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地下鉄の窓に“燃焼系”〜東京メトロの「動くトンネル広告」を見てきました

» 2004年06月02日 18時23分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 まずは下の動画を見てほしい。

photo 動画はこちら。CMは、サントリー「燃焼系アミノ式」。2人の男子生徒が側転しながら登校する「ダブル生徒編」だ

 海外へ頻繁に出かけている人なら見覚えがあるかも知れない。これは、東京メトロ銀座線の“虎ノ門ー溜池山王間”に設置された新しい広告メディア「地下鉄トンネル内大型CM(サブメディア式)」だ。米サブメディアが開発した“動くトンネル広告”で、同様のシステムは、既に米国内に3カ所、香港に1カ所設置されている。それを日本で初めて導入したのが東京メトロというわけだ。

 ご覧の通り、走行中の電車から外を見ていると、トンネルの内壁に動画のCMが映し出される。サイズは、ちょうど窓2つ分の100インチ相当。見える時間は15秒足らずだ。しかし、移動しているはずの電車の外に大型スクリーンが現れ、さらに制服姿の男子生徒2人が側転しながら電車を追いかけてくる(本当は登校中という設定)。そのインパクトはなかなかのもので、思わず“あのCMソング”が頭をよぎる。

 燃焼系、燃焼系……。

実はローテク?

 サブメディアジャパンの月川成洋社長によると、サブメディア式の基本は「パラパラ絵本」と同じだという。これは、静止画を一定の速度でコマ送りすると人の目には動画として映るというもので、アニメや映画と同様、19世紀に発見された「ゾイトロープ」の原理がベースになっている。ただし、動いているのはフィルムではなく、見ている人のほうだ。

photo 英国のおもちゃ「回転のぞき絵」のサンプル。仕組みとしては、パラパラ絵本や映画よりもコレに近い

 トンネルの壁面には、細かいスリットの入ったディスプレイボックスが150個、一定の間隔で設置されている。スリットがあるため、乗客のいる場所からは特定の静止画像しかみることができない。その状態で電車が走ると、静止画像がコマ送りで動き、さらに残像効果によって乗客の目には映像として映る。かなり大雑把な説明だが、イメージとしてはきっと正しい。

photo ディスプレイボックスの実物。幅1.2メートル、高さ85センチ。特殊なレンズ状のフィルターで覆ったフィルムとバックライトが組み込まれている。スリットが細いため、一見真っ暗に見えそうだが、高速移動時には光の拡散によって全画面の画像として見える
photo 左はディスプレイボックスの前でカメラをゆっくり動かして撮影したもの。右は早くうごかしたもの。電車のスピード(今回は時速55キロから35キロへの減速区間に設置されている)なら、しっかり全画面表示になる
photo 中のフィルムには、CMなどの映像を独自の技術で加工した画像データがプリントされていて、見る角度によって違う画像が見える。これに裏から光をあてると、スリットは光を拡散しながら画像を照射。窓に静止画像が浮かび上がる仕組みだ

 さらに、ディスプレイボックスに仕込まれた画像フィルムは、サブメディア独自の技術で加工されており、1枚あたり静止画26枚分を表現できるという。電車の速度が一定であると仮定してフレームレートを計算すると、実に「毎秒260フレーム程度」(月川氏)。なるほど、キレイな動画に見えるのも頷ける。

 「実際に見える映像は、テレビと同程度と思ってもらえればいい。もちろん、電車のスピードが早くても、遅くても、乗客にはスムーズに見えるようになっている」(同氏)。

 この動くトンネル広告、東京メトロでは6月3日から稼働させる予定だ。早く見たい人は、東京メトロ銀座線の渋谷方面行きに乗り、「溜池山王駅」−「赤坂見附駅」区間で、進行方向右側の壁面に注意してみよう。

 なお、前述の通り光は拡散するため、壁面からの距離が遠いと登場人物が太ってみえたりする。正しい画角で見えるのは、進行方向左側のつり革あたりだ。画面は右側だから、体の向きが普通とは逆になってしまうが、周囲の人から変な目で見られてもいいという人は試してみてほしい。

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