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コラム
» 2004年09月02日 11時35分 公開

NHKのコンテンツ提供でも、なぜVOD市場は盛り上がらないのか (1/2)

NHKの保有するコンテンツの一部が、7月1日からビデオオンデマンド(VOD)用のコンテンツとして提供されている。低迷するVOD市場にとって、NHKのコンテンツ提供は市場活性化の起爆剤になると期待されたが、2カ月たった時点で見る限り、今ひとつ、盛り上がりに欠けている。その理由を探ってみた。

[西正,ITmedia]

 ソフトバンクグループのBBTV、KDDI、J-COM Broadbandの3社が行うVODサービスに対し、7月1日よりNHKの保有するアーカイブからコンテンツが提供されるようになった。IP系で行う映像配信サービスの中で、NHKのアーカイブコンテンツには大きな期待がかけられてきた。それがようやくつい最近、提供が始まったのである。

 VODサービスの需要がどれほどあるのか、議論の対象になることが多い。だが、そもそもVODサービスを利用可能な世帯がどれだけあるのかと考えたら、現時点ではまだまだ市場規模の議論をする段階にはないと思う。まずは、ベースとなるブロードバンド(それもVODサービスに耐えられるだけの帯域を持った)の普及が先なのである。

 ただ、現在のブロードバンドの普及も、ほんの2、3年前には予想もつかなかったほどの急拡大である。そのスピードを見る限りでは、どう悲観的に見ても、今から3年後には4軒に1軒はVODを利用できる環境に置かれることになるだろう。

 ただ、サービスの性格上、“利用可能者”がいくら増えても、“実際の利用者”が増えないことには市場は拡大しない。ニワトリが先か、卵が先かの議論になりがちだが、利用者を増やすために重要なのは、コンテンツの品ぞろえだ。これまではVODのコンテンツと言えば、ハリウッドの映画作品というイメージが強かったが、利用権料が非常に高いことから、現段階で数をそろえることは難しいと言われてきた。

 そこに、登場したのがNHKだ。NHKのコンテンツならば、ハリウッドの利用権料ほど高額ではなく、しかも広く国民の間に受け入れられるであろうということで、VOD市場活性化の起爆剤になると期待されたわけである。

NHKのコンテンツを使わない事業者がある理由

 ところが7月1日から提供が開始されたにもかかわらず、実際には、予想されていたほどの話題を呼んでいない。やや拍子抜けといった感じである。IP系のサービスを提供する事業者として、大手の役務利用放送事業者も出そろっていただけに、もう少しは市場が動き出すと思っていたのだが、その気配もあまり感じられない。

 何よりも不思議なのは、VODサービスを提供しようと思えば提供できる事業者はそろっているのに、肝心のNHKのコンテンツを利用しようとしないケースが多々見られることだ。公共放送であるNHKだけに、相手によってコンテンツを提供したり、しなかったりということは考えられない。

 にもかかわらず、あえてNHKのコンテンツを利用しようとしない事業者が見られるのはなぜなのだろうか?

 その理由は、NHKがミニマムギャランティー(MG)を設定しているからのようだ。事業者側から見ると、その金額を払ってまでコンテンツを提供してもらっても、採算ベースに乗らないという事情があるらしい。

ミニマムギャランティーの仕組み

 MGとは、文字通り、最低保証金ということであり、コンテンツホルダーがコンテンツを提供する際に、そのコンテンツがどれだけ売れるかによらず、最低でもこれだけの金額は最初の段階で払ってくれるよう要求する金額である。

 例えば、ハリウッドのスタジオが、映画コンテンツを日本の興行主に売るケースで考えてみよう。話を簡単にするために、MGとして10億円が設定され、スタジオ側の予想観客数は100万人であるとしておこう。それを超えた分については、7対3で日本側の興行主が7を取るという契約だとする。

 この契約の元で、興行主も100万人の観客動員を期待してチケットを1500円で売ったとして、その通りになると、興行収入は15億円になるから、興行主の利益は5億円になる。

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