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電動スクーター「EC-02」に乗ってみた(2/2 ページ)

» 2005年07月21日 23時46分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 バッテリーは車体中央部(タンク部分)に収納される。このバッテリー(リチウムイオン)はPassolに使用されているものに比べてエネルギー密度が約1.5倍に高められており、1回(約6時間)の充電で約25キロ〜約30キロの走行が可能となっている。1充電あたりの電気代は約16円だ。

 フレーム内には充電器(もしくは別売の予備バッテリー)を収納するスペースも設けられており、外出先でバッテリー交換あるいは充電を行うことでより航続距離を伸ばすこともできる。

photo 上部の薄いグレーの物体がバッテリー。写真ではバッテリーの手前に充電器を収納している。このスペースには予備バッテリーを搭載することもできる

クイックな反応に感動――交通量の多い道には注意

 スピードメーターの下にあるメインスイッチを押すとアイドリング状態となる。しかし、アイドリングといっても通電しているだけの状態(モーターは回転していない)なので振動はまったく伝わってこない。普段からバイクに乗っている筆者だが、「振動ゼロのアイドリング」というのは新鮮な体験だ。

 おそるおそるアクセルをあけると、拍子抜けするほどスムーズに車体が前に進む。モーター特有の「シューン」という音こそはするものの、走行中の音や振動も非常に少なく、ガソリン車とはまったく別次元の乗り心地といえる。前後サスペンションも過不足のない効きで、路面のギャップをきちんと吸収してくれる。

photo 走行中

 搭載されているモーターを含めたパワーユニットは、「YIPU」(ヤマハ・インテクレイテッド・パワー・ユニット)と呼ばれており、モーターとコントローラー、変速機(遊星減速機)、ブレーキが後輪ハブ部分にまとめられている。EC-02のYIPUは、基本構造こそPassolと同一だが、モーターに改良が加えられており、発進/登坂時や中速域でのパワーが向上している。

photo YIPUはリアアームと一体化している

 モーターで駆動するためにエンジンの“ツキ”というものも存在せず、アクセルをあければあけるだけリニアに速度が上がっていく。しかし、道路交通法上は原付1種に分類されることもあり、最高時速は法定速度と同じく時速30キロ(登坂時などに使用する「パワーモード」に切り替えれば平地で時速40キロほどは出るという)。

 さすがに最高時速30キロでは通行量の多い一般道の流れに乗れず、一瞬ヒヤリとすることもあったが、駐車場などの空きスペースに入って走らせてみると、まったく違った顔を見せる。

 短いホイールベースに小径ホイール(フロント10インチ/リア12インチ)、クイックな反応を見せるモーターが非常にキビキビとした走りを提供してくれるのだ。特に初速―中速域の反応の素早さはガソリン車ではなかなか味わえないもの。構造上エンジンブレーキがないに等しいので、フロントとリアのブレーキを意識的に使うことが求められるが、それさえ慣れてしまえば非常に楽しく運転できる。


 EC-02は外観こそミニバイクだが、試乗してみた感想を言えば「電動“バイク”」ではなく、「EV」としか表現できない乗り物だった。ガソリン駆動の一般的なミニバイクに比べると、出力や航続距離、積載性など解決すべき問題は確かに多いが、EVならではというメリットもある。

 例えば、オイルを使っていないので横倒しにしても大丈夫なほか、折りたたみ式のハンドルとフットレストによって室内での保管や車載も可能なのは便利だ。自転車感覚で室内にディスプレイしてもいいし、ワゴン車などに搭載して、到着したキャンプ地でコミューターとして活用する――といった使い方もEC-02ならではだろう。

photo ハンドルを折りたたむとこんな感じになる

 走行中も静かなので、深夜の走行も周囲に迷惑をかけないし、観光地の散策にも向いてそうだ。同社では7月16日から8月31日までの期間、軽井沢にEC-02とPassolを展示・紹介する「EV GALLERY」をオープンしており、そこでは試乗も可能だ。

 EC-02の価格は20万9790円。ちょっと“お高め”な気もするが、電気自動車等導入費補助事業補助金の補助金給付対象車両として認可されているため、1台につき上限5万円の補助金が給付される。そうなると実質的には15万円強といったところで、スクーターの新車価格と比べてもそう高価というわけでもない(同社のベストセラースクーター「JOG」の価格は14万5950円)。

 これまでEVといえばガソリン車の代替として考えられることが多かったが、EC-02は“EVならでは”の存在を目指す製品といえる。オイルも漏れないし、ガソリンスタンドに立ち寄る必要もない。小型なので自室や会社内にも持ち込める。そのうえ、走りだって本格派だ。自転車のかわりや外出先でのコミューターなど、自分のライフスタイルにあわせて乗りこなしたい。

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