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「モバイル放送」を追いかけた2500キロ――『ワレ到着セリ』4日間同行レポート(後編)(3/4 ページ)

» 2004年06月17日 11時22分 公開
[粕川満,ITmedia]

 せっかくの機会なので、東名高速ではなく中央自動車道を経由して東京に向うことに決定する。一般道を通るというプランは誰からも出ない。下手に一般道に降りると、到着時間がいつになるかわからないことと、なによりも皆さんさすがに疲れてきているのであろう。

 午前9時にホテルを出発し、一般道を経由して京都東ICに入る。ここまでの受信はかなり良好。前日の晩にも経験したことだが、南側にある程度高いビルのある道でも反対車線を走ると影響を受けにくいというのは本当だ。

 これは計算でもすぐにわかる。たとえば、反対車線とは5メートル離れているとしたら、tanθ=y/xなのでθ=48、x=5で、y≒5.5。つまり、5.5メートルのマージンが生じることになる。1メートル離れれば1.1メートルの余裕ができるわけだから、「陰になっているところではなるべく障害物から離れる」というのは案外有効な手段なのである。

 小牧JCTで中央自動車道に入る。道中で大きな障害物といえば、中央自動車道では最長、全国の高速道路のトンネルでも3位の長さを誇る恵那山トンネル(上りで8649メートル)と、かつてモバイル放送がギャップフィラーのテストを行なった笹子トンネル(4784メートル)があるが、あとはさほどトンネルの数も多くはない。

 実際、諏訪湖SAのあたりまでは快調に走り続けることができた。左右に中央・南アルプスを望むドライブは、とても気持ちがよい。

途中休憩した諏訪湖SAでは湖を背にして受信は可能

 この4日間「モバイル放送漬け」ともいえる状況だったわけだが、実際に経験してみると、クルマでの利用においては「音声放送」がキラーコンテンツになるだろうという思いは確信に変わってきた。

 米国においてもSバンドを使った同じような「衛星ラジオ(Satellite radio)」というサービスが、「Sirius Satellite Radio」と「XM Radio」の2社より供給されている。

 これらはモバイル放送とは違って音声のみのサービスだが、自動車での利用を中心に相当な普及を見せているとのこと。社会的あるいは地形的な条件がうまく合致しているということもあろうが、「24時間聞いても月額約10ドル」という割安感も受けているようだ。

 私もiPodこそ持っていないが、メモリタイプやCDタイプ、HDDタイプのMP3プレーヤーはいくつか持っていて、ここに自分のCDからの音楽や、CSからサンプリングした音楽を入れて日常的に聞いている。だがしかし「自分で入れた音楽は飽きる」のである。1000曲入るのは確かにすごいことだが、しょせんは自分のセレクトであり意外性はない。余計なおしゃべりのない音楽コンテンツ――つまり有線放送のようなサービスを持ち運びできるということは、なかなかすごいことなのではないかと思う。

 そういう意味で、音楽専門のモバイル放送端末(やがて発売されるとのことである)には個人的にかなり気になる機器である。

 もちろん、映像コンテンツについても使う場面によってはかなり有用なサービスになりうる。

 携帯電話がここまで使われるようになったのも、かなりの部分は「ヒマツブシ」に有効だからだ。ならば「ヒマツブシの帝王」たるTVに勝るものはない。日常的に持ち歩いて使うのであれば、映像も表示できる端末(もちろん音声だけの受信も可能)のほうが、使いでがあるかもしれない。

 そんな思考にふけっているうちに中央高速も終盤に入ってきた。いよいよ小仏トンネルに入る。ここを越えると八王子市、つまり東京だ。

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