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時速370キロの電気自動車から未来の“ステレオ地図”まで〜慶応SFCっぽいかもしれない(2/3 ページ)

» 2004年11月26日 12時49分 公開
[こばやしゆたか,ITmedia]

u-Texture

 

 基本的には1枚の「板」。組立家具の棚板みたいなもの。これがひとつのコンピュータで、表面のディスプレイにいろいろ表示ができる。これ1枚でもそれなりに動くんだけど、真価は複数組み合わせたときだ。1枚の板と別の板をならべると板どうしが赤外線通信で互いの存在を確認して全体としてひとつのユニットになって動作する。ディスプレイも2枚でひとつの絵を表示するようになる。さらにたくさんの板を並べてもいい。4枚を田の字に並べてもOK。

photo 1枚だけの状態。矢印で示した穴が赤外線インタフェース
photo 2枚並べた状態。左右の画面はつながって1枚の画像になっている。つながっている感じがわかりにくくてすみません

 あるいは、ラック(っていうより、ほんとに組立家具の骨組みのイメージ)に組み上げていくのでもいい。今度はコネクターでラックと信号線や電源がつながる。こんどはラックの中で自分がどこにいるかを把握して、それに応じた動作をするようになる。板はすべて同じものだけど、置かれる場所によって違った機能を持つようになるのだ。

photo ラックマウントさせた状態

 棚板になったものは、その板にのせられたものの情報を読み取る(センサーやRFIDのリーダーが内蔵されている)ことをするし、ディスプレイになったものはその情報を表示する、などということができるわけ。サンゴやカツオノエボシの群体をちょっと思いだした。

 いずれのスタイルでも、複数を並べたときに中枢になるものはない。個々の板が、それぞれ自分のすることを自分で判断しているのだ。

 まだ、今の時点では「板」というにはかなり厚みがあるけれど、これは技術の進歩が解決する話だ。

u-Photo

 これは、実物展示がなかった。デモビデオ(関連リンク12)を見るかぎりはかなりおもしろいものなのだけど。

 u-Photoのカメラで写真を撮る。するとJPEGのデータの画像が得られる。でも、それだけではない。写真の中にテレビやプリンターがうつっているとき、その機器情報もデータに埋めこまれているのだ。u-Photoカメラは機器のタグ情報を読み取ることができるのだ。

 こうして得られたu-Photo写真の上で、たとえばテレビの画面をプリンタにドラッグすると、現実のテレビの画面が現実のプリンタに出力されるのだ。このデータを誰かにメールなどで送っても、まだu-Photo機能は生きている。その人が自分の持っている画像をu-Photoのプリンタにドラッグすると、その画像がさっきのプリンタで出力される。

 あるいは、自分の室内の写真で、電気スタンドをクリックしてONにすると*3、現実にも明かりがつく。

 見ていると、なんだか写真が現実に侵食してくるような倒錯的な快感があるのだ。これはぜひいじってみたい。

中越地震緊急支援プロジェクト「紙の家」

 坂茂(ばんしげる)研究室による。10月23日に中越地方をおそった地震では、多くの被災者が緊急避難所生活を余儀なくされている。この時期の新潟は寒い。体育館などの板床は冷える。そこで登場したのが「紙の家」だ。

 これは、45ミリ厚のダンボール製ハニカムボードと、45×95ミリ(厚さ3ミリ)の角紙管とで作られたものだ。あらかじめカットされている状態で運ぶので、特別な技術なしでも1時間もあれば組み立てられる。雨には耐えないから屋内用だけど、ちゃんと床も壁も屋根もある。プライバシーが保てるし、なにより暖かい。また紙の持つ肌ざわりの暖かみもよい。また、強い余震で崩れることがあっても、もともとがダンボールだから怪我はしない。

 坂さんは、もともと紙を使った建築を手がけていたのだけど*4、今回の地震のニュースを聞いて、すぐに学生たちと「紙の家」を設計した。そして、11月1日には試作棟をSFCキャンパスに完成させる。さらに、それを運搬しやすく組み立てやすい形に改良し、11月1日には最初の1棟、21日にはさらに3棟を長岡市内の避難所に設置したのだ。このフットワークには脱帽する。


*3でも画像では、ここのインタフェースがダイアログになっていて、ちょっとおもしろくない。ここはもっと直感的なインタフェースのほうがいい。

*4阪神大震災のときには紙の教会、紙のログハウスを作成。アフリカの難民キャンプでは紙のシェルターを設置(関連リンク)

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