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速報性とジャーナリズム〜ネットとマスメディア西正(1/2 ページ)

» 2005年05月26日 17時22分 公開
[西正,ITmedia]

速報性――圧倒的にネットが有利

 ネット情報にジャーナリズムが存在するかどうか、という点については、既存のマスメディア側では否定する声の方が圧倒的に多い。ただ、ニュースの伝達という見地からすると、ネット情報の速報性には無視できないものがある。

 4月末に起こったJR西日本の福知山線での大事故の際には、被害者や遺族の方々にとって迅速な情報が求められたのは当然のことである。また、1日や2日で復旧するとは思えない状況だっただけに、同路線を通勤・通学に使っている人にとっても、早急に状況を知りたいところだった。

 だが、迅速な“第一報”という点では、新聞やテレビは全く機能しなかった。当初は、1つ前の伊丹駅を8メートルもオーバーランしたと報告されていたが、実際には40メートルのオーバーランであったことが明らかになった。インターネットでは、事故が発生してから1時間後には、ネットを通じて現場写真、および前駅でのオーバーランの“本当の事実”が伝えられていた。

 ところが、テレビのニュースでは、夕方になってもいまだ8メートルのオーバーランがあったなどと伝えられていた始末で、速報性ということにかけては、全くネット情報に完敗したことが、メディア関係者からもコメントされていた。

 もちろん、事故直後の生々しい写真が、簡単にネット上で流されてしまうことには、速報性とは別次元の問題があることは間違いない。また、確かにネット情報の第一報が早かったことは確かだが、その後の原因究明も含めた報道については、やはり新聞やテレビの方が信頼性の高い情報を伝えていたといえるだろう。そういう意味では、ネットとマスメディアのどちらかだけに信を置き、それだけを使うのではなく、両者の特性を見ながらうまく使い分けることが正しいといえるだろう。

ジャーナリズムとの違い〜オーマイニュースの評価

 逆に、ジャーナリズムを自任するテレビ局や新聞社は、必ずしも速報性を優先順位の最上位に置いていない。速報性だけを求めるのであれば、携帯電話端末だけで十分に現地からリポートできてしまうからだ。

 もちろん、場合によっては号外を発行したり、緊急特番を組んだりすることもある。しかし、本来のジャーナリズムの使命は、いわゆる第一報を急いで伝えることより、事件や事故が起こった際に、その背景を調査した上で、さらにその裏づけを固めていくことだと考えている。新聞の世界では、今でも「抜いた」「抜かれた」とやっている風潮はあるが、それに固執していたら、ネットには敵わなくなってしまうだろう。

 テレビや新聞に携わっている立場の人たちからすると、ネット情報は速報性に優れていると認めながらも、それをジャーナリズムの1つであるとまでは考えていないようだ。

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