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悪路もOK――変形移動ロボット「チャリべえ」公開デモ

» 2005年05月16日 21時44分 公開
[ITmedia]

 世界初の搭乗可能なハイブリッド型不整地移動ロボット「チャリべえ」の公開デモンストレーションが5月16日に行われた。4本の脚と2つの車輪を持ち、人を乗せて荒れた路面や凸凹道でも移動できるロボットだ。介護や災害救助の情報収集ロボットといった応用が検討されている。

photo 「チャリべえ」は2台あり、こちらは少し小さいほう
photo 大きいほうの「チャリべえ」。段差もお手の物。機体の概要は下記の通り
名称 チャリべえ
分類 ハイブリッド型不整地移動ロボット
駆動方式 バッテリー×2、搭載発電機によりバッテリーに充電
モーター出力 200ワットまたは300ワット
モータ数 15個(脚部各3×4本、車輪1×2輪、段軸1)
操縦方式 無線リモートコントロール
外形寸法 1050(幅)×2998(奥行き)×693(高さ)ミリ
重量 300キログラム

 チャリべえを開発したのは、前東北大学大学院情報科学研究科の中野栄二教授(現在は千葉工業大学総合研究所に在籍)と未来ロボット技術研究センター(fuRo)の中嶋秀朗氏。両氏が東北大学で17年間に渡って研究を進めてきた「チャリオット」という多脚式移動ロボットの技術成果を踏まえ、NEDOプロジェクトの支援を受け、東北大学、千葉工業大学、株式会社ジェー・シー・イーの協力のもとで開発した。

photo チャリべえのベースになった「チャリオット」。1〜3号機がある

 チャリべえには、「脚車輪モード」と「車輪モード」という2つの移動モードがある。アスファルト道路など整地された場所では、ボディの左右にある車輪を使ってすいすいと移動できる「車輪モード」。岩場のような凸凹のある場所や傾斜地になると、車輪で体を支持しつつ、4本の脚を蜘蛛のように動かして移動する「脚車輪モード」に“変形”する仕組みだ。しかも、背中に人が乗っている状態でも機体を変形させることができる。

photo 凸凹のある場所では「脚車輪モード」
photo 平坦な場所に出ると脚を畳んで「車輪モード」に

 多脚式の移動ロボットは世界各地で開発されているが、脚で歩行する際に車輪で体を支持するのはチャリオットシリーズだけだ。「重い車体を車輪でも支持することで脚の負担を軽減し、地面の変化に対して柔軟に対応できるようになった」(中野教授)という。

 もう1つの特徴は、チャリべえが“内界センサー”だけで路面状況を判断すること。内界センサーとは、姿勢角度センサー(ジャイロ)や関節角度センサーなど、ロボット内部の情報をフィードバックするためのもの。移動ロボットは、路面状況を把握するために超音波センサーやビジョン(カメラ映像)といった“外界センサー”を備えるのが普通だが、チャリべえには一切使われていない。各関節の角度と本体の姿勢角度から得られる情報だけで状況に柔軟に対処する。

photo

 中野教授は、「たとえば視覚(ビジョン)に頼ると、雪道などで動作を誤る可能性が高い。また、超音波センサーなども使用してみたが、スピードが遅く使えなかった」と指摘する。一方、内界センサーを使用するチャリべえの場合、脚に何かが当たり「力がかかる」という情報から障害物の存在を検知する仕組み。逆に力がかからなければ移動の障害とは判断しないため、「雪や落ち葉が路面に積もっていても問題ない」という。

 デモンストレーションでは、平らな路面と凸凹の道を交互に渡ったり、路面と凸凹道を跨いだりと、さまざまなシチュエーションでスムーズに移動して見せた。

 「たとえば移動困難者が山道を含めて屋外での移動を自由に行うための移動機械、土木や林業など屋外作業が求められる産業分野、さらには自然災害発生地など、人が近づけない場所に出向いて情報収集活動を行うレスキュー。チャリべえは、不整地移動を必要とする多様な移動機械に応用できるだろう」(中野氏)。

 なおチャリべえは、「愛・地球博」で6月9日から16日まで開催される「NEDOプロトタイプロボット展」で展示とデモンストレーションが行われる予定だ。

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