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ターゲットは“普通の人”、松下の新「DIGA」

» 2004年03月09日 23時43分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 松下電器産業は3月9日、DVDレコーダー「DIGA」シリーズの新製品5機種を発表した。初のHDD/VHS/DVD“3 in 1”モデルも加え、40%といわれるDVDレコーダーの市場シェアをさらに拡大する構えだ。また発表会では、7月に発売を予定しているBlu-rayディスクレコーダーも参考出展した。

photo 「DIGA」シリーズの新製品5機種。実売価格は5-12万円に収まる見込み

 新しいDIGAラインアップは、完全にボリュームゾーンに狙いを絞った布陣となった。まず、「ブロードバンドアダプタ」内蔵の新機種は含まれず、従来機のハイエンドモデル「DMR-E200H」が継続販売される。これは「必ずしも全てのユーザーが使用するものではない。直接、数万円のコストアップに繋がる機能より、販売価格を抑える方向を選んだ」(同社)ため。事実、新ラインアップの5機種のは、すべて実売価格で5-12万円の普及ゾーンに収まる見込みだ。一方、今回は米Gemstarの地上波EPG「G-GUIDE」を採用し、HDDを搭載する全てのモデルに搭載した。一般ユーザーにも分かりやすい機能は、積極的に盛り込んでいくという。

EP8時間モードと「NEWディーガエンジン」

 新しい5機種共通の仕様としては、HDDおよびDVDメディアへの録画時間をさらに延長する「新・長時間モード」の搭載、そして「NEW・ディーガエンジン」と呼ばれる新設計の高画質化回路がある。

 新長時間モードを一言でいうと、平均ビットレート1.3Mbps、解像度320×240ピクセルのMPEG-2だ。音声のビットレートも従来のEPモードの半分(128Kbps)まで落としたことで、たとえば160GバイトのHDDを搭載する「DMR-E85H」なら最大約284時間、250GバイトHDDの「DMR-E95H」なら約443時間もの録画が可能になる。また、DVDメディア(R/RAM)なら、一枚で約8時間。

photo 新・長時間モードのデモ。この新長時間モードは、EPモード選択時に従来の6時間モード(DVD一枚あたり)と選択できる

 デモンストレーションを見る限り、画質は“それなり”。だが、画質にこだわらなければ一応使えるレベルを保持しており、また平均レートは低くても、「動きの激しいシーンでは10Mbps以上のビットレートを与えることもある」(同社)ため、映像の破綻は極力抑えられそうだ。「これまでVHSの3-5倍モードで録画していた主婦層や若年層なら、十分満足してもらえるはず」(同社)。

 一方、NEW・ディーガエンジンが可能にするのは、まず新しいビット割り当てアルゴリズムを採用した「スーパーハイブリッドVBR」がある。これは、「例えば衣服の質感などを忠実に再現する」(同社)。また、MPEG特有のブロックノイズやモスキートノイズを除去する「インテグレイテッドDNR」、そしてVHSテープ特有の横揺れやノイズを低減し、ダビング時の画質を向上させる「インテリジェント・ダビングDNR」も盛り込まれた。

photo 「インテグレイテッドDNR」の概念図。1画素単位で画像の特徴を分析(Pixel Analizer)し、適応型水平DNRと適応型垂直DNRの両方を適用。MPEG特有のブロックノイズやモスキートノイズを除去する
photo 「インテリジェント・ダビングDNR」の概念図。その名の通り、ダビング時に特化したノイズリダクション技術だ。外部入力やVHSテープからDVDへダビングする際、TBC(タイム・ベース・コレクタ)と3次元NRを使ってテープ特有の横揺れやノイズを低減し、符号化効率を向上させるという

 これらの高画質化機能も、絶対的な画質向上というよりは、“平均ビットレートを落としても視聴に耐える画質”に主眼を置いたものだ。「これは、新・長時間モードを補完し、また高速ダビングにもつながり、機能面の訴求力は増す。さらにHDD内蔵のVHS一体型DVDレコーダー「DMR-E150V」の追加など、AVマニア層ではなく幅広いコンシューマー層をターゲットにした強化策だ。

アテネはDIGAで録る

 松下のマーケティング戦略は単純明快。既にDVDレコーダーの世帯普及率は7%を超え、新しい物好きのアーリーアダプター層にはひとまず行き渡った感がある。一方、開幕を7月に控えたアテネオリンピックは、これまでVHSビデオを使ってきたごく普通の人たちに、HDDやDVD、そしてEPGの利便性を訴える好機だ。

 「新しいジャンルの製品は、普及率が10%を超えた時点で急速に普及するといわれる。いわゆる“アナウンス効果”だが、今年は特にオリンピック、総選挙、高校野球とイベントが目白押しだ。また、アテネと日本の時差(6時間)を考えると、人気競技は深夜に放送されることになるだろう。眠い目をこすってテレビにかじりつくよりも、DIGAに録画して、後でゆっくり観ることをお勧めしたい」(パナソニックマーケティング本部の牛丸俊三本部長)。

photo お盆休みにゆっくりオリンピックを観たいという牛丸本部長

 昨年、「DIGA」シリーズでDVDレコーダー市場のシェア40%を超えた同社は、さらに“ポストVHS”色を明確にすることでシェア拡大を目指す。ただし、AVファン層の期待を裏切らないために、デジタル放送のHD映像をそのまま残せるBlu-ray Discレコーダーを用意するあたりが、いかにもマーケティング上手の松下。しかも、50Gバイトの容量を持つ2層式BDをサポートする初めてのモデル。さらにDVD-R/RAMの録画・再生機能も併せ持つという。「少なくとも、従来のDIGAで録画したメディアはすべて再生可能だ」(同社)。

photo BD/DVDレコーダーは7月発売予定

 このBD/DVDレコーダー。気になるHDDの有無など詳細は非公開だが、少なくとも地上/BS/CS110度の3波対応デジタルチューナーとイーサネットポートは搭載される模様だ。なお、同社広報は「改めて発表の場を設ける」としており、「7月発売予定」以上の情報は出さなかった。

photo BD/DVDレコーダーのHD映像再生デモ
photo 向かって左側にB-CASカードのスロットがある
photo BD/DVDレコーダーの背面端子群。外部出力2系統、外部入力3系統(内1系統は前面)、PCMビットストリームのデジタル音声出力、D1/D2出力、そして10BASE-Tのイーサネットポートなどを備えている
photo 発表会にはイメージキャラクターのボブ・サップさんも登場。アスリートに扮した姿から、オリンピックを意識したプロモーションが行われるように思えるが、CMの内容は秘密だそうだ

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