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» 2004年08月25日 17時55分 UPDATE

特集:私的複製はどこへいく?第一回:コピーは何回? それとも禁止? (1/2)

地上デジタル放送や音楽配信など、さまざまな形でのデジタルコンテンツの配布が行われるようになってきた。この普及で鍵になるのがデジタル化に対応した著作権管理だ。ただ、これは著作権者の権利を守る一方、従来、比較的自由だった私的複製を制限、ユーザーの利便性を下げるという悩ましい問題もはらんでいる。

[渡邊宏,ITmedia]

 DVDソフトの普及や地上デジタル放送、Any Musicのサービス開始など、デジタルコンテンツの流通は加速する一方。しかし、従来“個人で楽しむ範囲”とされていた部分であっても、CCCDやコピーワンス放送など、「コピー」に対する制約は間違いなく増えている。

 コンテンツがデジタル化し、より自由なスタイルで楽しめるようになってきているにもかかわらず、なぜ、窮屈さを感じてしまうのだろうか。

 まずは、著作権の“そもそも”から考えてみたい。

「デジタル」になるとなぜ不自由になるのか?

 基本的に、著作物については保護が必要だ。著作物に保護が施されず、野放図に複製されてしまっては制作者に制作に見合った対価は入らず、結果として、創作活動そのものが困難な状態に追い込まれてしまうからだ。

 著作権法は、著作物および制作者を保護する目的で設けられており、「著作権者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」と定められている(著作権法第1条)。

 権利者の保護だけを考えるならば、複製は一切禁止してしまうのが当然だろう。だが、ユーザーは音楽や映像のパッケージが欲しいのではなく、その“中身”を楽しみたいがために購入する。購入したCDやDVDなどの著作物を、自分のスタイルで楽しみたいというのは自然な欲求だ。

 そのため、著作権法は著作者の利益保護を目的に挙げながらも、「個人または家庭内その他に準ずる限られた範囲内」においては、使用者が複製できるとも定められている。これが私的複製と言われるもので、著作権の制限事項として規定されている(著作権法第30条)。

 著作権法が施行されたのは1971年。当時想定されていた複製機器はオープンリールテープなどであったとされており、私的複製は“零細かつ限定されたもの”であって、それが著作権者の権利=利益に重大な影響を与えるものではない、という考え方に基づいていたといわれている。

 その後、ウォークマンやVHSビデオデッキなどが登場し、音楽や映像を個人で録画・複製・編集して楽しむということもすっかり定着した。「受信・購入したコンテンツを、自分のスタイルで楽しむことができる」という現在のわれわれの認識は、まさにそこから生まれたものといえる。

 しかし、著作権法の施行から30年以上経過した2004年、「デジタル」という波がコンテンツを覆いつくしつつある。そして、その結果として、「デジタル」となった瞬間から、これまで「私的複製」としてできたことができなくなるという変化が目立っている――例えば、複製が不可能なDVDソフト、HDDへダビングできないCD、録画はできるが複製できないデジタル放送……。

photo なぜ、これまで許されてきたコピー(私的複製)がコンテンツがデジタル化するに従ってできなくなっているのか?

 エンドユーザーから見れば、デジタル化によって、ある部分ではむしろ不自由になっていることを意味する。これは歓迎すべきことなのだろうか?

「コピー」とは?――顕在化する2つの問題

 「私的複製」とは、個人が楽しむためだけに行われる複製を指し、著作権上ではその範囲を「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」と規定している。

 ただ、どこまでを「私的に楽しむ」という行為として認めるかはあいまいだ。例えば、ソニー・ミュージックエンタテインメントのサイトでは「家族に渡す分ならばコピーは問題ないが、友人に渡すために何枚もコピーしたり、インターネットを通じて配布することはアウト」とされている。だが、アウトとされる事例のうち、後者はともかく、前者では「友人」に「何枚」渡したらアウトなのか、明確なガイドラインは存在していない。

 既に述べたように、コンテンツを私的に複製して楽しむことは広く普及しており、一律的な禁止は上記条項の趣旨から考えても、現実にそぐわない。が、その範囲についてはあいまいなまま。つまり、「コピー可能」な範囲をどこまでとして考えるかが一つ目の大きな問題になる。

 もう一つの問題が、コンテンツのデジタル化・視聴スタイルの多様化に伴う問題だ。

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