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第二回:「コピーの全否定は問題」――音楽業界のジレンマ特集:私的複製はどこへいく?(2/2 ページ)

» 2004年08月26日 15時27分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 私的複製の行き過ぎた利用が著作物全般に悪影響を及ぼすことは明確だが、その“ある程度のコントロール”はどのような形で、どのような技術で実現されるべきなのだろうか。厳しいコントロールはユーザーの不利益にしかならないし、ゆるいコントロールでは、著作権者サイドが受け入れることはないだろう。

 「デジタルの流れにCDが追いついていけない」(井出氏)というSMEが採用するレーベルゲートCD2は、HDDへの複製を1回だけ許可する(2回目以降は有償)という妥協点を作り出し、“ある程度のコントロール”という問題へ取り組んだものといえる。また、SDMI(Secure Digital Music Initiative)やコピーワンスもそうした問題への取り組みを規定したものといえる。

photo レーベルゲートCDはPCのHDDに曲を複製する場合、ネットワークを利用しての認証作業が必要になる

 しかし、そうした考えを実現する技術は一部を除いて、「ルール」や「技術」としての確立が済んだばかりで、対応製品が広く普及しているとは言えないのが現状。事実、コピーワンス放送が始まった際には、当時流通していたHDD/レコーダーの一部にCPRMに対応していない製品も散見された

 家庭内ネットワークにコンテンツを乗せる際に必要になると思われる保護技術である「DTCP(Digital Transmission Content Protection)も技術としての確立はすんでいるが、対応製品は少ない(アイ・オー・データ機器の「Rec-POT M」やソニーの「VRP-T5」などが対応している)。

 これ以外にも権利保護技術としては、DVD+R/RWメディアでの利用が想定されている「VCSP(Video Content Protection System、コードネームはVidi)」や、リムーバブルHDDの規格であるiVDRでの利用が想定されている「iVDR secure」、コンテンツ自体に信号を埋め込むことによって保護を行う「電子透かし」などが研究・提案されている。

 次回では、こうした“これから利用されるであろう技術”について、それがどういった技術であり、どういった保護が可能になるのかについて話を進めていきたい。


第一回:コピーは何回? それとも禁止?

■地上デジタル放送や音楽配信など、さまざまな形でのデジタルコンテンツの配布が行われるようになってきた。この普及で鍵になるのがデジタル化に対応した著作権管理だ。ただ、これは著作権者の権利を守る一方、従来、比較的自由だった私的複製を制限、ユーザーの利便性を下げるという悩ましい問題もはらんでいる。


CPRM――DVDにおける“ある程度のコントロール”を実現する技術

  著作権保護技術として、もっとも耳にする機会が多いと思われるのが、DVDレコーダーなどで利用されているCPRM(Content Protection for Recordable Media)だろう。これを用いることによって、DVDは「デジタル放送の録画は1度だけ」という私的複製の範囲制限を技術的に実現している。

 CPRMについての解説はこちらに詳しいが、大まかに言ってしまえば「コンテンツをあらかじめ暗号化しておき、再生時には“機器側の鍵”と“メディア側の鍵”を組み合わせて“メディア鍵”を生成し、再生を行う」という仕組み。対応メディアはDVD-R/RW/-RAMである(現在、CPRM対応のDVD-Rメディアは発売されていない)。

photo CPPM/CPRMでは、メディアに記録された情報によって暗号キーを作成して再生を行う

 DVD向けの保護技術としてはCSS(Contents Scramble System)がCPRM以前から存在していたが、CSSは暗号化に用いる鍵のビット長が40ビットと制限されていたほか、1999年には人為的なミスから鍵自体が解析されてしまい、保護技術としての価値を失ってしまっていた。

 CPRMは鍵の長さが56ビットに拡大されたほか、メディア側にMKB(Media Key Block)と呼ばれる鍵束を用意、これを定期的に更新することによって鍵が解析されてしまった場合にも、保護を継続することが可能になっている。なお、BS/地上デジタルで用いられている「コピーワンス」を定義しているのはCCI(Copy Control Information)と呼ばれる部分で、これは放送信号の中に含まれる。

 CPRMはこのように強固な仕組みであるが、PCのCPUパワーは3年で4倍に上昇すると言われており、上昇する従ってPCで暗号を無効化される危険性も高まる。PCで容易に鍵を解析できるようになってしまっては、MKB更新による保護も継続が困難になることから、56ビットという鍵の長さを不安視する声もある(100ビット以上を望む声がある)。

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