目の前に不要なモノが堆積しているのであるのなら、そこから、1つ1つ向き合い始めていく。大事な書類は、すぐに取り出すことができるか。必要なモノに、瞬時にたどりつくことができるか」。「一事は万事」。「氷山は、ほんの一角を海面に出していますが、私たちの軸足が違う氷山に移るだけで、抱えている海面下に隠れた問題がまるごと変化していくのです」――。

 本書「仕事に効く『断捨離』」は、「断行」「捨行」「離行」というヨガの思考法を、生活に適用することで、より快適で充実した人生への転換を図ることを提唱しているやましたひでこ氏が、その考え方を仕事に適用した作品である。むろん、ただ単に「仕事場の片づけ」をすることが目的ではなく、「モノと自分に向き合う力、始末をつけていく力、大切なところを見抜く力を養うツール」である「断捨離」により、物事の本質を見極め、「着地点を見誤らないための知恵」である「俯瞰力」を養おうと説いている。

 中でも印象的なのは、「断捨離」の軸とも言える「分類」の考え方だ。そのうちの1つ、「7・5・1の法則」は、例えば「収納」をテーマとするなら、「引き出しなど“見えない収納”は、収納可能な量の7割にまで削減する」「机の上のペン立てなど、“見える収納”は、収納可能な量の5割まで」「写真盾など“見せる収納”は1割まで」といった具合に考える。つまりは「今、目の前にある収納空間を基準にして総量規制を自ら課していく」ことで、“自身の基準に沿う形”で、「使い勝手や見栄えのいい収納状態」築けるというわけだ。ポイントは、こうした分類・整理をするための考え方は、モノだけではなく企業、部門、個人レベルで扱う「情報にも」適用できるとしている点だろう。

 もう1つは「3分類の考え方」だ。「7・5・1の法則」で大きく3つに分けたテーマのそれぞれを、さらに3つに分類していくのである。例えば、「7」の部分が「営業企画部の(業務情報の)効率的な収納」だとすると、これを「書類棚への収納」「個々人の収納」「会社がまとめる収納」といったように「3つに大分類」する。さらに、「書類棚への収納」を「今現在、どのような企画が求められているかを知る手掛かりとなる資料」「今現在、稼働している企画の概要や進捗が知れる資料」「過去に似た企画があった場合、今の仕事に当てはめて結果を予測しうる資料」といったように「3つに中分類」し、さらにもう一度、このそれぞれを3つに小分類する。

 これにより、最初に設定した「営業企画部の(業務情報の)効率的な収納」というテーマの本質を見誤ることなく、必要な活動を具体的なレベルにまで無理なく落とし込めると説く。会議の場でも有効であり、最初のテーマ設定を明確化し、議論の「前提をそろえる」ことで、「無駄な対立がなくなる」他、議論が空回りした際も、「大分類について話しているのに中分類や小分類の話が出ている」といった具合に問題を発見し、すぐに議論を修正しやすくなると説いている。

 中でも重要なのは、業務課題というテーマについて、「3分類」の考え方で必要な仕事を取捨選択していくうちに、「仕事の優先順位もおのずと見えてくる」とういう指摘だろう。実際、「大分類」すら整理できないまま、ただ大量の仕事を「こなすだけ」になっている例は、常にわれわれの身近にあふれている。著者はその点を挙げ、「それは、目先のことに目を奪われ過ぎているからではないか」、多忙であることを「言い訳」にすることなく、まずは分類によって、「何が大切なのか、“物事の本質を見極める姿勢”を貫くことが重要」だと説いている。

 さて、いかがだろう。以上の指摘は業種や業務のスケールを問わず、あらゆるビジネスパーソンにとって有効と言える。特に多忙な人ほど「断捨離」の考え方で現状業務を「分類」し、本当に必要なものを見極めてみると、自分がいかに遠回りしていたのか、思わぬ現実を発見できるかもしれない。また、これは個人や組織の業務改善だけではなく、いたずらに機能を盛り込んでしまいがちなシステム開発の在り方にも有効と言えるのではないだろうか。本書は「断捨離」の考え方をさまざまな角度から解説しているのだが、中でも特に印象的なフレーズを紹介しておこう。

 「断捨離は、何が私たちの流れをせきとめているのか、滞らせているのか、その原因を特定し、入れ替えていく作業」「断捨離は一点突破。ひとつでいいから突破口を探してみる」「断捨離は変えられること探し。できることから手をつける」「断捨離は厳選作業。必要なモノは、必要なときに」「断捨離は取捨選択のモノサシを持つこと」「断捨離の鉄則は、自立、自由、自在」――本書を読んで、自身の開発業務のヒントにしてみてはいかがだろう。


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