コラム
» 2004年06月24日 12時00分 UPDATE

蘇る「新タワー」構想、これがラストチャンスか? (1/2)

東京タワーに代わる「第二東京タワー」の構想は、これまで浮かんでは消えてきた。しかし、デジタル放送化を迎え、その必要性は待ったなしのところまで来ている。なかでも熱心なのがさいたま市。ラストチャンスともいえる今回、新タワー構想はようやく実現に向けて動き出しつつある。

[西正,ITmedia]

 「さいたまタワー」実現に向けて、さいたま市で6月21日、大シンポジウムが開かれた。シンポジウムには、県知事、市長も参加。県と市が協力し合ってタワー誘致をしようというその姿勢には、タワー誘致に向けた“本気さ”を感じさせられた。9月には埼玉アリーナに2万人を集める大集会が開かれるという。

 東京タワーに代わる新タワーを建設しようという構想は、かなり以前からある。俗に“第二東京タワー構想”とも呼ばれるが、さいたま市が名乗りを挙げている以上、「新タワー構想」と呼ぶ方が相応しいようだ。

 この構想は、地上波放送のデジタル化を契機に、新たな放送塔を建てようというものだ。とはいえ、決して無意味に予算を消化する公共事業的なものではなく、放送の将来にとって、それなりの意味合いを含む議論だ。そこでまず、新タワーの必要性について、検証してみることにしよう。

新タワー構想の必要性

 東京タワーは昭和33年(1958年)に建てられ、昨年には開業45周年を迎えた。この高さ333メートルの塔が、NHKや民放キー局をはじめとする各種放送の電波発信拠点として果たしてきた役割には、非常に重いものがあった。

 だが、45年前と今とでは、“333メートル”という高さが持つ意味合いは大きく変わってしまった。高度経済成長期、そしてバブル経済の全盛期を通じて、東京都内を中心に次々と高層ビルが立ち並ぶようになってしまったからだ。

 親局としての電波発信拠点である以上、高層タワーであることは必要不可欠。だが、もはや今の東京タワーの高さでは、電波を飛ばせる距離は非常に限定的にならざるを得なくなっている。

 新タワーの建設用地候補には、東京タワー隣接地、上野、池袋、さいたま市などが名乗りを上げている。それぞれの候補地間の競争は激しさを増しているが、いずれも新タワーの高さ現在のほぼ倍にあたる600メートル級のものを提案している。

 これには現在の東京タワーが抱える問題を新タワーによって解消しようという意味合いがあるからだ。特に、地上波デジタル放送はUHF波を使うため、非常に直進性が強い。高層タワーから電波を発すれば、それだけ親局のカバーエリアも広がることになる。

 加えて、地上波デジタル放送の開始とともに、高層タワーの新設が求められる理由としては、携帯電話機やPDA、車載などによる移動受信サービスが可能になるというポイントがある。地上波デジタル放送は、送信側がデータを13のセグメントに分割して、サービスごとに1から13のセグメントを組み合わせて送り、受信側で個別のサービスを選択して受ける方式を採用している。

 ハイビジョンなら1チャンネル、標準画質放送なら3チャンネルを同時に流せるのは、ハイビジョンに12セグメント、標準画質放送に4セグメントが必要だという意味である。そして、残る1セグメント(ワンセグ)が、移動受信に充てられることになっている。

 アナログ放送とは異なり、移動受信でも鮮明な画像を楽しむことが出来るのが、地上波放送をデジタル化することのメリットとしてアピールされてきた。画像圧縮技術を巡る特許問題などがネックとなっていたが、それも解決したところで、2005年には本格的なサービスが開始されることになっている。

 地上波局各社の本音としては、もう少し先送りしたい事情もあるにはある。が、それはさておき、移動受信が新タワー構想になぜ絡んでくるのかというと、移動受信にあてられるデータ量が、1セグメント(13セグメントのうちの1セグメント)しかないからだ。

 1セグメントしかないということは、その分、電波が弱くなるということを意味する。であれば、親局となるタワーを高層のものにしておかないと、大変な数の中継局が必要になってしまう。これではワンセグモバイルはビジネスとして成り立つ構造にはなりえない。

 新タワー構想を正当化する根拠として、決まって移動受信の問題が挙げられるのには、そうした背景があるからだ。さらに言えば、新タワーの建設が決まれば、地上波局各社はそれを待つということを理由に、2005年から先送りする口実として使えるという、隠された思惑もある。ワンセグモバイルは事業性がいまだはっきりしないだけに、できるだけ先送りして様子を見たいというのが、放送事業者側のホンネだからだ。

ラストチャンスと言われる理由

 とは言え、新タワーの建設は、慎重に検討される必要がある。

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