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» 2004年03月12日 21時10分 UPDATE

荒波にほんろうされた離島のインターネット事情八丈島にブロードバンドがやってくる (1/2)

東京都内のような恵まれた環境にいると忘れがちだが、日本には有人の離島だけでも260あり、そこに住む人たちは約47万人にのぼる(2004年3月1日現在)。そうした島におけるインターネット環境は、当然のことながら本土と比べると厳しい。おりしも、3月10日からYahoo! BBのサービスが始まる八丈島を訪ねる機会があったので、そのブロードバンド導入までの経緯などを取材した。

[河野寿,ITmedia]

 2003年初頭、一つのISP業者がひっそりとサービスを停止した。

 そのISP、すなわち「伊豆七島インターネットサービス」が1年と少々の営業期間の後にサービスを休止したことで、八丈島でインターネットをするには、ダイヤルアップでアクセスポイントに接続するしか手段がなくなってしまったのだ。

 2003年初頭といえばわずか1年前。世間ではADSLは当たり前、「Bフレッツ」をはじめとするFTTHの環境もかなり普及しつつあるという、そんな時期だった。それが、時計の針を戻すかのように、常時接続からダイヤルアップに逆戻りとは……東京から290キロ離れた島では、そんな事件が起きていた。

調査と陳情、そして立ちふさがる壁

 これがきっかけとなったわけではないが、そうした状況になる1年ほど前から、八丈島にブロードバンドを引くための研究会を開催してきた人たちがいる。今回お話を聞いた「八丈島へブロードバンドを推進する会(以下、推進する会)」の方々だ。

 本土の方では、ブロードバンドが盛んに喧伝されるなか、同じ東京都といえども、八丈島ではブロードバンド化はいっこうに進む気配がない。そんな状況では、ある種の焦燥感にかられるのも無理はない。いつになるかわからない(あるいはこないかもしれない)ブロードバンドを座して待つよりも、自分たちでなにか行動を起こそう……ということで彼らは活動を開始した。

photo 左から「八丈島にブロードバンドを推進する会」の代表・沖山克身氏、清水紀行氏、副代表・間仁田聡氏+今回インタビューに同行した船橋法典氏。ブロードバンドがまもなく実現する今、推進する会が次に考えるのはブロードバンド環境を活かした情報発信と地域の活性化だ

 最初は、とにかく情報がなかった。島内にどのようなインフラがあるのかわからない。光ファイバーが通っているのかどうかさえ知らなかった。

 そこで、ときには島内の電話線の配線状況を足で調べ、あるいはツテをたどって本土と島の間の回線容量を総務省に問い合わせる、東京都や総務省、NTTへ陳情するなど、必要と思われることはとにかく色々やってみた。その結果、以下のようなことがわかってきた。

  • NTT東日本によると4000世帯ほどの加入が見込めるのであればサービスを行うこともやぶさかではない
  • 島へ来ている海底ケーブルはNTT東日本所有で、その容量は600Mbps。しかし、ほかの通信事業者が占有可能な帯域までは確保していない
  • 総務省・東京都などの担当者は一応の理解は示すものの、具体的な施策というと「これから検討する」というだけである

 この時点で、八丈島へブロードバンドを誘致しようという計画は、かなり困難であることが明らかになった。とくにNTTの回答は、事実上のブロードバンドが導入できないことを宣言されたようなものだ。というのも、八丈島の人口は9108人、世帯数は4694世帯である(いずれも2004年3月1日現在)。いくらインターネットが一般に普及したとはいえ、8割以上の世帯の加入が見込めるかと言われれば、それはかなり難しい話だろう。

 また、ほかの通信事業者用の帯域が確保されていないため、新たにサービスを始めようという会社が現れたとしても、NTTにケーブルを引いて貰う、あるいは自前で海底ケーブルを引くなど、かなりコストのかかる方法を採らねばならない。こちらも、加入世帯数から考えると実現は難しいことがわかった。

降って湧いたようなブロードバンド

 このようにして島をめぐる状況が明らかになったものの、2003年の半ばごろには、推進する会の活動も攻めどころを見失っていた。ところが、2003年8月になってあっさりとブロードバンドの導入が決まってしまったのだから世の中はわからない。

 このニュースは広く報道されたためにご存じの方も多いだろうから、ここでは詳しくは述べないが、要はソフトバンクBBの孫正義社長が、八丈島へブロードバンドを推進する会からのメールを受けとり、Yahoo! BBの導入を決断したのだ。そのときのエピソードが面白い。

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