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» 2012年12月04日 12時00分 UPDATE

情報マネージャとSEのための「今週の1冊」(114):なぜIKEAは世界中で支持されるのか

世界各国に店舗を展開するグローバル企業として成長を遂げたIKEAを支えたものとは何か。10年間経営の舵取りをしてきた元CEOが語る。

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

IKEAモデル―なぜ世界に進出できたのか

IKEAモデル―なぜ世界に進出できたのか

著=アンダッシュ・ダルヴィッグ
発行=集英社クリエイティブ
2012年11月
ISBN-10:4420310618
ISBN-13:978-4420310611
1600円+税
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 1943年にスウェーデンの小さな町、エルムフルトで産声を上げたIKEA(イケア)は、その後、ヨーロッパを中心に市場を拡大。現在は、世界40カ国以上に12万を超える従業員を擁し、年間売上高が250億ユーロ(2011年実績)という世界最大の家具販売企業となった。

 本書は、1999年から2009年までIKEAの社長兼CEOを務めたアンダッシュ・ダルヴィッグ氏が、なぜIKEAがここまで巨大なグローバル企業に成長できたかについて、その理由や自身の取り組みなどを語った1冊である。これまで創業者の伝記や第三者がIKEAを分析した書籍は日本でも紹介されてきたが、経営に深くかかわった人物の視点から書かれたものは恐らく初めてだという。

 著者によると、IKEAの最大の強みは、創業以来揺るぐことのないビジョンにある。そのビジョンとは「より快適な毎日を、より多くの方々に」。その理念を体現するために、IKEAは商品の販売価格を下げてより多くの顧客に購入してもらえるような「価格設定」、自宅での毎日の暮らしを本当に心地良いものに変える商品デザインを重視するなどの「機能性」、欲しい商品を選択して代金を払うだけではなく、配送から組み立てまでを引き受ける「顧客の参加」、そして社会に貢献するための「環境保護」といったテーマを掲げて、事業を展開してきた。

 また、グローバル展開を進める上でIKEAが重視したのは、それぞれの国や地域との関係性である。新興市場では、中間層向けに家具インテリア製品を低価格で提供するほか、雇用の創出、国際競争力のある輸出産業を構築するためのノウハウ提供などを行ってきた。例えば、中国ではヨーロッパよりも50%安く商品を販売したり、インドの絨毯産業の工業化に取り組んだりしている。「グローバル企業として成功するためには、単に雇用を創出し、その国の政府に税金を払うだけではもはや不十分であり、実質的な変化をもたらし、より良い社会に貢献するというもっと大きな役割を果たさなければならない」と著者は述べる。

 ただし、IKEAはここまで順風満帆に経営を続けてきたわけではない。市場拡大を急速に推し進める中、同社は仕事の進め方や諸システムを会社の大きさと成長に適応させられずにいた。店舗では製品の在庫管理とサービスの質の問題を抱え、会社は官僚的な傾向が強まり、組織はばらばらになっていた。

 そうした中でCEOに就任した著者は、まず新しい方向性を打ち出し、それを確立することに努めた。そこで打ち出した戦略が「10年で10の取り組み」というものである。例えば、既存店の年平均成長率10%を10年間維持するという目標だ。1990年代の年平均成長率が6%だったことからも、この数字がいかに積極的であるかが分かるだろう。

 その実現に向けた取り組みの1つが、商品のさらなる低価格化である。1999年から2009年までの10年間で、顧客に対する販売価格は商品レンジ全体で平均20%も引き下げた。重要な新商品の導入にあたっては、競合と比べて50%引き、あるいはそれ以下の価格をつけることもあった。

 では、IKEAはいかにして低価格を実現しながら、収益性を維持しているのか。その答えは、原材料調達、製造、商品開発から店舗への配送までのバリューチェーン全体の管理と調整にある。それ以前のIKEAは、単一の商品レンジを共有し、単一の流通部門と単一の仕入れ部門を共有しているにもかかわらず、サプライチェーンは商品開発、流通、仕入れ、小売部門など各所で分断されており、業務プロセスやタイムスケジュール、ITシステムはそれぞれの部門で独自に構築されていた。そこで、サプライチェーンを職能別の組織からプロセス指向の組織に作り変えるとともに、全体に共通するサプライチェーン戦略、新たな組織の枠組み、新たなITシステムなどすべてを再構築した。これはIKEAがこれまでに遂げた最大の変革だったと著者は振り返る。

 そのほかにも、本書ではIKEAの成功の秘けつを経営者の目線で丁寧に解説している。ビジネスの観点からIKEAのグローバル戦略を知りたい人、あるいは単にIKEAのファンであってもぜひ一度目を通しておきたい1冊だ。

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