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» 2004年07月29日 21時13分 UPDATE

脱・「制作委員会方式」はコンテンツ産業振興に結びつく?

コンテンツの制作には資金=スポンサーが必要だが、時としてスポンサーは制作サイドの足かせになる。うるさいスポンサーなしで資金を調達する方法があるとしたら?

[渡邊宏,ITmedia]

 コンテンツ産業拡大の必要性が叫ばれて久しいが、実際のコンテンツ制作を行う企業の多くは中小企業であり、その制作資金の多くはコンテンツの流通業者(映画配給会社、放送局、広告代理店など)に依存してしまっている。

 コンテンツ産業の振興には、コンテンツ制作元が自ら企画・制作し、ハイリスク・ハイリターンのチャレンジを行うことが必要とされるが、コンテンツ制作元の多くは物的担保の少ない中小企業であり、資金調達に苦しむことも多い。

 そうしたコンテンツ制作元へ、資金調達方法を提供しようという動きがある。コンピュータ著作権協会(ACCS)が主催したセミナーにて、日本政策投資銀行 新産業創設部 副調査役の川口宏氏が、同銀行の「知的財産有効活用支援事業融資制度」について説明を行った。

photo 日本政策投資銀行 新産業創設部 副調査役の川口宏氏

 知的財産有効活用支援事業融資制度(以下 知財支援融資)は、制作される作品に発生する著作権を管理・運用する特別目的会社(SPC)を設立、SPCに対して同銀行が融資を行い、SPCはコンテンツ制作元へ資金を提供する仕組み。SPCは著作権の運用(放送権のライセンスなど)で得た収益を、同銀行や投資家へ分配還元する役割も持つ。

 現在の映画制作においては、配給会社などが中心となって「制作委員会」を組織、集めた資金をもとに制作を委託するケースが多い。この場合、配給会社などの販売能力を超えた制作金額が集まることはなく、制作費の上限は自ずと決まってしまう。また、この方式ではコンテンツ制作元の自主的な創作意欲を削ぎ、流通業者の好むコンテンツのみが制作されやすいという指摘もある。

 同銀行の提供する知財支援融資においても、SPCを制作委員会に置き換えれば既存のモデルと仕組みそのものに大きな差はない。しかし、川口氏によれば、「広範囲からの資金調達が可能」「諸権利をSPCに集中させることで、版権の散逸を防ぎながらの権利維持・資金回収が可能」などいったメリットがあるという。

 この方式は出資者を広く集うという点で制作委員会方式と大きく異なり、リスクとメリットを多くの参加者へ分配することが特徴といえる。同銀行では、映画、アニメーション、ゲーム、音楽、出版などを融資対象として想定している。

 この制度を利用する際には、SPC自体の維持費も発生することから、ある程度利益の見込める案件規模(諸権利の運用で維持費が捻出できる規模)が必要。その規模については「案件次第」というが、「制度上の上限はないが、5億円程度が融資上限の目安」とのことから、現時点では映画制作に最も適するのではないかと考えられる。

 この知財支援融資は、今年4月からの開始にもかかわらず既に案件が進行中であり、まもなく資金調達が終了する。

 資金調達方法を多様化し、コンテンツ制作元の活動を促進しようという考えは政府からも提案されており、信託業法の改正、商品ファンド法による資金調達、知的財産権投資協議会(FCC協議会)の設立などが推進されている。

 2010年にはコンテンツ産業の規模を15兆円にまで拡大するというのが政府目標だが、政府主導だけでは産業の育成は難しく、事業者自らがリスクを取ってビジネスを推進することが不可欠だ。

 知的財産立国を目指す日本において、コンテンツを始めとした知的財産産業の振興は大きな課題。スポンサーのヒモ付きにならず、自由にコンテンツ制作にチャレンジすることのできるこのような融資制度は、コンテンツ産業の育成に大きな力を発揮することが予測される。

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