コラム
» 2005年05月02日 08時20分 UPDATE

ワンセグ放送――携帯キャリアのメリットは小さくない (1/2)

ワンセグ放送の開始日が決定した。地上波局側からすれば、デジタル化で唯一、メリットのあるサービスだが、携帯キャリア側には積極的に関与しようとする姿勢がいまひとつ見えない。これは携帯キャリア側のメリットが不明確なためであり、普及のためにはそれを明確な形で示す必要がありそうだ。

[西正,ITmedia]

携帯キャリア側の事情

 NHKと民放各社は、携帯電話端末向けワンセグ放送の開始日を2006年3月27日と定めた。しかし、NTTドコモやKDDIは放送開始当初、ワンセグ放送の受信機能を持つ端末を数機種程度しか発売しないようだ。

 放送事業者側は、携帯電話の買い替えサイクルが20カ月と短いことから、開始数年で数千万台の対応機が普及すると期待していた。だが、携帯キャリアのスタンスは放送事業者の予想以上に厳しいことがこれで明らかになった。

 なぜ携帯キャリア側は積極的な対応をためらってしまうのだろうか。最大の理由は、テレビチューナーを搭載することで、1台当たり1000円〜2000円のコスト増になってしまうからだ。このコストを端末の販売価格に反映させないためには、携帯キャリアが販売店に対し、販売奨励金を余分に支払わなければならない。

 そのコストを回収するうえで、携帯電話端末の買い替えサイクルが短いことが逆の意味で効いてきてしまう。1カ月で50円〜100円の増収が見込めなければ、テレビチューナーを搭載することはマイナスにしかならなくなってしまうのである。

 地上波各局からすれば、放送のデジタル化の中で、唯一新たな収入源を確保でき、市場が大きく膨らんでいくだろうと期待していたのが、ワンセグ放送だった。もし1カ月50円〜100円の増収にさえつながらないと携帯キャリア側に思われているのだとしたら、それは地上波局側のアピールが弱過ぎることを意味している。

 パケット通信料の定額化は一般的になってきている。そのせいもあって、携帯電話でテレビ放送を見てバッテリーを消費してしまうことへの抵抗感も和らいできていると筆者は見ている。テレビ放送が携帯サービス上で強力なポータルになり、それが各種携帯サイトの利用を促進、コンテンツ販売に伴う料金回収代行手数料が大きく膨らむことを期待できるようであれば、携帯キャリア各社もワンセグ放送により積極的になるだろう。

 しかし、携帯キャリア側は現時点でそうは考えていない。1カ月当たり50円〜100円の増収を図れるとは見ていないのである。それには理由がある。

 FMチューナーを搭載した携帯端末を投入したKDDIは、FM放送で流れている楽曲を音楽データとしてダウンロードできる「着うた」というサービスを成功させている。FM放送対応の携帯電話端末を持つユーザーは、その他のユーザーよりも多くの「着うた」を購入しているが、その差額は直近の数字で1カ月20円に満たないという。KDDIが受け取るのは約1割の代行手数料に過ぎない。こうした経験から見て、1カ月で50円〜100円の増収を図ることは難しいと見ているのだろう。

 一方、テレビ局側は自社が発信する映像情報に、ネットにありがちな“流言飛語”をセットされては困るという理由で、テレビとネットの混在表示を拒否した。テレビ画面が映っている時、同時に表示できるのは自局の携帯電話サイトに限られるのである。これでは、とてもではないが携帯コンテンツの利用が進むとは思えない――そう考える携帯キャリアの気持ちはよく分かる。

テレビがポータルとなって変わること

 ただその一方で、携帯キャリアはいまだにテレビ放送がポータルとなることによる“強力な集客力”に気付いていないようにも思われる。テレビ局のホームページは、さすがに数多くの人気番組を持っているだけのことはあって、豪華絢爛(けんらん)だ。にもかかわらず、テレビ局の携帯サイトとなると、一気に地味なものになっている。これを見る限りでは、携帯キャリアが不安を感じるのも当然だろう。

 しかし、テレビ局の携帯サイトが地味な理由は、それだけテレビと携帯電話の親和性が図られてこなかったからに過ぎない。テレビ局側からすれば、これまでネット上での連携を行うのはあくまでPCと考えてきたからであり、ワンセグ放送が本格的にスタートすれば、テレビ局の携帯サイトは一気に変わるだろう。

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