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» 2004年06月24日 15時28分 UPDATE

標的はP2Pソフト作者――著作権侵害「教唆者」の責任問う法案

米上院で、著作権侵害を奨励する製品のベンダーを提訴・起訴できるようにする法案が提出された。P2P業界団体などは、この法案は革新を阻害することになりかねないと批判している。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 米上院の有力議員らは6月22日遅く、ピアツーピア(P2P)ソフトなど、著作権侵害行為を「教唆」する製品の作成者をアーティストやエンターテインメント企業が訴える権利を認めるための法案を提出した。

 上院司法委員会の委員長オリン・ハッチ議員(ユタ州選出・共和党)は自身が提出したこの法案について、子供や10代の若者たちに犯罪行為を奨励することで利益を得ている会社にターゲットを定めたものだと語っている。そのターゲットがP2Pベンダーであるのは明らかだ。同議員は声明で、「子供に犯罪を教唆、奨励するのは、違法かつ不道徳な行為だ。悲しむべきことに、今では、子供に盗みをけしかけることで合法的に利益を上げられる考えている企業があるようだ。中には、『無料の音楽』という虚偽の約束で子供たちに法律違反を犯させることを合法だと考えている企業まである」と語っている。

 全米レコード協会(RIAA)がこの法案を歓迎する一方で、P2P業界団体のP2P Unitedは、この法案を「恐ろしい社会政策」だと批判している。P2P Unitedやそのほかの批判者たちは、この法案は「著作権侵害に使われる可能性はあるものの、その一方で多くの合法な用途に活用できるはずの新技術」の開発を阻害することになりかねないと反発している。

 「この法案が制定されれば、P2P技術だけでなく、まだ考案されていない各種のすばらしい新ツールの誕生まで阻まれることになるだろう」とP2P Unitedの事務局長アダム・アイスグラウ氏はメールで語っている。「彼らの大げさな言い分を鵜呑みにしてはならない。この法案を支持している議員たちは皆、公聴会すら開かずに、これまで長年にわたり、凝り固まった業界の恐ろしい力から革新者と技術を守り、アメリカ経済の創造に寄与してきた著作権法をくつがえすような投票を行なおうとしている」

 この法案には、強力な支持者が付いている。同法案の共同提出者の中には、上院の多数党院内総務のビル・フリスト議員(テネシー州選出・共和党)、上院の少数党院内総務のトム・ダスクル議員(サウスダコタ州選出・民主党)、司法委員会幹部のパトリック・レーヒー議員(バーモント州選出・民主党)などが含まれる。

 この法案は、著作権侵害の教唆者に対して新たな刑事罰や民事罰を定めるものではなく、著作権侵害の疑いで提訴、起訴できる対象として新たな定義を加えるものだ。新たに訴訟の対象に加えられるのは、「妥当な人物」により、著作権侵害を「故意に援助、幇助、誘導、周旋」していると判断された人たちだ。著作権法にフォーカスした権利擁護団体Public Knowledgeによれば、「妥当な人物」という基準は、通常、著作権の侵害幇助と間接侵害に適用される基準よりも幅が広くなっているという。

 現在、著作権侵害の民事罰は侵害行為1件に付き最高3万ドル、故意の侵害行為の場合は1件に付き最高15万ドルとなっている。損害総額は裁判で決定される。

 Public Knowledgeのジジ・ソーン代表は声明で、「Public Knowledgeはこの法案の定義が広すぎることを懸念している。この法案では、侵害行為につながる行為はほとんどすべて、たとえその行為に携わる人物が全く侵害を意図していない場合でも、潜在的な違法行為と見なされてしまう」と語っている。

 ハッチ議員は、この法案が既存の著作権法をくつがえし、革新を阻むことになるという批判に異論を唱えている。同議員によれば、この法案は、ビデオテープやそのほかのコピー機器を合法と認める判決を下した、1984年のソニーのベータマックス裁判における米最高裁判所の判断に影響を及ぼすものではない。なぜなら、この法案は著作権の侵害を顧客に「意図的に教唆する」会社のみをターゲットとしているからだと同議員は声明で語っている。

 RIAAはフォーカスを絞ったハッチ議員の法案に拍手を送っている。RIAAの会長兼最高経営責任者(CEO)ミッチ・ベインワル氏は声明で次のように語っている。「この法案は、前途有望な技術を違法な手段と卑しい利益のためにハイジャックしている悪者にはっきりと焦点を当てている。P2Pの合法な利用は支持され、その一方で、消費者に故意に法律違反を教唆する人物の責任は問われる。この法律では、合法性への道筋がクリアだ。つまり、法律は尊重し、著作権所有者が認めていない作品の交換を阻止するということだ」

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